見出し画像

油絵の写真

「油絵」の「写真」というタイトルでお借りしたヘッダーは「日本画」だ。しかしなんともならない。
これなのだ。

写仏部で活躍される
あやのんさんの記事を
読むうちに
1枚の油絵を思い出した。
(私自身は仏像は好きだが
仏像の絵は描かない。)

描いたのは
私の記事でたびたび
登場する常務である。

常務は私が会社勤めの間は
墨絵や似顔絵はしょっちゅう
描いていたけれど
油絵は描かなかった。

亡くなる少し前あたりから
自宅傍にアトリエを建てて
油彩を楽しんでいると聞いていた。

電話魔の常務は
ほぼ一日中
誰にでも電話をかけていたが
結婚して会社を辞めた
私のところにも
たまに思い出したように
電話をかけてきた。

私がものすごく悩んでいる時に
電話をかけてきて
私は愚痴を言ったように思う。

会社勤めの頃で私は
内心「クソ!!」と思いながらも
一切文句を言わなかったので
慌てたのだろう。

電話を切ってしばらくたった頃に
酒が2本届いた。
ほぼ同時に届いた関連会社の封筒の中には(関連会社の社長になったらしい)

あまり思い詰めずこれでも
夫婦で飲みなさい。
最近縁ができた
長野の会社のものです。
美味しいですよ。

と書いた手紙があった。

他にも自分が最近気になって訪ねた
明智光秀のゆかりの地や、自宅のアトリエの様子などの写真がA4の紙に印刷して添えられてあった。

絶対自分で印刷してないので、かつて私がやっていたように今誰かが印刷しているのだろう。そしてその人はたまに飲み屋で知り合った女性にメールを書かされているのであろう。私はおかしさを堪えながら写真を見ていった。


これはなんだろう?


ふと手が止まったのが
この油絵だった。
暗闇の中に大きな羽が
描かれているように見えるが
よくわからない。
よくわからないが
美しい。

暗闇に 真達羅大将 何観てる

酒のお礼に電話をかけて
私はこの絵について尋ねた。

喜んで説明してくれた。

近くに由緒正しき寺がある。
仏像もいいものがあるのに
いかんせんお金がない。
絵で応援できないものかと
考え、描いたものだという。

それを聞いてから
写真をみると
果たして
憤怒の形相の真達羅大将が
浮かび上がった。

見事である。
私は息を飲んだ。


その旨を伝えると
常務はさらに喜び
デッサンの苦労話をした。


暗闇でかかねばならぬ。
和尚様(おっさま)を説得し、
照明を消し、扉を閉めさせ
デッサンの間中
和尚様(おっさま)に懐中電灯を
持たせて描いたそうだ。


すごいなぁ!
と私はすっかり感心した。



私はいただいた日本酒を
主人と飲みながらこの話をし、
更にこの真達羅大将のある寺は
どんな寺だろうと調べ始めた。

屋根もこぼれ廊下はガタガタ
と聞いていたがそれは
大変由緒あるお寺であった。


常務はやっぱり誰とでも
仲良くなっちゃうなと
思いながら

常務に付き合って懐中電灯を
持ってくれた住職の写真でもないか
探してみた。



美人住職だった🤭


やっぱやるねえ!
と私は思った。

主人も一度会って
ご飯をご馳走になった
ことがあるので
常務の人となりを知っている。
一緒に笑ってくれた。

あとから考えると
これが私と常務の最後の
やりとりだった。


なんのはなしですか

ヘッダーが虎の絵なのは
真達羅大将が寅の方位を守るので選んだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?