見出し画像

6/24観戦記@神宮:中日とヤクルトに見られたブルペン運用の違い

ヤクルト打線にボコボコにされる不機嫌な週末土曜となりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。大敗濃厚のゲームから離脱して、昨日のゲームの観戦記をアップしたいと思います。仕事を早めに切り上げて向かった神宮球場周辺は小雨。バックネット裏2階の席を押さえていたので、天候に関係なく快適に試合観戦できました。

試合総評:先発若松が序盤に捕まりKO。打線も小川を捉えきれず交流戦明けの初戦を落とす

試合はヤクルト小川、中日若松の両先発で始まりました。若松は初回先頭の大引にいきなりツーベースを打たれると、二死三塁から山田にアウトローいっぱいの直球をライトスタンドギリギリに先制の24号ツーランホームラン。初回から谷繁監督が試合前にコメントしていた「山田の前にランナーを出さないこと。ソロホームランならOK」という方針の真逆をいく展開になってしまいました。その後も若松は球が高めに浮く悪癖が顔を出し、3回までに5失点を献上。序盤で試合を決められ女房役の杉山ともども4回でゲームから退場させられてしまいました。一方でヤクルト先発小川は安定感あるピッチングを披露。6回には亀澤、ナニータに粘られ38球を投じるも無失点に切り抜け、今季4勝目をゲット。ドラゴンズ打線は走者は出すものの決定打が出ず、交流戦明けの初戦を落としました。

フォーカスポイント:中日ドラゴンズと東京ヤクルトスワローズの、対照的なブルペン運用

…さて無難な試合評は例のごとくこの辺にしておいて、ここからは以前対西武ライオンズとの試合で考察した「ブルペン運用」について観察してきたことをメモしたいと思います。前回の投稿はコチラです。↓

そもそも私がこの考察を行ってみようと思ったのは、Slugger2016年3・4月合併号に掲載されていた、高津臣吾現・スワローズ投手コーチのインタビュー記事がきっかけでした。記事の中で、高津コーチはMLBでのブルペン運用について以下のように語っています。

「メジャーのブルペンはバッター3人くらいの間に登板できる肩を作らないといけないんです。日本は登板のあるなしにかかわらず、1度ピッチング練習をして準備します。それから着替えて、次の電話が鳴った時に、10、20球を投げればマウンドに上がれるような態勢を取るんですけど、アメリカは1回の電話で、その時が1番打者なら4番に合わせてくれと言われるんです。その3人で肩を作らないといけない。つまり、最初に投げる球から、20、30球で肩を作る。僕は肩ができるのが早いほうでしたけど、それでも戸惑いました。でも、このやり方になじんでいくと、余計なボールを投げないのでやりやすかったです」
昨シーズン、ヤクルトの中継ぎ陣は1度で肩を作るルーティンを徹底した。その効果で余分な疲労を軽減。1年間投げ続けることができた。高津のアメリカでの経験が十分に生きる結果となった。
「最初は戸惑いがありますけど、絶対にできることなんです。いかに慣れるか。ヤクルトの一軍の投手は、みんなができるようになったので、秋吉(亮)やオンドルセクが70試合投げても、最後までへばらなかった。その調整法がうまくいったからと思っています。」
Slugger2016年3・4月合併号内「不定期連載インタビュー MLBから何を学んだのか⑧ 高津臣吾[東京ヤクルト一軍投手コーチ]」より引用

昨年のヤクルトの躍進を支えたのは自慢の強力打線はもちろんですが、リーグトップの救援防御率2.67とブルペンの整備に成功した高津コーチの手腕も大きかったと感じています。実際に高津コーチはリリーフ投手をどのタイミングで準備させ、マウンドに送り込んでいるのか?今回も双眼鏡片手に両チームのブルペンを観察してきたことをメモしていきたいと思います。

前提条件:両チームとも交流戦明けで先週日曜から4日試合なし

6/11ベンチに入っていたピッチャー
ヤクルト:秋吉、成瀬、松岡、村中、土肥、ルーキ 、オンドルセク、平井
中日:田島、又吉、岡田、武藤、山井、祖父江、福、小川

それでは行ってみましょう。

■1回表
小川:12球、1安打、無失点
■1回裏
若松:26球、2安打、1与四球、2失点
*両ブルペンとも動きなし

■2回表
小川:12球、無安打、無失点
 中日:福、武藤投球練習開始
■2回裏
若松:14球、1安打、1失点
 中日:福、武藤投球練習終了。小川、祖父江開始。

■3回表
小川:8球、1安打、無失点
 中日:小川、祖父江終了。福、武藤再開
■3回裏
若松:21球、2安打、1与四球、2失点
 中日:福、武藤終了

■4回表
小川:14球、2安打、無失点
■4回裏
若松:13球、無安打、無失点
 中日:小川、武藤(3度目)再開、終了

■5回表
小川:11球、無安打、無失点
 中日:福(3度目)再開、終了
■5回裏
若松→福
福:17球、無安打、1与四球、無失点
 ヤクルト:成瀬開始、終了
 中日:岡田、又吉開始、終了

■6回表
小川:38球、1安打、無失点
 中日:武藤(4度目)再開、終了
■6回裏
福→武藤
武藤:8球、無安打、無失点
 ヤクルト:平井、村中開始、終了
 中日:田島開始、終了

■7回表
小川:22球、2安打、無失点
 ヤクルト:オンドルセク開始、終了。成瀬再開、終了。
 中日:山井開始、終了。祖父江再開、終了。

■7回裏
武藤→祖父江
祖父江:17球、無安打、無失点
 ヤクルト:秋吉開始、終了
 中日:小川(3度目)、山井再開、終了

■8回表
小川→秋吉
秋吉:24球、1安打、1与四球、1失点
■8回裏
祖父江:8球、無安打、1与死球、無失点
 ヤクルト:オンドルセク再開、終了
 中日:小川(4度目)、山井(3度目)再開、終了

■9回表
秋吉→オンドルセク
オンドルセク:6球、無安打、無失点
試合終了

試合展開を読みながらなるべくリリーフ投手に準備させないヤクルト、全投手に肩を作らせ試合展開に応じて複数の投手に複数回準備させる中日

ブルペン稼働状況まとめ
ヤクルト:秋吉、成瀬、村中、オンドルセク、平井の5投手が投球練習。うち秋吉、オンドルセクが登板。複数回投球練習を行ったのは成瀬、オンドルセクの二人。成瀬はリリーフ転向後間もないため肩を作るのに球数を要するためか?村中、平井の2投手は小川が38球を投げさせられた6回表終了時に投球練習を開始するも、7回に小川が立ち直ったため登板機会なし。秋吉は前述の記事通り登板前の1イニングの間に肩を作り、登板。
中日:ブルペン入りした全8投手が投球練習。うち武藤、祖父江、福の3投手が登板。小川や山井は複数回断続的に投球練習を行うも登板機会なし。山井、田島の8、9回を任される投手以外は常に左右両方の投手がセットで投球練習を行う。ほぼ毎回誰かが投球練習を行っており、4点ビハインドの8回裏でも投手を準備させる。

以上、両チームのブルペン運用について観察してきました。スワローズは小川の出来がよかったのもあり、試合序盤はブルペンがほとんど空でした。小川の球数がかさむにつれて、突然の降板に備えリリーフ投手を準備させるシーンも見られましたが、それもあくまで最小限に抑えようとする意図が見られました。4点差、5点差でも勝ちパターンの秋吉・オンドルセクを投入してきたのは少し疑問に思いましたが、今季ここまでリーグ最下位に沈み救援防御率もリーグワーストの4.51と不振なのも考えると、勝てる試合には何点差があろうが勝ちパターンの投手をつぎ込むのはしょうがないと考えていたからかもしれません。実際に彼らの4点差以上の登板は少なくないようです。

一方のドラゴンズは相変わらずゲーム序盤からブルペン大忙し。今日は若松が早いイニングで降板したのもありますが、前回西武戦で大野が完投したにもかかわらず6回までにブルペン入りした全投手が投球練習を行っていたのと合わせて考えると、「点差及び投手の出来に関係なく、6~7回までに全投手の投球練習を完了させる」というのがドラゴンズのブルペン運用の方針のように思います。試合展開は刻々と変わるのは当然のことかとは思いますが、8回裏のゲーム最終盤でチームは敗色濃厚にもかかわらずまだ2人の投手に準備をさせていたのはリスク管理というよりも自軍の投手を過小評価し、またシーズン全体を見通したブルペン運用という観点が欠けているのではと感じざるを得ませんでした。防御率0点台と安定している祖父江をこの展開で投入し、回またぎまでさせるというのも納得いきません。スワローズと対照的にドラゴンズの救援陣はここまでリーグトップの防御率2.77をマークしておりますが、ブルペン運用という観点で見ると両チームには大きな開きがあるように感じます。

ゲーム序盤からフル稼働の中日ブルペン。好調キープもシーズン完走できるだろうか?

前述の高津コーチの言葉を借りると、ブルペンを必要以上に稼働させることでシーズン終盤にリリーフ陣がへばってくることが想定されます。またドラゴンズはここまで回またぎこそ少ないですが連投は多く、又吉ら一部の投手に負担が集中しています。現在は年齢も若く質量ともに充実したリリーフ投手陣が好調を維持していますが、シーズン終盤にかけて崩れないか不安でなりません。

また今シーズンだけでなく、負担が集中したリリーフ投手が翌シーズン以降怪我や不振で戦線から離脱するリスクも大いにあります。ドラゴンズはこれまでこのパターンで多くの好投手を現在進行形で失っていることを考えると歴史から学んで欲しいところですが、どうも「リリーフ投手は心配しなくても次から次に出てくる」と考えている節が見受けられ、なかなか改善されるのは難しいように感じます。

今後も引き続き、ドラゴンズと他球団の起用法を比較することでブルペン運用について理解を深めていきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?