Goto読書で想像旅行を③ ー西日本部門ー

こんばんは、robin1101と申します。

今回は、Goto読書の西日本部門5作品を紹介します。

南風吹く/森谷明子

過疎が進む島、定まらない進路、将来への不安……
おれの居場所はどこにある?
俳句ってすごい! !
仲間たちと磨き上げた勝負の一句、白熱のディベート、
言葉の面白さと可能性に驚かされる青春エンタメ!
瀬戸内海に浮かぶ五木島。過疎が進み、航太の通う高校も再来年には廃校になる。家業の和菓子屋を継ぐことを父親に反対され、宙ぶらりんな日々を過ごしている航太を、俳句甲子園を目指す同級生の日向子が仲間に誘う。幼馴染の恵一や個性豊かな後輩たちをどうにか仲間に引き込んで、頭数は揃った。未来への希望も不安も、すべてを込めて、いざ言葉の戦場へ!

こちらの舞台は瀬戸内海です。

「春や春」のスピンオフの物語で、そちらの方は読んでいないのですが、普通に楽しめました。

なかなか俳句に触れあうことはなかったのですが、テレビ番組「プレバト」を機に身近に感じるようになりました。
といっても17音だけで表現する難しさには圧倒されます。

この作品でも多くの俳句が披露されていますが、よく思いつくなと感心してしまいました。全てを理解するのは難しかったのですが、雰囲気だけでも味わえましたし、一つの俳句で多方面の解釈があるため、色々楽しめました。
話し合うからこそ、解釈のレパートリーが拡がり、どれも違う世界観が見えてくるので、俳句の奥深さを感じました。

俳句に懸ける高校生達の熱き戦い、言葉の面白さ、日本語の美しさ、高校生達の進路、時に恋バナと爽やかに描かれていて、良い青春小説を読んだなという満足感がありました。

俳句甲子園ということで、もちろん試合のシーンも描かれていますが、思ったよりもサクサク進むので、もう少し熱戦を描いてほしかったなと個人的に思いました。

瀬戸内海での情景や高校生同士の掛け合いが瑞々しく、しっかりと前を向く姿に応援したくなりました。

熱き高校生達の新たな分野の1ページを読んだ感覚があり、面白かったです。


ライオンのおやつ/小川糸

人生の最後に食べたいおやつは何ですか――
若くして余命を告げられた主人公の雫は、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、穏やかな景色のなか、本当にしたかったことを考える。
ホスピスでは、毎週日曜日、入居者がリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫はなかなか選べずにいた。
――食べて、生きて、この世から旅立つ。
すべての人にいつか訪れることをあたたかく描き出す、今が愛おしくなる物語。

こちらも舞台は瀬戸内海です。

読んでいて最初に思ったことは、余程多くの取材を行なったのかなと印象でした。その人だけにしかわからない心境が丁寧で多く語られていて、第三者から見ると、複雑であることを知りました。

全体的にポワッとした暖かい雰囲気が漂っている一方で、主人公の死に対する恐怖感・受け取り方は、キリッと締まっていて、胸を締め付ける思いがありました。読むのがちょっと辛かったです。
ただ、おやつを含め食べ物の描写は、美味しそうに書かれていて、お腹が空いた状態で読んでいたので、何度も唾を飲み込んでいました。何か食べたくなってしまいます。
主に主人公の視点で物語は進むのですが、最後の方は、3人の視点で終わりを迎えます。それが誰なのかは、一部ネタバレもありますので、省略しときます。

結末はだいたい予想はつくのですが、終盤は涙を誘いました。死に関することは間接的な表現が多かったのですが、字面だけでも辛かったです。でも変に暗い感じではなく、優しい光が差したような表現ばかりで、前向きに捉えることができました。それだけ小川さんの表現力は素晴らしかったです。

最近では、自殺する人が報道で多く見受けられます。病気で亡くなる人など様々な死に方があります。「生きること」とは?、「死ぬこと」とは?など本を通して、深く考えさせられました。
必ず、死は訪れるものですが、改めて過去の自分を振り返ってみたり、この先の決心や覚悟などをちょっと考えてみようかなと思わせてくれた作品でした。


彼女が天使で亡くなる日/寺地はるな

こちらは九州(おそらく福岡県なのでは?)が舞台です。

九州北部にある小さな島、星母(ほしも)島。

島には「母子岩」と呼ばれる名所があるぐらいです。
でも、ある人のブログを機に何かしらの事情を抱えている人達が、星母島にある民宿兼託児所を訪れてきます。こういった流れだと、前向きな言葉を投げかけて、明日から頑張ろうと勇気を与えてくれるというのが想像つくのですが、この作品はそれに「現実」という苦さがアクセントとして加えられています。現実と向き合うことで、一味違った強さや優しさを与えてくれます。
訪れてくる人みんな、決して明るい事情ではありませんが、寺地さんの言葉が、読む人の気持ちをマイルドにさせてくれます。

民宿のオーナー・千尋は、読んでいて、どこかサバサバした雰囲気を醸し出していますが、この人も何かしらの事情を抱えています。でも、しっかりと現実と向き合い、来るお客をもてなしてくれます。千尋がお客に言う言葉がもう直球で、グッと胸に刺さりもしますし、痛いところを突かれます。
そういったところが、他の作品とは違った魅力でありました。
離島ものの作品だと、優しい島の人に支えられ、優しい言葉をいただき、前に進もうといった感動作に仕上がるものが多いのですが、この作品は一風変わっていました。どちらかというと、こちらの方が現実的でした。そういった点では、印象深く残りました。

また、島の人たちのキャラクター性が濃く、憎めない人ばかりでした。
旅行というと、景色や観光名所のために訪れますが、そこに住む人に会うために訪問してもいいのかなと思いました。ちょっと違った人情物語を味わえた作品でした。


お父さんはユーチューバー/浜口倫太郎

宮古島のゲストハウス「ゆいまーる」のひとり娘、小学五年生の海香は絵を描くことが大好き。
将来は東京の美術大学に入りたいと思っていた。
そんなある日、父親の勇吾が宣言した。
「俺はユーチューバーになる! 」
宮古島の自然とゲストハウスに集う人々を通じて描く、家族小説。

こちらは沖縄県が舞台となっています。

お金を稼ごうと挑戦しては失敗するの繰り返しでダメな父が、今度はユーチューバーに挑戦。
また、YouTuberといえばあの人!と思う人をモチーフにした特別ゲストが登場します。

この父親といったら、両津勘吉の血を引いているのではと思うくらい、破天荒ながらも愛のある人で面白かったです。
途中までは、「こち亀」のような話の展開になるのかなと思いましたが、話は意外な方向へ…。

タイトルの雰囲気から、コメディを想像したのですが、コメディだけでなく、感動劇も含まれていました。
油断していました。思わず涙が・・・。

父親の過去を随所に入れ込みながら、様々な過去が明らかになるのですが、最後の方になると、哀しいんだけれども、温かみを感じます。人との交流は、やっぱりイイネと思ってしまいました。

随所随所に伏線が散りばめらていて、全ての疑問が解決に繋がった時、号泣モノでした。

全体的にテンポがよく、次々と色んな出来事が発生するので、読みやすく気づいたらあっという間に読み終わっていました。笑ったり、泣いたりと島に住む人たちの温かみや優しさを交えながら、喜怒哀楽が楽しめる作品でした。
最後まで読んだときには、思わずイイネとチャンネル登録を押してしまうくらい良かったです。

映像化するなら、父親はぜひゴリさんが一番最初に思いました。


慈雨/柚月裕子

警察官を定年退職し、妻と共に四国遍路の旅に出た神場。旅先で知った少女誘拐事件は、16年前に自らが捜査にあたった事件に酷似していた。手掛かりのない捜査状況に悩む後輩に協力しながら、神場の胸には過去の事件への悔恨があった。場所を隔て、時を経て、世代をまたぎ、織り成される物語。事件の真相、そして明らかになる事実とは。安易なジャンル分けを許さない、芳醇たる味わいのミステリー。

こちらは四国地方を旅しています。

「慈雨」とは、簡略すると、恵みの雨だそうで、その意味も相まって、読後感は清々しい気持ちにさせてくれました。物語の構成としては、主に二つの物語が同時進行しています。
一つは退職した元刑事が奥さんと四国巡礼をしながら、これまでのことを振り返っています。もう一つは、ある事件を発端に警察がこれからのことを操作しています。途中途中に二つの物語がリンクしながら、一連の事件の解決に向けて奔走しています。
地味ではありませんが、それでいて大きな盛り上がりがあるというわけではなく、しっとりと重厚な物語になっています。物語が終わるに連れて、段々と洗い流してくれるような展開で、面白かったです。
事件のトリックは、どこかのサスペンスドラマで見たような真相ですが、その手がかりがわかった瞬間から、読み手側も読むスピードが加速していき、ページもめくるのが止まりませんでした。


様々な人間模様が垣間見れて、ミステリーだけでなく、ヒューマンドラマとしても楽しめた作品でした。


なかなか一つの県を指定することはできない作品もありましたが、西日本にあるということでこの部門に選ばせていただきました。

次回は、東日本と西日本を合わせたー他県混合部門ーを紹介します。

最後まで、ご覧いただきありがとうございました。


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