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密かに注目している賞 ー新井賞ー

こんばんは、robin1101と申します。

今回は、新井賞について特集します。


皆さんは、「新井賞」という言葉をご存知でしょうか?


「新井賞」とは、書店員として働く新井見枝香さんが、三省堂書店勤務時代から店頭での販促を兼ねて、個人的に推したいと始めた賞です。

直木賞・芥川賞発表の同日の夜に発表されるのですが、独自の視点が書店員に話題を呼び、直木賞受賞作より売上が伸びた例もあるとのことです。今では、メディアでも取り上げられることがあり、注目されています。

ジャンルは小説に限らず、外国の作品も受賞されることがあります。2014年から始まり、今では第13回まで発表されています。

ちなみに過去の受賞作は下記の通りです。


第1回(2014年度上半期)- 千早茜『男ともだち』
第2回(2014年度下半期)- 早見和真『イノセント・デイズ』
第3回(2015年度上半期)- 辻村深月『朝が来る』
第4回(2015年度下半期)- 角田光代『坂の途中の家』
第5回(2016年度上半期)- 彩瀬まる『やがて海へと届く』
第6回(2017年度上半期)- 芦沢央『貘の耳たぶ』
第7回(2017年度下半期)- 桜木紫乃『砂上』
第8回(2018年度上半期)- 三浦しをん『ののはな通信』
第9回(2018年度下半期)- はるな檸檬『ダルちゃん』
第10回(2019年度上半期)- レティシア・コロンバニ(フランス語版)『三つ編み』
第11回(2019年度下半期)- 小川糸『ライオンのおやつ』
第12回(2020年度上半期)- レティシア・コロンバニ『彼女たちの部屋』
第13回(2020年度下半期)- 桜木紫乃『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』


現在の新井さんですが、三省堂を退社し、HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEに勤務しているだけでなく、エッセイスト、はたまた踊り子(ストリッパー)として活躍していたことに驚きでした。


ちなみに第13回受賞の桜木紫乃『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』が先日発売されたので、読んでみました。

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時は昭和。北海道の釧路にあるキャバレーでは、期間限定のゲストを招いて、ショーを盛り上げてくれる。今回は、自称有名なマジシャンやシャンソン歌手、踊り子の三人である。店の寮に住み込みで働く章介は、その三人と同居生活を送るが、暮らしていくうちに段々と章介の心境が変わっていく。


ジワジワと温かみや感動がくる作品でした。
四人の同居生活が、面白くもあり、ホロリとさせてくれたりと段々と見えてくるそれぞれの切ない事情が、印象的でした。

章介が抱える事情は、母親が置いていった父親の骨壷。墓がないまま、そのまま部屋に置くわけにもいかず、どう解決していくのか。三人と交えて、解決に導く過程が、クスッとさせますし、ある意味圧倒されました。

他にもマジシャンやダンサーの過去がほろ苦く、そういった事情を抱えながら仕事をし続ける姿に哀愁を感じましたが、誇らしくもありました。

登場人物はみんな普通ではない生活を送っています。それでも人は生き続けなければなりません。その中で垣間見るのは、必死さよりも楽しさが伝わってきました。

期間限定なので、別れるまでのカウントダウンがどこか寂しいのですが、同時に頑張らなければいけないなと喝を入れられた気持ちにもなりました。いつまでも楽しい日々が続くわけではありません。でも、みんなと笑っていれば・楽しんでいれば、なんとかなる。誰かが手を差し伸べてくれる雰囲気を醸し出してくれるので、終始温かい気持ちになりました。
みんな孤独に生きているのに「仲間」として生きているなという感覚がありました。

最後は章介が成長し、平成になってからの物語も少し書かれているのですが、ラストはジーンと感動してしまいました。別れゆえの出会いがあるからこそ、生きる糧にもつながるので、出会いを大切にしたいと思いました。


今後も「新井賞」に注目したいと思います。

最後まで、ご覧いただきありがとうございました。

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