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R.マルティネス帰国後の「外国人枠最適活用シナリオ」を考える

皆さま、こんにちは。今回は

「ライデル・マルティネス復帰後の外国人枠運用」


について考えてみたいと思います。

パン・アメリカン競技大会野球競技にキューバ代表として参加するため、先月の7/15を最後に離脱しているライデル・マルティネスですが、先週日曜に大会も終了。一部報道では早ければ12日の阪神戦から再合流する見込みとのことです。

現地での状態次第ですがこの9連戦中に早速の一軍登録可能な状況ですが、チームとしては考えなければいけない問題が一つあります。

それは

「外国人登録枠の関係上、一軍には4人の外国人しか登録できない」

ことです。

現在一軍にはビシエド、アルモンテ、ロメロ、ロドリゲスと既に4人の選手が登録されており、たとえライデル・マルティネスが帰国してもこの4人に追加して登録できないのが現状です。

一方で離脱前は球威十分のストレートを武器に6月以降クローザーを務めていたマルティネスが復帰すれば、最近やっと形になってきたAチーム(岡田、ロドリゲス、福)中継ぎ陣をさらに強化することが可能です。

チームは現在5位に沈んでいますが、残り試合でラストスパートをかけて7年ぶりのAクラスに滑り込むには、外国人枠をどのように活用すべきでしょうか。

今回の記事では、Twitterの中日ファン・他球団ファンの意見も参考にしながら、効果的な外国人枠運用について考えます。

1. Twitterでのアンケート結果

まず始めに、今週火曜日に私がTwitterに投稿した下記アンケートの結果について見て行きたいと思います。

質問は「ライデル・マルティネスの復帰が間近ですが、彼の復帰に伴って二軍調整とした方がいいと思う選手は誰でしょうか?不動の4番ビシエドを除く以下選手の中からご回答ください。」というものでした。

2,476票もの投票を頂いた結果は、下記の通りになります。

投票全体のおよそ90%がロメロとマルティネス(入れ替えなし)に集まりました。

後半戦に入り3番打者として存在感を発揮しているアルモンテとリーグ屈指のセットアッパーとして君臨するロドリゲスの一軍登録は前提として、先発ロメロと中継ぎマルティネスのどちらを一軍登録しておくべきかについての議論が大半だったように思います。

もっとも投票が多かったロメロを二軍調整とすべきとした主な理由は・・
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・先発投手としては長い回を投げられず、外国人枠を使うには物足りない
・小笠原、梅津、松葉らファームで順調な調整を続ける投手がいるので、先発の頭数には困っていない
・今季は先発投手を早い回で降ろす傾向があるので、中継ぎの層をより厚くしたい
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続いて28%の票が集まったマルティネス(入れ替えなし)に投票した理由は・・
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・現状リリーフは岡田、ロドリゲス、福を中心に安定しておりマルティネスを補充する緊急性を感じない
・ファームで期待の先発投手が多数控えているとは言え、活躍は不透明のため6回前後とは言え安定した活躍が期待できるロメロの存在は不可欠
・国際大会参加の疲労を考慮すると、暫くは二軍調整としてシーズン最終盤の「秘密兵器」として温存しておきたい
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また少数意見となりますがアルモンテを挙げた意見としては「高橋周平の復帰、福田の好調」が理由、ロドリゲスを挙げた意見としては「登板過多による疲労が心配」との理由でした。

今回アンケートを実施してみて多種多様な意見を頂戴することができ、非常に有意義だったと思っています。

これだけ多角的に議論できれば実際に誰が二軍調整となっても納得できるのかなと思いますが、一応私自身はどう考えるのかについて、以下でデータを交えて考えていきたいと思います。

2. 外国人枠の効果的な活用のための、3つの起用オプション

上記アンケートではビシエドを除いた4選手のうち誰を二軍調整とすべきか、と言う問いになりましたが、現実的には以下3つの起用オプションのうちどれを選択するかと言う検討がされているのではと推察します。

①マルティネスとロメロの入れ替え
②マルティネスとアルモンテの入れ替え
③マルティネスの二軍調整

いずれのオプションにもメリット・デメリットはあるので、以下で詳しく考えてみたいと思います。


①マルティネスとロメロの入れ替え

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このオプションを取る際のメリットはマルティネスをブルペンに加えることでAチーム (=僅差の勝ち試合に投げさせる中継ぎ陣)をさらに厚くできる点と、好調アルモンテを3番に据えたまま打線の破壊力を維持できる点にあります。

特にリリーフ運用については、現在ドラゴンズは岡田をクローザーとして起用しロドリゲス、福の二人を7-8回に投げるセットアッパーとして起用していますが、全員左投手のためそこに右投手のマルティネスを加えることでより起用の幅が広がります。

またこれまでは先発投手が早い回で降りた時や僅差のビハインド、同点の際はBチームの投手から投げさせていましたが、Aチームの枚数が増えると例えば6回から福を投入できるメリットが生まれます。

シーズンも佳境に入りどのチームも中継ぎ陣の疲弊に苦しむ中、マルティネスをブルペンに加えることはゲーム終盤の強さに多大な影響を与えると考えます。

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一方でデメリットについては、ロメロを降格させることによる先発陣の駒不足が挙げられます。

ロメロの先発投手としての働きに不満を感じているファンは少なくないかと思いますが、現状大野雄、柳に次ぐ長いイニングを投げられる投手であり、彼を失うことで「イニングを食えない」投手をより多く起用しなければならず、その結果マルティネスを加えたと言え中継ぎ陣への負担が逆に増えることが考えられます。

小笠原、梅津に松葉ら新戦力が控えていることはポジティブなニュースですが、彼らがロメロ並みの成績を残せるかは現時点では未知数です。

よってこのオプションを取る際には「二軍調整中の投手たちがロメロを二軍に置いてもいいと言えるほど、長いイニングを投げられるかどうか」と言う点に確信が持てないと難しいと言えます。


②マルティネスとアルモンテの入れ替え

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次にこのオプションを取る際のメリットは、①と同様にブルペンの層を厚くする点に加えて、駒不足の先発陣をロメロを据えたまま維持できる点にあります。

オプション①でも述べましたが実力不足の投手を一軍で投げさせることにより、より多くの中継ぎ投手を試合で使わなければいけなくなるリスクが生じます。

また既に一軍で実績あるロメロを使い続けることは、早い回で先発投手が炎上し早々に試合が決まってしまうリスクを逆に下げることができます。

一方でデメリットについては、3番アルモンテの起用ができなくなってしまうことに尽きます。

アルモンテが二軍調整となった場合代役としてレフトに入るのは福田になると思いますが、彼ら二人の比較というよりは3番打者がアルモンテから大島に変わることのマイナスの方が大きいと考えます。

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3番打者は打順的に3番目に多くの打席が巡り、かつ走者を置いた場面での打席も多い「得点を重ねる上での重要性がかなり高いポジション」です。

よって高出塁率、高長打力を兼ね備えたアルモンテのような打者の起用が最適だと思われますが、彼を欠いた場合は今季100試合中68試合で3番に座る大島の起用が濃厚です。

打率・安打数・盗塁数でリーグトップを争うほど好調な彼の成績を批判するつもりは毛頭ありませんが、ホームラン0本、長打率がリーグワーストから数えた方が早い選手を3番に置いて「長打による走者の進塁」を期待するのは効率的であるとは言えません。

よってこのオプションを取る際には「3番打者に出塁率と長打率を両立した強打者を据えられるかどうか」が鍵になりますが、候補となりそうな平田は1番でほぼ固定で、現在好調の福田は一発長打は期待できますが打撃の確実性で疑問が残るタイプ。

また怪我から復帰の高橋周も好調時でさえ1試合も3番起用がないことを考えると、若手先発投手の一軍台頭以上に、代替可能な日本人選手を据えるハードルがもっとも高いオプションであると考えます。


③マルティネスの二軍調整

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最後にこのオプションを取る際のメリットは、これまでに挙げた先発・3番打者のデメリットをロメロとアルモンテでカバー出来る点がもっとも大きいと考えます。

またシーズン序盤からフル回転のロドリゲスと国際大会への参加で疲労が懸念視されるマルティネスいずれかをファームで温存することで、シーズン最終盤の山場に向けて準備させることも可能です。

マルティネスの離脱により現状このオプションを採っている形になっていますが、前提条件として日本人中継ぎ投手の好調が要因に挙げられると思います。

2度の失敗はあったもののクローザーに定着しつつある岡田と、抜群の制球力と高い奪三振能力を誇る福がAチームで起用できるようになり、マルティネスの穴を感じさせないほどゲーム終盤の安定感は増しました。また藤嶋の台頭もその要因として挙げられるでしょう。

先の二つのオプションのメリットとして「早い回から勝ちパターン級の投手をつぎ込めること」と指摘しましたが、彼らが現在の調子を維持できれば敢えてマルティネスを登録せずとも、ブルペンの質を維持できると言えます。

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ただこのオプションのデメリットとしては、現在好調なAチームの調子が悪くなった時に起爆剤となれる日本人投手が未知数、という点が挙げられます。

例えば先に挙げた藤嶋については8/7現在10試合に登板し防御率0.00と圧巻の投球を見せていますが、一方でLOB%(残塁率、出した走者をどれだけホームに返さず粘り強く投げれたかを表す指標)は100%を記録しており(リーグ平均74%、乖離が激しい場合は運の要素が強い場合も考えられる)、実力以上の結果が出ている=いずれ揺り戻しがくる可能性も否定できないと思われます。

また祖父江も登板しないと結果がどうなるか分からない不安定さが心配。ファームからの突き上げで期待できるリリーフとしては谷元、鈴木博、佐藤がいますが、まだ調整途上のためいつ一軍戦力になるかわからないのが苦しいところです。

よって③のオプションは現状もっとも投打に最適かと思われますが、好調な中継ぎ陣の今後の成績次第ではマルティネスの昇格なしでは回らなくなるリスクも潜んでいるのは理解しておくべきでしょう。

以上、三つのオプションについて見てきましたが、Aクラスを狙う上ではこのうちのどれかを選択してそれに固執するというのは考えにくく、外国人選手それぞれを代替する日本人選手の活躍状況やAクラス争いの状況によって、適宜使い分けていく形を取るのだと思います。

よって最後に、Aクラス浮上に向けたシーズン終了までの外国人枠活用のシナリオについて考えてみたいと思います。

3. Aクラス浮上に向けた、外国人枠最適活用シナリオ

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ここからは上記3つのオプションを、残り40試合弱のペナントレースでどのように組み合わせることでより効果的に外国人枠を活用できるかについて考えたいと思います。

現在のチーム状況と今後のスケジュールから、下記のようにシミュレーションしてみました:

起用方針:
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・ロメロは8月末までは週末カードの頭 (金曜日)でローテーションを回す。
・マルティネスはまずは二軍調整とする。8月末にブルペンの「ジョーカー」としてフル回転できるよう、調整を続ける
・ビシエド、ロドリゲス、アルモンテはアクシデントがない限り入れ替えなし
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起用プラン:
プランA→8月末までに二軍調整中の若手先発陣をローテの谷間で起用しその活躍に目途が立った場合、9月以降はロメロをマルティネスと入れ替え正念場となる巨人、DeNA、広島との9試合(9/3~12)でフル回転させる。広島との3連戦時点の状況に応じて、改めてロメロとの再度の入れ替えを行うべきか判断する

プランB→若手投手陣が振るわなかった場合は、ロメロを9/12広島戦まで先発ローテ維持。9/13以降の9試合でマルティネスをブルペンの起爆剤として投入する


上記二つのプランを考えるに当たって、やはり日本人先発投手の出来がどうなるかによって戦術も大きく変わってくるのではと感じました。

前述した通り中継ぎ陣もこのまま好調を維持したままシーズンを乗り切れるとは思えないので、競った展開が増えてくるとマルティネスに頼りたい場面が増えてくるはずです。

その時にロメロを外せる状態になっているかどうかが、個人的には今シーズンのAクラス浮上のカギになってくると感じました。

また上記シナリオは基本的には「Aクラスを最後まで狙える位置にいること」が前提となっていますので、首脳陣がどこかのタイミングで「来季以降を見据えた」采配に切り替えたとしたら、その起用法も来季以降の契約や編成も考慮に入れた戦略に基づき、ガラッと変わるのかもしれません。


以上、外国人枠の運用について考えてみました。
8/8現在ドラゴンズは3位広島と7.5ゲーム差の5位とかなり厳しい状況にありますが、一方でマルティネスや高橋周平の復帰が間近であることなど、他球団のライバルより上がり目がまだ残されているのは間違いありません。

ここから逆転でのAクラスを狙うためにビシエド、アルモンテ、ロメロ、ロドリゲス、そしてマルティネスの存在は必要不可欠ですので、今後も彼らの活躍と外国人枠の運用については引き続き注目していきたいと思います。


以上、ロバートさんでした。
ありがとうございました。

データ参考:
1.02 Essense of Baseball
nf3 -Baseball Data House -

*2019/8/10 中日新聞プラスへの投稿分を転載

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