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高卒2年目・山本拓実のプロ初先発を振り返る

皆さま、こんにちは。今回は

「山本拓実のプロ初先発を振り返ってみたい」

と思います。


山本拓実投手は2017年ドラフト6位で指名された、高卒2年目の選手です。

今季は根尾、石橋、梅津らルーキーと共にフレッシュオールスターゲームに選出され、小さな体から繰り出されるノビのあるストレートと投げっぷりの良さで、中日ファンのみならず他球団のファンをも魅了しました。

先週7/24、マツダスタジアムで行われた広島戦でプロ初先発を果たした山本拓実投手ですが、内容は5回2失点とまずまずながら打線の援護なく、残念ながら敗戦投手となってしまいました。

チームはここにきて大型連敗を経験するなど苦しい状況ですが、若干19歳のプロ2年目、期待の若手である山本拓実のプロ初先発は数少ない明るいニュースです。

中日ファンの皆さまならその内容を詳しく知りたいかと思いますので、今日は彼の今季二軍成績データプロ初先発の登板データを合わせて紹介した上で、今後の展望・課題について考えてみたいと思います。

1. 今季二軍成績

まずは山本拓実の今季二軍成績について振り返ります。

彼はプロ3年目の19歳ながら、今季は開幕から唯一怪我などの離脱なく先発ローテーションを守り抜き、ウエスタンリーグでは防御率が第4位、投球イニング数が第3位とかなり安定した投球を披露しています。

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上記の成績から、まとめると下記の傾向が挙げられます:

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四球数と奪三振数がほぼ同じ。三振を多く奪うタイプではないが、四球も少なくはない
打球傾向はフライアウトがやや多いが、特筆すべきほど極端な傾向は出ていない
・上記表には表れていないが、今季ファームでは3完投を記録(両リーグトップ)するなど長い回を投げるスタミナは十分。ゲーム終盤でも142-143キロの安定した球速を出すことができる
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以上の二軍成績を踏まえた上で、それでは7/24のプロ初先発における実際の登板データを深掘りしてみましょう。

2. プロ初先発の登板データ

2.1 登板結果
まずはじめに、簡単に登板結果について振り返りたいと思います。

●敗戦投手 (1試合 0勝1敗 防御率3.60)
5回 88球 被安打5 奪三振2 与四球3 失点2
ゴロ打球割合: 43.8% フライ打球割合: 56.3%

5イニングを投げただけの成績と二軍での傾向を比べるのもあまり意味がないとは思いますが、偶然にも二軍成績とほぼ同じような傾向が表れました。奪三振と与四球数はほぼ同数で数はイニング数と比べて多くなく、また打球割合もゴロとフライでほぼ半々という結果でした。

内容はともかく高卒2年目19歳のプロ初先発としては、上々の結果だったのは間違いありません。

連敗中の重たい空気の中、大歓声のマツダスタジアムで試合を作るピッチングが出来たのは素晴らしかったと思います。

より詳細な投球データについては、次項からじっくり見ていきましょう。

2.2 球種割合と平均球速
次に山本拓実が投じた88球における、球種割合と平均球速について見ていきます。

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・ストレート
初回は本人が試合後コメントしていた「緊張して上ずってしまった」というよりは、力みがあったのか普段よりかなり球速が出ていた (西川、菊池までは全球145キロ以上)。

2回以降は平均球速142-143キロで安定して、決め球に使う時だけギアを上げることでストレートを効果的に活用していた。特に3回二死二塁から鈴木誠也に投じたラストボール、アウトコースへの145キロは素晴らしいボールだった。

・スライダー
ストレートに次いで多く投げられた球種で、カウントを稼ぐ球としても決め球としても活用されていた。

中継を見る限り縦に落ちる変化をするものと、横に大きく滑る変化をするものの2種類を使い分けていたように見えた。

・チェンジアップ
ストレートと同じ軌道から左打者のアウトコースに向かって逃げていくボールで、特に左打者に対して活用されていた。この日は88球中4球しか空振りを奪えなかったが、その内2球は対左打者へのチェンジアップだった。

左打者に対してはゴロを打たせる&空振りを取れる、決め球になるボール。

・カーブ
早いカウントからストライクを奪うのに効果的で、この日投じた10球中8球はノーストライク、2球はワンストライクのカウントで活用されていた。打者のタイミングを上手く外しており、この日投げた4球種のうち唯一強い当たりを打たれることがなかった。

2.3 左右別、コース別投球傾向
次に打者の左右別に、どのコースにどの球種を投じたかを見ていきます。

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▼対右打者
・外角のスライダーと内角のストレートを中心に攻めていた。打者3巡目以降は結果的にはボールとなったが、内角へスライダーを投じるなど配球に変化も見られた。
・チェンジアップは右打者へは1球しか投じていない。右打者にとっては体に向かってくる変化をするボールのため、制球ミスを警戒した配球だったのかもしれない。

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▼対左打者
・ゾーン内外、高低、内外角に全球種を使って幅広く攻められていた。
・特に外角へ逃げるチェンジアップは大きく変化しており、かなり効果的。
・左打者へも内角はストレート中心だが打者をのけぞらせるほどのボールは投じられなかった。初回から左打者の内角へカウントを取りに行くカーブは使えていた。

また打者の左右に関わらず、基本的にボール球のほとんどが見極められており、前述した通り空振りが取れなかったのと合わせて、奪三振が少なかった要因だったと考えられます。


以上、山本拓実の投球を振り返ってみると、初回こそ失投や暴投を重ね失点してしまったものの、2回以降は立ち直り自分の投球が出来ていたように思います。

ストライクゾーン内への投球割合もリーグ平均を大きく下回り制球に苦しんだ感は否めないですが、一方でゾーン内への失投はほとんどなかったため、ボールを散らした、ある意味リスクの低い投球が出来ていました。

3. 今後の展望・課題

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最後に今回の結果を踏まえた、今後の展望と課題について考えていきたいと思います。

まず今後の展望についてですが、既に与田監督も明言されているように一軍での先発機会は今後も与えられることになりそうです

既に予告先発で発表されていますが、中6日で本日7/31の阪神戦 (甲子園)で先発予定です。聖地・甲子園では、プロ初勝利を懸けたマウンドになりますが、今回の反省点を踏まえてさらなる好投を期待したいところです。


今後の課題については、素人ながら来季以降のステップアップに向けて長期的視点で以下2点について考えてみました:

1. 球速アップ
今回の先発登板で記録したストレートの平均球速142.4キロは右の先発投手としては決して速い方とは言えず、更なる球速アップをシーズンオフにかけて取り組む必要がある。

ボール球を振ってくれない、空振りが取れない要因は、変化球も含めた球速帯が遅いのも要因と思われる。変化球において各球種の変化量は十分だと思ったので、あとはそれぞれ高速化させられるかどうか。

■参考になる先輩:柳裕也
柳は今季全球種で昨季より5キロ以上の球速増に成功した結果、ボール球スイング率と空振り率が良化し、結果として奪三振割合と四球割合の改善に繋げている。

球速増は一朝一夕では難しいが、柳の球速増を可能にしたオフの過ごし方・トレーニング方法などは参考になるはず。

2. 手元で小さく動く新球種の習得
先発投手として安定してイニングを稼ぐには、ゴロを多く打たせて効率よくアウトを奪うのが効率的かつローリスクである。特にドラゴンズの内野陣はリーグトップレベルの守備を誇るため、これを活用しない手はない。

カギになるのはストレートと同じ軌道から打者の手元で小さく動く変化球で、理想は対右にはツーシーム、対左にはカットボール。この2球種があれば今回の登板のように内角=ストレート中心といった被弾リスクの高い(=相手打者が読みやすい)投球を避けられるはず。

■参考になる先輩:松坂大輔
大先輩松坂は、ツーシームとカットボールの両球種をコーナーに投げ分けることで打者の芯をうまく外すことに成功している。

豪速球投手から歳を重ねるごとに平均球速も落ち、現在では140キロに満たないからこそ行き着いた境地かと思われるが、19歳の山本拓実でもその投球の幅を広げるには効果的なはず。

以上、山本拓実のプロ初先発から今後の展望・課題について考えてみました。

今後も一軍での活躍が期待されますが、そうは言ってもまだ若干19歳の若武者。たとえ結果が伴わなくとも、この一軍での経験は彼にたくさんの気づきをもたらしてくれることと思います。

またニュースやSNSでの投稿を見るに同世代へのライバル意識がバチバチに強く、また研究熱心な姿も見受けられるなど、個人的にはかなり期待している選手なので、これからも注目していきたいと思います。

以上、ロバートさんでした。
ありがとうございました!

データ参考:
スポーツナビ
1.02 Essense of Baseball
日刊スポーツ ファーム情報

*2019/7/31 中日新聞プラスへの投稿分を転載

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