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【前半戦終了】各指標からみた、福田永将の111打席。今年こそ飛躍の一年となるか?

前半戦87試合が終了しました。我らがドラゴンズは39勝45敗3分と5割で折り返すことができず、広島独走のセリーグで4位でフィニッシュ。広島以外の5球団が5割を割り込む現状ではあまり順位の話をしてもしょうがないですが、Bクラスでオールスターブレイクを迎えるのはあまり気持ちのよいものではないですね。

前半戦を振り返ってみると、まず思い起こされるのが打線に「新しい風」が吹き荒れたことが挙げられます。残念ながら右手骨折で5月以降出場がありませんが、5年目・高橋周平は遂に3球団競合1位の片鱗を見せました。鳴り物入りで獲得した新外国人ビシエドも5, 6月は苦しみましたが、3, 4月の月間MVPを獲得するなど、前半戦は全試合で4番に座り打率.289 19本塁打 59打点と打線の軸としてチームを引っ張りました。また開幕前は内野のユーティリティとしてしか期待されていなかった10年目の堂上直倫のショート定着も、ファンにとっては嬉しい誤算だったのではないでしょうか。打撃はまだまだですが、リーグトップクラスのショート守備は今やチームにとって欠かせない戦力となっています。

10年目の「新しい風」と言えば、この人を忘れてはいけません。堂上直倫と共に2006年のドラフトで指名された横浜高校出身の和製大砲、福田永将です。


高橋周平が怪我で離脱以降空いたサードの穴はなかなか埋まらず、エルナンデスや谷、亀澤らで急場を凌いできましたが、長らく打線の弱点となっていました。そんなチームの穴を埋めたのが、今季二軍で三冠王の活躍を見せていた福田永将。シーズン序盤は主に代打やファーストでのスタメン出場を続けていましたが、結果が出ず一軍と二軍を行ったり来たりのエレベーターボーイに。それでも腐らず二軍で好調を維持していた結果、6月以降はサードのスタメンに抜てきされるようになります。その直後は結果が出ませんでしたが、6/24に再昇格してからは自慢の打棒が爆発。再昇格の翌日以降全試合に6番サードでスタメン出場し、前半戦終了のここまでで打率.302 5本塁打 17打点と見事にサードの穴を埋めるに余りある活躍を見せています。高橋周平復帰間近の今、ポジションがかぶる福田永将の「想定外」の活躍は、首脳陣を大いに悩ませているのではないでしょうか。

2015年春にも見せた福田の「確変」。後半戦も好調は続くのか?!

福田の好調が続く一方で、去年の「春の珍事」が脳裏をよぎっているドラゴンズファンも多いのではないでしょうか。2015年春、骨折で戦線離脱した森野に代わって主にファーストでスタメン出場した福田は、和製大砲の才能開花とも思われる豪快な打撃を連日披露。過去8年間でわずか4本塁打と伸び悩んでいた男が、3, 4月のひと月で同じ4本塁打を放つなど、覚醒の兆しを見せました。


しかしその後は徐々に調子が後退。5月以降は打率.180とまるで打てず、9年目の「覚醒」は単なる「確変」で終わってしまいました。過去8年間継続して試合に出続けてきた経験がない分、分析・対策されプロの壁にぶち当たってしまったのも無理はありません。真の覚醒は今年2016年に持ち越されていました。


2016年夏、ここまで昨年春と同様かそれ以上の打棒を発揮している福田ですが、去年のしりすぼみを目の当たりにしている以上、「今年もどうせ・・」と内心思っているファンは多いことでしょう。なにより私自身も、ノーヒットで終わる日があると「この日を境にまた打てなくなるのでは・・」とヒヤヒヤしています。6番サードのポジションを掴みかけている10年目の大砲が、今年いよいよ覚醒するのか?それとも2年連続の「確変」で終わるのか?去年の成績と今年の成績を見比べた上で、後半戦の福田の成績を占っていきたいと思います。...まぁ111打席程度の少ないサンプル数から確変か覚醒かを見抜くことは不可能とは思いますが、エンタメ感覚で読み進めてくれればと思います。打席数など量に差があるので、基本的には率などある程度比較が可能な指標をnoteします。

2016年福田の変化: ボール球振らない、空振りしない

データはDELTAさんの1.02 - Essence of Baseballさんより参照しています。
2015年福田→http://1point02.jp/op/gnav/leaders/pl/pbs_standard.aspx?sn=2015&lg=0&tm=1954001&ps=0&pn=50
2016年福田→http://1point02.jp/op/gnav/leaders/pl/pbs_standard.aspx?sn=2016&lg=0&tm=1954001&ps=0&pn=50

まずは基本的な打撃成績の比較。

去年の出場試合数の半分程度ですが、ここまでホームランと打点の量産ペースはかなり良く、このまま行けば自己最多の昨年を大きく上回るのは間違いなさそう。打率もなんとか3割を維持しており、昨季が.243だったのに比べると大きな進歩です。また運の善し悪しを表すことに用いられるBABIP(=インプレー打率)を見ると、昨年は打率との乖離が見られ、単に幸運だったのが序盤のブレイクの要因の一つとも考えられそうですが、今年は打率とほぼ変わらず。去年と比較して今年は実力で好成績をマークしていると言えるかと思います。

大きな違いがあると言えば、四球率の増加三振率の減少が挙げられると思います。四球数は前年の7.6%→9.0%に上昇し、三振率は33.5%→11.7%まで大幅に改善しています。約3打席に一度は三振していた男が、およそ3試合に一度しか三振しなくなったと考えると大きな変化でしょう。四球率の上昇と併せて考えると、打席でのアプローチがこの好結果に繋がっていると考えます。ホームランが増えヒットもコンスタントに打てるようになり、かつ三振も少なく四球も選ぶ。昨年の成績とここまでを比較すると、打者として理想的な「進化」を遂げてるようにも見えます。

次に福田の打席でのアプローチに違いが見られるかどうかnoteしていきます。

まず目を引くのはボール球スイング率(O-Swing%)の改善です。昨年はボール球の4割はブンブン振りにいっていたものが、今年はここまでリーグ平均レベルの3割程度に抑えられています。またスイングした内の何回バットに当たったかを表すコンタクト率(Contact%)は、昨年の63.8%→81.7%に大幅改善し、同様に空振り率(SwStr%)も19.4%→8.5%と劇的な変化を遂げています。福田と言えば特大のホームランと共に豪快な空振りもその魅力ですが、今年は打撃の確実性が打率のみならず、打席のアプローチにも如実に表れています。この「ボール球に手を出さなくなった」ことと「空振りしなくなった」ことが、先に述べた四球率の増加と三振率の減少に寄与したのでしょう。上記2点は一朝一夕で改善するほど簡単なことではないですから、打者福田のこの一年での進化を表しているかと思います。

2016年福田の変化2: 直球に滅法強くなった

次に球種別の対応をチェックします。まずは対戦投手が福田相手にどんな球種を投げ込んできたのか、その球種割合を比較します。

2015年と2016年の割合を見てみると、全体的に特に大きな変化はないように見えます。挙げるとすれば、直球で攻められる割合が若干減り、ツーシーム&カットボールのゴロ系を誘発するボールが増え、外角低めに多く投じられただろうと想定されるスライダーの割合もやや増加している。またカーブ、チェンジアップ、フォークなど遅い変化球の割合も揃って減少しているとも言えます。ただ基本的には昨年と今年とでは攻め方に変化がないと言ってしまっていいのではないでしょうか。攻め方に変化がほぼない中で成績は向上しているわけですから、ここでも福田の進化の一端が感じ取れます。

次に球種毎の打撃結果をチェックしていきます。各球種に対し、100球毎にどれだけ得点に貢献したかを示しています (Pitch Value)。平均的な打者だと数値がゼロになるため、プラスなら得意としている、マイナスなら苦手とざっくり把握することができます。

昨年から今年にかけての大きな変化はストレートへの対応力向上でしょうか。昨年はマイナス数値だったのがプラスに転じており、得意のツーシーム&カットボールと合わせて今年はここまでとにかく直球系に強いところを見せています。配球の基本は速いボールで、全投球のおよそ50~60%は直球系のボールが投じられることから、福田の好調はストレートを苦手としなくなった、振り遅れなくなったことが一因であると言えます。

変化球の対応というところで言うと、チェンジアップやフォークといった「落ちる系」のボールには対応力を見せているのに対し、スライダーやカーブといった「曲がる系」のボールはあまり得意ではないように見えます。この点は後半戦の課題であるかと思います。

打者として「覚醒」の片鱗。ここから大崩れすることはなさそう?!

以上、福田永将の今季ここまでの111打席と昨季の185打席を比較して見てきました。結論としては昨年と比較してボール球をより見極められることができている、空振りが減りバットコントロールが良くなっている、またストレートへの対応力が改善しているということが、今季の好調につながっていると考えます。昨年と違いボール球を振らず打てるボールを待ち、ミスショットせずヒットを打ち続けている様は、打者として遂に「覚醒」の片鱗が見え始めたのでは、と感じます。昨季のブレイクは春だけの一過性のものに終わってしまいましたが、今年はそれほど大崩れすることはないのでは?と期待しても良いのではないでしょうか。

ただサンプル数が少ない中、将来性を見通すのはとても難しいことです。昨年の福田が5月以降プロの壁にぶつかったように、今年も後半戦から壁にぶつかる可能性は大いにあります。前半戦最後の2試合でノーヒットに終わるなど、6月末から7月頭にかけての絶好調時とは調子も落ち着いてきています。福田のような実績のない打者は一度崩されてしまうと、好調時のフォームや感覚に戻すことはたやすくはないでしょう。ポジションのかぶる高橋周平の復帰後は、ビシエド・ナニータの両外国人がライバルとなることもあり、環境的にも決して恵まれてはいません。福田にとっての後半戦は正に、プロ野球選手としてひとつの重要なハードルを越えなければならない、正念場なのかもしれません。

同い年の私としては多分に贔屓目で見ているのも自覚していますが、今回の分析結果を信じ、福田の後半戦のさらなる活躍に期待したいと思います。10年目、遅咲きの和製大砲が遂に花開くか?!後半戦もドラゴンズ福田永将から目が離せません。


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