2019 中日ドラゴンズのドラフト指名戦略を考える
皆さん、こんにちは。
今日はいよいよ明日に迫った
「2019年ドラフト会議における、中日ドラゴンズの指名戦略」
について考えてみたいと思います。
人材流動性が低いNPBにおいて、ドラフト会議による有望な選手の獲得は何より重要な戦力の獲得ルートです。特にドラゴンズのようなFA選手の獲得に消極的なチームの場合は、より高精度な選手の見極めと指名戦略の構築が重要になってきます。
すでに各種報道で色々な情報が流れていますが、今回は補強ポイント分析およびステークホルダー分析をもとに、今年の指名戦略の予想とそれに基づいた指名選手の提案を行っていきたいと思います。
まず初めに指名選手については、下記をベストケースとして提案します。
▽2019年 中日ドラフト指名ベストケース
1位: 奥川恭伸 投手 星稜高校
2位: 佐藤都志也 捕手 東洋大学
3位: 浜屋将太 投手 三菱日立パワーシステムズ
4位: 黒川史陽 内野手 智弁和歌山高校
5位: 中村健人 外野手 慶應大学
6位: 玉村昇吾 投手 丹生高校
以下ではなぜこの指名順・選手を提案するに至ったかについて、順に説明していきたいと思います。
1. 補強ポイントの確認: チーム編成表の分析
まず始めにドラゴンズの補強ポイントについて、ポジション別の年齢構成と投球回数/打席数から、チーム編成的に埋めるべき補強ポイントについて見ていきます。
*なお下記では既に戦力外および退団が発表されている選手は含まれておりません。
▼先発投手:
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・大野と柳がリーグ屈指の貢献度を見せるも、3番手ロメロの次が山井という厳しい状況
・前年50回以上投げた吉見は不振、笠原 小笠原 松坂の3人は怪我等で離脱
・清水と山本拓の抜擢は明るいニュースも、前年から大きく投球回数を増やし過ぎているのが心配
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【課題と補強ポイント】
先発投手については、一軍で50イニング以上投げた投手が大野、柳、ロメロ、山井の4人しかいない層の薄さが課題です。
今年は怪我人が多発するなど台所事情は苦しかったですが、来季は有事に一部の若手投手に負担が集中しないようにするためにも、即戦力投手の獲得は必要だと考えます。
▼中継ぎ投手:
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・ロドリゲスを筆頭に26-30歳の働き盛りの投手が一軍、二軍ともにブルペンを支える
・今季台頭した福、三ツ間や復活の岡田、又吉は二軍含むトータルではかなり負荷が掛かっている
・25歳以下はプロスペクトか実績なし(育成)と極端で、ドラフトで補充したい
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【課題と補強ポイント】
中継ぎ投手について不安なのは、上記の通り結果を出したリリーフ陣の多くが一軍・二軍合わせてフル回転していることが挙げられます。阿波野コーチが「3連投規制」を敷くなど負担分散に細心の注意を払っていたことはまた別の機会にまとめたいと思いますが、それでも中継ぎ陣の疲労蓄積は見過ごせません。
25歳以下の投手を見渡してもプロスペクトか実績のない投手と極端に別れていることからも、ここでは即戦力投手の獲得は重要だと言えるでしょう。
▼捕手:
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・加藤がチームトップの一軍打席数、木下は怪我で離脱も加藤に次ぐ存在として期待を懸けられていた
・トレードで松井雅、戦力外で武山・杉山を放出することでデプスのダブつきは解消された
・来季石橋を一軍起用するなら高卒捕手、じっくり育成なら大卒捕手獲得か
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【課題と補強ポイント】
捕手については、加藤・木下の台頭で世代交代が一気に進んだ印象があります。ただ他球団と比較すると彼らの打撃・守備貢献はリーグワーストのため、テコ入れが必要なのは間違いありません。
そうすると即戦力捕手の獲得をまず検討すべきですが、後半戦から一軍に帯同したトッププロスペクト・石橋を来季どのように起用するかによって優先順位が変わってきます。
高卒2年目の石橋を一軍戦力の一人としてカウントするなら逆に今年のドラフトでの即戦力捕手指名の優先順位は落ちるため、長期的な育成プランを念頭に置いた上で指名順を熟考する必要があるかと思います。
▼内野手:
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・一軍は全ポジションが31歳以下で規定到達と、盤石の体制+スーパーサブ直倫が控える
・二軍は根尾高松石垣を優先起用する理想的な起用法、ただ石垣は来季一軍で使いたい
・石垣に変わる1B/3Bのコア候補野手の獲得を目指したい、逆に即戦力内野手は不要
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【課題と補強ポイント】
内野手はレギュラー4人がほぼ固定&控えにも堂上、三ツ俣が揃い一軍レベルにおける即戦力選手の補充は不要と言っていいでしょう。
また二軍も根尾高松石垣を中心に若手も優先的に起用されており、理想的な機会配分だったと言えます。
補強するとすれば、石垣が来季以降一軍での出場機会を増やすにあたってのファースト・サードの主砲候補でしょうか。将来有望な打撃型の選手の獲得は検討すべきと思います。
▼外野手:
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・内野登録もレフトメインの福田と、大島平田のレギュラー3人+サブも全員30歳以上と高齢化進む
・怪我のアルモンテに代わる外国人獲得はマスト
・若手はかなり層が薄く、二軍で両翼打てる素材型、一軍に割って入れる即戦力の両方またはいずれかの獲得はマスト
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【課題と補強ポイント】
外野手も基本はレギュラー固定なのは内野手と同じですが、控えも合わせて30歳以上の選手中心なのが大きな違いです。
二軍では伊藤康、滝野に多くの出場機会を与えられているのは良いことですが、外野が3ポジションあることを考えると手薄なのは否めません。
なので二軍で両翼を任せたいスラッガータイプと、一軍の控え外野手を脅かせる即戦力タイプの両方もしくはいずれかは少なくとも確保したいところです。
以上、ここまで見てきた補強ポイントをポジションごとにまとめると、下記の通りとなります。
先発:期待の若手は多いものの計算できるまでには至らない、即戦力欲しい
中継ぎ: 福・三ツ間ら新戦力の登板過多が不安、即戦力欲しい
捕手: 高卒を育てるか、即戦力を補強するかいずれか
内野: ファースト/サードのコア候補素材型
外野: 両翼の素材型 and/or 即戦力
今年のドラフトでは、上記の条件に当てはまる選手を獲得すべきだと考えます。
ただこれだけではどの選手を上位で、また下位で指名すべきか判断できませんので、以下でその指名順位の決定に影響を及ぼす各ステークホルダーのニーズについて見ていきたいと思います。
2. ステークホルダー分析: 現場、フロント、親会社の異なる視点
指名順位を考える上では、その決定に関与するステークホルダーのニーズを考慮する必要があります。
今回は現場、フロント、親会社の3者の異なるニーズについてまず整理していきたいと思います。
①現場のニーズ
3年契約の1年目を既存戦力の底上げで乗り切った与田監督にとって、上位を狙う来年、再来年は即戦力選手の獲得は是が非でも達成したい。特にレギュラーと控えが盤石である内野手・外野手の好素材の優先順位は下げてでも、投手と捕手のバッテリーの即戦力は最上位で行いたいところ。
ただ捕手については、かつて西武時代に炭谷、ロッテ時代に田村を育て上げた伊東ヘッドコーチの意向により、石橋と争える高卒捕手の獲得で妥協する可能性もなくはない。
②フロントのニーズ
中長期的な視点で選手の獲得、編成の管理を行うべきフロントにとっては、有望な若手投手の獲得は今年も狙いつつ、また手薄な若手野手の獲得は優先順位が高いはず。
また先日報道されたホームランテラスの設置検討を考慮に入れると、DeNAをモデルに投手は三振が奪える速球派、野手はスラッガータイプの獲得を検討しているだろう。
③親会社のニーズ
東海地方に深く根ざしている中日新聞社にとっては、多くの購読者が存在するエリアからより多くの選手を獲得することで地元密着をアピールしたい。
その姿勢は下記表の通り、これまで多くの愛知県出身者を獲得してきたことからも窺える。
以上、指名順位に影響を及ぼす3者の異なるニーズについて考えてみました。
現実にはさらに「他球団の動向」まで検討する必要がありますが、そこまで考慮するとさらに膨大な分析が必要になるため、今回は以上の3つの視点から指名戦略を考えたいと思います。
現場、フロントおよび親会社のすべてがWin-Winとする指名順位を考えることは不可能に近いですが、今回は下記の通り考えてみました。
3. ドラフト指名戦略: 1位入札は星稜高・奥川
1位指名戦略: 奥川→石川昂→河野→海野→即戦力投手の順番
①星稜高・奥川
まず初めに入札すべき選手としては、星稜高・奥川を推したいと思います。理由は上記で検討した3者のニーズを全てを満たせる1位候補の選手は、彼しかいないと考えるからです。
◎現場のニーズ→開幕からフル回転は難しくても、中盤以降は十分先発ローテに入れる
◎フロントのニーズ→「10年に一度」のレベルで傑出した逸材、エース候補
◎親会社のニーズ→準地元・石川出身のスター候補、全国区の知名度
準地元の石川出身で甲子園のスターである奥川選手を指名できれば、昨年指名した地元岐阜出身の根尾と共に投打の柱となり得る選手を獲得できることになります。ご存知の通り競合は必至ですが、三方良しの状況を考えるとリスクを承知で突っ込んでも惜しくない選手です。
②東邦高・石川
一方で最後まで悩んだオプションとしては、東邦高・石川昂の一本釣りです。現場のニーズにフィットしないため見送りましたが、地元・愛知出身で今年の高卒野手ではナンバーワン評価。更に自ら「中日ドラゴンズに入れれば一番良い」と発言するほどの選手は、現場のニーズを後回しにしてでも指名したいレベルに貴重な存在だと言えます。
ただ今回の指名戦略の策定においては、やはり今季確かな手腕を発揮し来季以降の上位進出に期待を持たせた与田監督を最大限サポートするため「即戦力選手の獲得」を優先し、石川昂は外れ1位指名の筆頭候補に留まると想定します。
③JFE西日本・河野
石川昂の次の優先順位としては、JFE西日本・河野を挙げたいと思います。
こちらはもっとも現場のニーズにフィットする即戦力投手だと考えていて、得意のゴロを打たせる投球で開幕から先発ローテに入れるレベルだと確信しています。中日の堅い内野守備をバックに守れば新人王も狙えるレベルではないかと、個人的には考えています。
ただ上記のような地元出身のスター候補と比較すると親会社の意向的に霞んでしまうのは確かなため、3番手評価としました。
④即戦力投手
奥川の抽選を外してかつ石川昂・河野の抽選にも失敗となると、次に予想されるのは今年の即戦力捕手ナンバーワン評価の東海大・海野か、もしくは即戦力投手の東芝・宮川、東海理化・立野、創価大・杉山、日本体育大・吉田大などが候補として挙げられます。
2位指名戦略: 優先順位は即戦力捕手→打撃型野手→即戦力投手の順番
①即戦力捕手
2位指名においては、まず1位で誰を指名できたかに依存します。奥川や河野、その他即戦力投手の指名となった場合に優先順位がもっとも高いと思われるのは、即戦力捕手の指名です。
前述の通り加藤・木下は出場機会を増やしたものの、他球団と比較してウィークポイントだったのは間違いありません。そこで来季の上位進出のためには、2位指名候補として東洋大・佐藤都と慶応大・郡司ら即戦力捕手の獲得がマストのように思います。
彼らも中日の2位指名までに残っていない可能性はありますが、もし指名されていない場合は十分指名する価値のある選手です。捕手としての即戦力性は先に挙げた東海大・海野に劣りますが、打撃のポテンシャルはどちらも海野以上のため、伊東ヘッド・中村バッテリーコーチの元で守備を鍛え上げられる確信があれば、一年目から即戦力として機能するかもしれません。
②打撃型野手
次点として、伊東ヘッドの「高卒捕手を一から育成していく方針」が確固たるものであるならば、即戦力捕手の優先度を下げて石橋をじっくり育てる方針で行く+将来性豊かな高卒捕手を下位で指名するという戦略も十分考えられます。
そうすると2位指名の候補として考えられる打撃型野手としては、国際武道大・勝俣と駿河総合高・紅林を挙げたいと思います。
勝俣は今年の打撃型の選手では個人的にはトップクラスの選手だと感じていて、大学で守っているサードに加え外野両翼も含めた打撃が活かせるポジションで、近い将来レギュラーが狙える選手だと感じています。
紅林は186cm81kgの恵まれた体格のショートで、将来のスラッガー候補として活躍が期待されます。
ショートのポジションにおいては京田・根尾と若手は充実していますが、昨今では複数ポジションを守れるポリバレント性がトレンドになりつつありますので、ショートだけでなくサードやセンター・ライトなどいろんなポジションに挑戦して欲しい選手です。
③即戦力投手
最後に、1位で石川昂を指名することになれば2巡目の指名は即戦力投手の可能性が高いです。その場合は先ほど外れ1位候補で挙げた投手が候補に上がってくるかと思います。
中位〜下位指名戦略: 上位指名選手の顔ぶれに応じた柔軟な指名
中位〜下位の指名においては、上位で指名された選手の顔ぶれや他球団の指名状況に依存するかと思います。よって3位以降の指名に関しては、上記の指名戦略に応じて行われるものと推察します。
以下では、中日ドラゴンズにとってベストケースだと言える「シナリオA」を想定したときの3位以降の指名候補について紹介していきます。
▼3位指名候補:即戦力投手
1位奥川、2位佐藤都の獲得に成功した場合の3位指名では三菱日立PS・浜屋、東芝・岡野、NTT東日本・小又ら即戦力投手を候補として挙げたいと思います。
いずれも社会人野球でプレーする選手ですが、一年目から先発・中継ぎのいずれかにおいて即戦力としての活躍が期待できる好投手だと感じています。
▼4位指名候補:打撃型野手
4位では主にファームで打席経験を積ませたい打撃型の野手を獲得したいです。
そこで挙げたいのは智弁和歌山高・黒川と履正社高・井上です。
いずれも甲子園で活躍した姿が記憶に新しいかと思いますが、黒川は野球に対する高い意識で根尾と共にチームを引っ張ることのできる将来の主軸打者候補として期待でき、また井上はホームランテラスが設置された時の大砲候補としてベストマッチする選手だと感じています。
いずれも4位での獲得は難しいかもしれませんが、他球団の動向によっては彼らを3位で指名し、3位想定の即戦力投手を4位に繰り下げるなどの駆け引きは可能かと思います。
▼5位指名候補:即戦力外野手
5位では、即戦力外野手として来季早々にも一軍の出場機会を獲得できるような選手を指名しておきたいです。
候補は慶応大・中村健、JR西日本・佐藤直、白鴎大・大下を挙げたいと思います。
特に慶応大・中村は中京大中京高校出身と、近年続く5位指名の「地元枠」にも合致しているため、この候補の中では指名の可能性が高いかもしれません。
▼6位指名候補:素材型投手
最後に素材型投手として獲得を提案したいのは、丹生高・玉村、和歌山東高・落合、霞ヶ浦高・鈴木寛の3人です。
いずれもポテンシャルは高く評価されている投手のため、この順位では残っていない可能性も大いにあります。
ただ玉村は抜群の制球力と「ピッチトンネル」を構成する変化球の投げ分けができる点が魅力的、落合と鈴木寛は同じ高身長右腕である梅津・阿知羅の育成に好影響を与えたとされる門倉二軍コーチの指導がフィットしそうな点から、この指名順位まで残っていればぜひ獲得してほしい選手です。
以上、今年のドラフト会議に向けた指名戦略について考えてみました。
プロ野球ファンにとっては年に一度の一大イベントなので、明日は仕事を早めに切り上げてテレビの前で待機したいと思います。
以上、ロバートさんでした。
ありがとうございました!
データ参考:
プロ野球データFreak
*2019/10/17 中日新聞プラスへの投稿分を転載
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