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6/30若松141球完投勝利から見る、杉山桂論争の終着点

早いものでもう2016シーズンも前半戦終了まで間近、7月に入りました。我らがドラゴンズは交流戦明けヤクルトに早速3タテを食らうも、東京ドームの巨人戦に勝ち越し。昨日の阪神戦の初戦も取り徐々にチーム状態も上向いてきたように思います。

そんな中、先週土曜のヤクルト戦からドラゴンズが開幕から続けてきた「あること」が変わりました。それが何だか分かりますでしょうか?熱心なドラゴンズファンの方なら既にお気づきかと思いますが、そうです。開幕から一貫して杉山・桂のプラトーン体制で併用されてきたキャッチャーが、桂の起用に一本化されつつあるのです。今季ここまでキャッチャーのスタメンは杉山の4試合連続が最長で、基本的にはその日の先発投手に応じて使い分けられていました。大野、ジョーダンが桂専用で36試合でスタメン、若松が杉山専用で41試合にスタメンとして起用されてきました。

しかし先週金曜のヤクルト戦で若松-杉山のバッテリーが4回終了時点で代えられてしまうと、翌日の試合から桂がスタメンマスクをかぶるように。昨日の阪神戦まで6試合連続でマスクをかぶり、また6/30の巨人戦では、昨季から引き続きほぼすべての試合で杉山を指名していた若松までも桂とバッテリーを組むようになり、スタメン争いの潮目は大きく変わりつつあります。

3連敗中の若松は桂とバッテリーを組み何が変わったか?141球完投勝利から考えるピッチングの変化

これまでほぼ杉山を女房役として指名してきた若松が、最近の不調が原因で桂とバッテリーを組んだ結果、4試合ぶりの白星。しかも2安打完投と完璧の出来。その要因はなんだったのか?

上記は6/30の若松の投球を1枚のスライドでまとめたものとなります。各球種の平均球速と投球割合を、2016年の全投球の平均と、6/30の登板分との比較しています。また2016年ここまでのPitch Value (その球種を投げたときにどれだけ失点を防げるかを表す数値)と、6/30登板時の空振り率について記載しています。

球速アップと魔球・チェンジアップの割合増が要因か

2016年これまでの平均球速と6/30の登板を比較すると、大きな違いとしてまず平均球速がアップしているのが挙げられます。全球種においておよそ2キロずつ球速がアップしており、中5日の登板ながら3連敗中のため、危機感MAXでこの日の登板に臨んでいたことが分かり、いつも以上の力が引き出されていたのではないでしょうか。

次に、今季Pitch Valueで大きなマイナスを計上しているストレートとスライダーの割合が減り、チェンジアップの割合が増えていることが目に付きます。Pitch Valueがマイナスということはその球種を投げると平均的な投球に比べて防御率を悪くする要因になるということですから、若松はこれまで規定投球回に到達しているセリーグの中でもっとも遅いストレートをおよそ50%近くも投球し、結果痛打を浴びていたことが分かります。一方で魔球と称されることも多いチェンジアップは非常に効果的で、両リーグトップの数値を記録。この日も30%近い空振り率をマークするなど投球の軸として大きな武器になっています。

まとめると、一つの要因は球速アップ。そしてももう一つが魔球チェンジアップの割合を増やし、スライダーと直球の「お荷物」球種の割合を減らしたことが、この日の快投につながったものだと考察します。特に2点目の変化に関しては、若松自身の変化というよりも、女房役が代わったことによる「配球の変化」が大きいのではないでしょうか。チェンジアップを活かすために球威のないストレートを内角へゴリ押しすることが多かった杉山のリードと対照的に、桂はカーブ&チェンジアップを多めに投じることでより慎重に若松の良さを引き出そうとしていたように思います。今回桂が若松とバッテリーを組み結果を残したことで、今後も桂のスタメンマスクが続くだろうと感じています。

杉山桂論争終結か?守備型の桂と打撃型の杉山の強みと弱み

6/30若松の長所を最大限引き出し完投勝利に導いた桂の好リードが、開幕から続く杉山桂論争さえも終結に導いているように思えます。6/24以降杉山の出場機会がめっきり減っていることからも、今後谷繁監督は桂を正捕手として起用し続けるのではないでしょうか。ただ、本当にあの炎上をきっかけに、杉山の出場機会を奪っていいものなのでしょうか?桂も慎重なリードと強肩を武器に守備面では大いにアピールしておりますが、打撃面では杉山が大きくリードしているように思います。ここで改めて、正捕手を争う同世代の二人の強みと弱みについてnoteしていきましょう。

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桂 依央利 (1991年7月9日生まれ、24歳)
右投げ右打ち
守備面
先発出場時の、先発投手の防御率と勝敗:
スタメン出場36試合 16勝8敗 防御率3.09
盗塁阻止率 .400 (リーグ1位)
WAR Defense 5.8 (100打席以上リーグ9位、うちキャッチャー3位)
打撃面
打率.176 本塁打3 打点11 .231/.278/.509
WAR Offence -9.5 (100打席以上リーグワースト6位)
寸評
大野、ジョーダンといった力のある投手と組むことが多いため、スタメン時の防御率及び勝敗は良い。盗塁阻止率もリーグトップと守備には定評がある一方で、打撃面はリーグワーストレベル。
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杉山 翔大 (1991年2月10日生まれ、25歳)
右投げ右打ち
守備面
先発出場時の、先発投手の防御率と勝敗:
スタメン出場41試合 9勝17敗 防御率4.29
盗塁阻止率 .290 (リーグ4位)
WAR Defense 3.8 (100打席以上リーグ15位、うちキャッチャー6位)
打撃面
打率.265 本塁打1 打点16 .324/.382/.707
WAR Offence 2.6 (100打席以上リーグ中位、うちキャッチャー2位)
寸評
若松専用、また若手投手中心にマスクをかぶった影響か勝敗及び防御率も良くはない。一方で盗塁阻止率もリーグ4位、WARのディフェンス面でもそこまで落ちるわけではなく、守備面が壊滅的なわけでもなさそう。打撃面では阪神の原口に次ぐ攻撃的捕手。
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参考:ドラゴンズOB小田幸平の視点から見る杉山と桂の違い
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160518-00010001-baseballc-base&p=1

総合力で上回る杉山を見切るのはまだ早い?杉山桂論争はまだ終わらない!

以上二人の強みと弱みについて考察してみました。桂は守備面でリーグトップレベルの貢献度を示していますが、打撃面では大きなマイナス。一方で杉山は打撃面では大きな貢献度を示しており、守備面では桂に劣るものの、大きく差をつけられているわけではありません。現状は総合評価指標・WARで比較すると、総合力では杉山が上回ることが分かります。先発投手の勝率・防御率には大きな差がついているように見えますが、担当する投手の実力に大きく影響を受けることもあり、単年の成績だけでは信頼出来るデータとは言えません。

今回杉山はヤクルト戦でのまずいリードを吊るし上げられ出場機会を失うことになりましたが、その「リード」とは選手の実力を正しく評価するものなのでしょうか?開幕前にDeNAラミレス監督が「ベンチからリードする」と公言したことからも分かるように、配球面で問題があればベンチから指示するだけで簡単に改善できるのではと思ってしまいます。しかもドラゴンズの場合プロ野球史上最多出場記録を誇る大捕手・谷繁元信が監督としてベンチに控えているのですから。現状の桂正捕手起用に関しては、あまりに感情的な判断に基づくものでしかないと言わざるを得ません。

今シーズンここまでの成績を見てみると、守備面では桂、打撃面では杉山がそれぞれアピールしており、未だ一長一短。上記で述べたようにデータで見ると杉山が総合力でリードしているようにも見えますが、打撃面では桂もシーズン序盤は3本塁打をマークするなど好調でしたし、今後も打撃低調のままで終わるとは言い切れません。いずれにせよ今回の桂正捕手起用へのシフトは決定的な原因があったとは言い切れないため、個人的には引き続き杉山・桂の併用を続け、お互いに切磋琢磨し成長する機会を与えるべきだと思います。

杉山桂論争に決着を着けるのは、まだ早い!


*データ参考:
1.02 Essence of Baseball
http://1point02.jp/op/index.aspx

プロ野球ヌルデータ置き場
http://lcom.sakura.ne.jp/NulData/Central/D/t/pc_all_data_etc.htm

NPB.JP
http://npb.jp/


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