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2戦2勝の救世主!松葉貴大の好投を振り返る

*2020/7/28 中日新聞プラスへの投稿分を転載

皆さん、こんにちは。今回は

「松葉貴大の投球を振り返る」

をテーマに考えたいと思います。

今季(*2020年)ここまではなかなか先発投手の成績が奮わない、中日ドラゴンズ。7/27時点における先発投手の防御率は4.40でリーグ4位、QS率は36.4%でリーグ5位に沈んでいます。柳裕也、ロメロと昨季ローテーションを守った投手が離脱中とは言えど、開幕前からファンの期待を背負っていた若手投手陣が早々にマウンドを降りる日々が続いています。

そんな中で、柳に代わり一軍マウンドに抜擢されたのが、移籍2年目の松葉貴大。ただファームではゴロを多く打たせる投球を見せていたとは言え、さほど好成績を残しているわけではありませんでした。あくまで「開幕から二軍でローテーションを守り続けた、即一軍で投げられる投手」という位置付けでの一軍抜擢だったように思います。

▼2020 松葉貴大 二軍投球成績
2試合 13回 1勝1敗 防御率5.54
K% 13.5 BB% 3.8
被打率: 右.303 左.235
ゴロアウト割合: 54.8%

ただ蓋を開けてみると、松葉は今季初登板となる7/15のDeNA戦で6回途中1失点の好投を見せ、移籍後初勝利!続く7/22の巨人戦も、6回無失点の好投でなんと2連勝をマークしました。いずれもチームの連敗を止める価値ある勝利で、松葉はまさに最下位に喘ぐチームの救世主と言っても言い過ぎではないでしょう。

今回の記事では、松葉がここ2試合でどのような投球をしていたのか、データとともに詳しく振り返っていきたいと思います。


1. 7/15 DeNA戦

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◯7/15 松葉貴大 投球成績
5回1/3 86球 被安打6 被本塁打1 奪三振3 四死球0 自責点 1

この日の松葉は6回途中86球と球数的にはまだ余裕があったものの、ソトの一発、続く佐野にもヒットを打たれるなどDeNA打線に捕まりだしていたことで、早めの交代でAチームにバトンを託すことになりました。松葉は球威で圧倒するような投球ではなかったですが、豊富な球種を駆使して16アウトのうち10アウトを内野ゴロで奪う、これまで見せてきたグラウンドボーラーとしての特性を遺憾無く発揮しました。

以下では、松葉の投球を打者の左右別でさらに詳しく見ていきたいと思います。

1-1. 対右打者: 変化球主体でボール球を振らせる投球

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DeNAの対右打者に対しては、変化球を多用することで被安打わずか1本に抑えました。

特に右打者の足元に向かって変化するカットボールは、スライダーより速く、膨らみが少ない軌道から曲がり落ちる変化で、空振りを奪うボールとして機能しました。4回二死一塁で迎えたロペス相手に、同じようなコースのカットボールを2球投じいずれも空振りを奪った場面は、特に印象的です。

さらに右打者の外角へは、同じような軌道からフォークとチェンジアップを活用。フォークは一般的なフォークのように落差があるというよりは、ツーシームのように手元で動かしてくるイメージに近い球種です。逆にチェンジアップはしっかり落差をつけることで打者の空振りを誘うボールですが、この日は3つの内野ゴロを打たせることに成功していました。

またカーブは3球のみで投球のアクセントとして活用し、曲がりの大きなスライダーは対右打者へは1球も見せませんでした。

対右打者への配球の特徴をまとめると、比較的ストレートに近い軌道のボールから異なる変化をする球種を複数操ることで、打者を撹乱することに成功したと言えます。試合後のコメントでは「ストライクを先行する投球」を特に強調していましたが、実際にはストライクゾーン内で多く勝負したというより、ボール球を振らせる投球ができていたと捉える方が適切かもしれません。

1-2. 対左打者: 球種、コースともに限定的な投球

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一方で対左打者には、フォーク、チェンジアップはほとんど使わず、ストレートと左打者から逃げる4球種のみで勝負していきました。さらにインコースもほとんど活用せず、外一辺倒の配球に終始していたと言えます。

対左はボール球を振らせるというよりはコメント通り「恐れずゾーン内で勝負する投球」だったと言えますが、被打率を見ても分かる通り、甘いコースにきたボールは多くヒットにされていました。

豊富な球種を生かせる対右への投球と比較して、対左への配球はかなり窮屈な投球をしている印象です。内角を突くボールの精度に自信がないのかもしれませんが、今後の課題としてはインコースへのストレートを見せ球としてでも活用すること、もしくはカットボールをフロントドア気味に内角へ入れる、フォークやチェンジアップも外角のボールゾーンからストライクゾーン内へ入れるようなハイレベルな配球も、制球力に優れた松葉には期待したいところです。


2. 7/22 巨人戦

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◯7/22 松葉貴大 投球成績
6回 91球 被安打4 奪三振5 四死球2 自責点 0

4連敗中の中マウンドに上がった松葉は、巨人打線を相手に6回無失点のQSピッチで2勝目。7回には一度マウンドに上がるも、代打中島がコールされたところで交代を告げられました。球数的に余裕はあったものの、連敗中で登板間隔の空いたAチームリリーフが多く控えていたこと、巨人打線に徐々に捕まりだしたことから「安全な」継投策を選択したと考えられます。また代打のカードが豊富な巨人相手に、少しでも対戦を楽にしようとする工夫だったのかもしれません。

この日は初回に2四死球を与える立ち上がりも、2回以降は散発4安打、5三振を奪う好投。前回登板はアウトの多くをゴロアウトで奪っていましたが、この日は犠打、奪三振を除く12アウトのうち8アウトをフライアウトに仕留めました。これは次に述べる配球の変化が関係しているのかもしれません。

2-1. 対右打者: 内角へのクロスファイアを強調

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木下拓哉とバッテリーを組んだこの日は、積極的に右打者のインコースをストレートで突く、クロスファイア中心の投球を見せました。前回登板では対右打者相手に1球も投げなかったスライダーを多く活用し、逆に空振りを多く奪うボールとして機能していたカットボールを減らしたのも注目すべきポイントです。またこの日は外へのフォーク、チェンジアップがなかなか外角低めに制球できなかったことも、スライダー系中心の配球となった一因なのかもしれません。

右対左、もしくは左対右で内角を厳しく攻める配球は木下拓の特徴とも捉えられますが、松葉は抜群の制球力で多彩な球種を操ることができる分、配球をガラッと変えても対応できるのが強みと言えるでしょう。今後ライバルチームによる分析が進んだとしても、各球種の配分を絶妙に変えていきながら、相手打者を翻弄し続けることは決して不可能ではないはずです。

2-2. 対左打者: 左は丸、パーラとの4打席のみ

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最後に左打者への配球についてですが、巨人原監督は左の松葉に対して右打者をずらり並べる采配を見せたため、左打者との対戦は丸佳浩と途中出場のパーラの4打席のみに限定されました。

基本的な配球傾向は前回同様で、アウトローへストレート、スライダー、カットボールを集める投球。丸を見逃し三振に仕留めた5回の投球は圧巻で、2球目以降完璧なコントロールでアウトローへボールを集め、最後はこの日最速の143キロストレートをコースギリギリに投げ込む、惚れ惚れするような投球でした。


3. まとめ

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以上、松葉の2登板について振り返ってみました。
松葉好投の要因についてまとめると、以下の通りかと思います。

①奪三振こそ少ないものの、ストライク先行で打たせる投球で、守備からリズムを作る
▽中日・京田、貴重な追加点たたき出す一発!1カ月ぶり2号ソロ 快投した松葉の「リズムに乗って打てた」
②ストレートと近い軌道から内、外へ複数の変化球を使うことで打者を撹乱。低めに制球されたボール球も多く振らせることができていた
③多彩な変化球を駆使するため配球パターンが豊富で、相手チームに的を絞らせにくい

ストレートの平均球速が140キロに届かず、球威はイマイチなものの高い制球力、豊富な球種で相手を手玉に取る松葉の投球は、若手投手陣がそのまま真似をすることは難しいかもしれません。ただ松葉の翌日に先発している岡野祐一郎が「松葉さんをお手本にした」とコメントした後から好投を続けていることを考えると、開き直ってゾーン内で勝負するマインドはどの投手にも参考になるはずです。

一方で松葉の今後の課題を挙げるとするなら、対左打者対策が重要になってくるでしょう。巨人戦のように右打者を並べられると松葉の豊富な球種が生きてきますが、逆に左を通常通り配置してくる、外のボールに目付けをして狙い打ちする対策をされると厄介かもしれません。前述の通り、左打者の内角を適宜使えるような対策が今後必要になってくると考えます。

ただ昨オフから取り組んだクロスステップ気味の投球フォームへの変更、新球カットボールの習得などのアップデートが結果に着実に結びついている松葉なら、またいろいろな工夫で課題をクリアしてくれると信じています。


以上、ロバートさんでした。
ありがとうございました!


データ参考:


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