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6/18観戦記:勝負を決めた「荒木らしくない○○」と「荒木らしい○○」

先週土曜、ナゴヤドームで行われた日ハム戦を観戦してきました。私自身関東在住なのもあり中々本拠地名古屋まで足を運ぶことはできませんが、この日は年に一度のGirlsシリーズ開催日。女性の来場者には無料ユニフォーム配布サービスがあることもあり、名古屋観光がてら彼女を連れ出した日帰り観戦ツアーとなりました。早めにチケットを確保したこともあり、グラウンドに近い席で観戦することができました。

試合総評:投打の軸が躍動!平田先制HR&決勝打、大野は7回1失点の粘投でカード勝ち越し決める

試合は日ハム吉川、中日大野の両サウスポーの先発で始まりました。ドラゴンズは吉川の立ち上がりを攻め、キャプテン平田のホームランで先制点を取ることに成功。一方で先発大野は3回までをパーフェクトに抑えるなど最高の立ち上がりを見せるも、5回に連打と四球でピンチを招き迎えるは「カットマン」中島。11球粘られた末に押し出し四球を献上し、同点に追いつかれてしまいました。日ハム吉川も初回以降は立ち直り投手戦の様相となりましたが、試合を動かしたのはやはりキャプテンの一打。6回四球で出塁し、すかさず盗塁で二進した荒木をホームに迎え入れる平田のセンター前タイムリーヒットなどで、この回2点の勝ち越しに成功しました。その後ドラゴンズは大野-又吉-田島のリレーで日ハム打線を抑え、6回の2点を守りきり連勝。38,052人と満員の観客が見守る中、投打の主役が躍動し交流戦最終カードの勝ち越しを決めました。

フォーカスポイント:試合を決めた6回。大不振のベテラン荒木が見せた「荒木らしくない○○」と「荒木らしい○○」

…さて無難な試合評はこの辺にしておいて、ここからは個人的に試合の流れを決めたと感じたベテラン荒木の働きについて考察していきたいと思います。荒木といえばドラゴンズの黄金時代を主に1番セカンドとして支え、ハイレベルな走塁と守備でチームの勝利に貢献し続けてきた名選手です。盗塁王1回(2007)、ベストナイン3回(2004~2006)、ゴールデングラブ賞6回(2004~2009)とセリーグを代表するセカンドであり、また2000本安打達成も目前に迫ったドラゴンズの誇る大ベテランでもあります。

今季ここまでセカンドとしてチーム最多の53試合に先発出場するなどまだまだ健在ぶりを見せる荒木ですが、交流戦に入り打撃の調子を大きく落としてしまいました。なんと6/10の西武戦から9試合ノーヒットとなる、29打数連続無安打(継続中)。その間2番セカンドでスタメン出場を続けているわけですから、1番大島とクリーンアップを繋ぐ役割の彼がこの体たらくでは、交流戦ワースト2位となるチーム得点数も致し方ありません。

そんな絶不調の荒木ですが、もともと打者として怖さがある選手ではないということがデータからも見て取れます。以下の表のいくつかの指標について、この日対戦した日本ハムの同じ2番打者・中島とリーグ平均との比較についてみていきましょう。この二人は選手としてのタイプが似ているため似たような攻め方をされていますが、結果は大きく異なっています。
*データはDELTAの1.02 Essence of Baseballより参照

指標は左からスイング率(被投球数に対してスイングした割合)、ISO(長打率ー打率で純粋な長打力を表す)、ゾーン率(被投球数のうちストライクゾーンに投じられた割合)、打率、四球率となります。荒木と中島は最初の三つの指標に関しては傾向が似ていて、「積極的な方ではないがパワーがないため、ストライクゾーン内で勝負されている」タイプの打者であることがわかります。ISOとゾーン率に関しては両者とも規定打席に到達した打者のうちリーグワーストの数字です。ただその似たような打者としてのタイプから生み出される結果は大きく異なっていて、荒木が打率や四球率でリーグ平均を下回っているのに対し、中島はいずれも上回っています。これは荒木がどちらかというと淡白でファールが少ない打者であるのに対し、中島が上記試合表でも触れているような「カットマン」としてファウルが多くバットコントロールに秀でたタイプの選手であることを表していると言えるかと思います。


荒木らしくない「粘り」で四球を獲得。先頭打者として出塁することに成功

以上の打者・荒木の特徴を踏まえた上で、6回の攻撃について見てみましょう。24打数ノーヒット中だった荒木は、6回の先頭打者として吉川に対します。試合展開としては、エース大野が5回に西川、そして中島に粘られ連続四球で押し出しの一点を献上した後だったため流れは日ハムにありました。どうしても出塁しクリーンアップに繋げたい場面。不振の荒木が見せたのは普段はあまり発揮することのない「粘り」でした。

普段は見せない粘りを発揮した結果、ツーストライクから4球ファウルを稼ぎ四球を勝ち取ることに成功。2回以降初めてのノーアウトのランナーとなったベテラン荒木は、次は塁上で「荒木らしさ」を全開にしチームに貢献することとなります。

荒木らしい「快足」で二盗、さらに平田の中安で一気に生還。「神走塁」で流れを呼び込む


勝ち越しのランナーとなった荒木は、まずは今季成功率100%と衰え知らずの俊足と盗塁センスで、通算368個目の盗塁を成功させます。これはちなみに前監督・高木守道氏が持つ球団記録の369盗塁にあと1と迫るものでもありました。得点圏に進んだ荒木は、次は二塁ベース上から小刻みなステップで次の塁をうかがい、マウンドの吉川にプレッシャーを掛けていきます。そしてツーボールツーストライクからの5球目、平田が放ったセンター前に転がるヒットで一気に生還。勝ち越しのホームを踏み、これが決勝点となりました。お立ち台に上がった勝ち越し打の平田は、この決勝タイムリーの場面に対し「神走塁」と荒木を称えていたのが印象的でした。

ノーパワー、低打率でも荒木を起用する理由

この日の活躍を見ていて、我らがドラゴンズはまだまだ38歳ベテラン荒木に頼るしかないというのを痛く感じました。もちろん上記で挙げたように打率が.230台で四球も選べず、長打の危険性も感じられない彼を打順に組み込むのは、ハッキリ言って大きなマイナスだと思います。人気選手で2000本安打も間近とは言えど、正直今の連続無安打を見るに堪えないと感じているファンは多数でしょう。ただ、では他に代わりがいるかと言うと口ごもるしかないというのが残念ながらドラゴンズの現状なのです。

今季一軍でセカンドを守った亀澤や谷、遠藤は荒木と大きく差をつけるほどの打撃力を披露するでもなく、またバントミスや走塁ミスといったところが目立つなど細かいプレーの完成度もイマイチです。守備面では残念ながら比べるべくもありません。将来性という観点から二軍で打撃好調の石川や、同じ熊本出身で守備に定評のある溝脇を抜擢する案もありますが、ただでさえ高橋周平の怪我でサードに大きな穴が空いているのを考えると、現時点でセカンドには総合力と経験で分がある荒木を起用するのがベターかと考えます。「育成」と「勝利」のバランスを取るのは大変難しいですが、どんなに不調でも2番荒木をスタメンから外さないところを見ると、谷繁監督も同じ意見ではないかと思います。(もちろん、同時期にプレーした戦友という意味で贔屓目もあるでしょうが、そこは客観的な判断によるものだと信じたい・・。)

交流戦終了後も荒木の調子が上がるかどうかはなんとも言えませんが、やはり現時点での最良の選択肢であることは間違いありません。今後は「想定外の粘り」や「流石の神走塁」に期待しつつ、連続打数ノーヒット記録が1打席でもはやく途切れるよう祈るとしましょう。

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