[4月10日]今週のブック特集(王様のブランチより)

こんにちは、robin1101と申します。

今回は、この作品を紹介していました。


東野圭吾さんの「白鳥とコウモリ」
津村記久子さんの「つまらない住宅地のすべての家」

上記の作品のうち、東野圭吾さんの作品は読了しましたので、そちらをメインに紹介します。


東野圭吾さんの「白鳥とコウモリ」

遺体で発見された善良な弁護士。
一人の男が殺害を自供し事件は解決――のはずだった。
「すべて、私がやりました。すべての事件の犯人は私です」
2017年東京、1984年愛知を繋ぐ、ある男の"告白"、その絶望――そして希望。
「罪と罰の問題はとても難しくて、簡単に答えを出せるものじゃない」
私たちは未知なる迷宮に引き込まれる――。

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2200円というお高めで、約500ページ以上という単行本では、ボリュームのある量でしたが、「どんな展開になっていくんだろう」という興味が常に頭に引っ付いていて、気づいたら沼にハマった感覚があり、迷宮にいる感覚でもありました。

改めて、東野さんのミステリーの幅広さに圧倒されました。科学の知識を駆使したり、エンタメ系のライトなミステリーはたまた重厚感のある本格派だったりと色々な「顔」を持っていて、読み手としては大いに楽しませてもらっています。


今回の作品は、科学もなく、エンタメでもなく、本格派ミステリーでした。それぞれの人が抱える罪と罰に自分だったらどう向き合えばいいのか考えさせられました。

題名の「白鳥とコウモリ」ですが、後半になってわかるのですが、言葉選びが秀逸で、深い言葉だなと思いました。

大まかに分けると、事件の捜査とその後の2つのパートに分かれています。
前半では、主に警察側の視点で、弁護士の殺人事件を捜査しています。東京の下町を舞台にしているので、どこか「第二の新参者の誕生?」という想像をしていました。

しかし、意外と前半部分で犯人が逮捕されるので、正直その段階ではちょっと肩透かし感はありました。ページ数としては短いものの、調べていくうちに意外な真実が明らかになっていくので、色んな想像を膨らみ、奥行き感のある物語が待っているのでは?と勝手に想像してしまいました。

残りのページはどうなるの?と思っていましたが、そこからがこの作品の醍醐味かなと思いました。

「その後」のパートでは、犯人が逮捕された後の事件の関係者の視点をメインにしています。被害者の娘や加害者の息子が、それぞれ事件の全貌を解明しようと奔走します。

事件は解決しているかと思いきや、加害者の証言に違和感を感じた2人。検察や弁護士に止められながらも、調査をしていきます。
逮捕から裁判までの準備期間の間にどう事件が明らかになっていくのかが描かれています。
警察も登場しますが、主に脇役として登場します。

事件がどう展開していくのかという楽しみもありますが、同時に関係者たちの苦悩といった心理描写も描かれています。
世間からのバッシングや同情といった数多くの「声」に苦悩しながらも、事件の真相が知りたいという信念を貫こうとする姿に段々とその世界観に惹き込まれました。

記者の理不尽なやり方や司法の立場から見た仕事のやり方も描かれていて、苛立ちもありましたが、これが現実なんだとも感じました。結局全てが明らかになるということは難しいということを身につまされました。

そして、2人が掴んだ新たな真実に色んな要素が段々とつながっていく過程は、驚きとともに後悔のような感情にもなりました。まるでオセロが常にひっくり返るかのようでした。
「知りたくなかった」とか「読む前のあの頃には戻れないな」といった関係者ではないのにそういった思いが芽生えしまいました。それほど衝撃的で、重厚感がありました。

事件の関係者だけでなく、自分を含む全ての人にも響く「罪と罰」がこの作品には含まれていました。

安易に情報や言葉を拡散するだけでなく、拡散したことへの責任や誰かを傷ついているのでは?という自覚を持つことも
大切であると思いました。

これからどう一歩踏み出していくのか。色々と考えさせられました。
まだ発売されたばかりですが、今後映像化するのでは?と思うくらい、衝撃さ、重厚感、メッセージ性があるように感じ、むしろ映像化して欲しいなと思いました。


次に津村さんの作品を紹介します。

津村記久子さんの「つまらない住宅地のすべての家」

とある町の、路地を挟んで十軒の家が立ち並ぶ住宅地。
そこに、女性受刑者が刑務所から脱走したとのニュースが入る。
自治会長の提案で、住民は交代で見張りをはじめるが……。
住宅地で暮らす人間それぞれの生活と心の中を描く長編小説。

こちらの作品は未読ですが、別作品「ディス・イズ・ザ・デイ」をラジオドラマで聴いたことがあります。

この作品は、サッカークラブを応援するファン・サポーターの物語です。

クラブを応援している人たちの思いや、どう自分の人生あるいは生活の一部となっているかが描かれていて、自然に何かに応援したくなる気持ちにさせてくれます。

津村さんの作品は、働く人々や特別ではなく普通の人々を描いている作品が多く見受けられます。

そこでは、色んな意味で「生き生きと活動している」印象があり、今回の作品でもあらすじを読む限りでは、シリアスではあるものの、何か爽やかな風が流れていて明るい気持ちにさせてくれるのでは?と予想します。


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