猫鱈家の朝食風景
猫鱈 永男の家の朝食は賑やかだ。
とはいえ永男は一言も話さない。
新聞を読みながら、妻である
美々子と娘の美由の朝から止まらないおしゃべりを聴いているだけだ。
永男には二人の会話が成立しているのかどうかは全くわからない。
二人はたしかに交互に話しているのだが、全く別のことを話しているように思う。
近頃娘の美由は、学校で気になっているド派手なクラスメイトの報告ばかりしている。どうやら気に食わないようだ。学校に来るのに化粧はもちろん派手なネイル、短いスカート、宿題は出さずにインナーカラーをほどこした長い髪をいじくってばかりいるそうだ。
一方でそんな報告を
「その苛立ちわかるぅー!」
と引き受けたかのように見せかけて
美々子が話し出すのは、近所に住むこれまた派手で破天荒な主婦のことだ。
子どもを旦那に任せてしょっちゅうコンサートに行く、格好も歳のわりに無理しちゃってみっともないたらありゃしない、こちらが丁寧にお辞儀しても、にっこり笑うだけで引っ越してきたばかりだというのに話しかけてもこない。常識がないとかうんたらかんたら。
全くよくもまぁ女どもは飽きもせずに毎日そんなことを話せるもんだ。
とりあえず二人に自由に喋らせておけば、永男は放っておいてもらえるのをこれ幸に、二人の会話をBGMとして聞き流しながらコーヒー片手に新聞を毎朝読むのであった。
ある朝いつものようにコーヒー片手に新聞を読んでいると、やけに静かなことに気がついた。
新聞から目を離して、向いの娘の様子をみる。
へぇ!
髪がピンクになっており、耳に何か大きなものがぶら下がっている。
あれはピアスというものではなかろうか?それにしても毒々しい色のキノコ🍄というのはいったいなんなんだ?全く思春期の女の子の趣味というものはよくわからん。
美々子は驚きを通り越して、言葉を失ったようだった。
永男は再び新聞に目を落とした。
朝食が静かになって1週間ほどたったころだろうか、永男は新聞を読みながら再び違和感を感じた。
新聞から目をあげると美由の横に並んで座った美々子の頭に何か載っている。王冠型のカチューシャ👑。あれはいったいなんなんだ?それに洋服!全身色違いの大きさ違いの水玉模様だ。今日は何かイベントあったかな?全くよくわからない。けれども機嫌が良さそうなのでほっておこう。
今度は美由のほうが呆気に取られている。
永男は再び新聞に目を落とした。
3日ほどたっただろうか、ふと新聞から目をあげると美由の髪色が優しい色の金髪になっている。ピアスもずいぶんと小ぶりだ。
美由が美々子に向かって何か言っている。
「その水玉どうにかならないの?」
「カチューシャもうそんなの流行ってないし。ほらこれあげる。」
美々子はちょっと面白くなさそうだが、受け取ったカチューシャをみてどうやら少し気に入ったようだ。
永男は再び新聞に目を落とした。
数日たつとまた賑やかに二人が話しはじめていた。
なにやらアイドルの「ニャンニャオず」の話で盛り上がっている。
全くわからん。次は何が起こるんだ?
永男は新聞に目を通しながら、会社帰りに最近買ったちょっと派手目の虎猫模様のネクタイの結び目を少し緩めた。
↓登場人物の名前を猫🐈っぽくしてみました。ネコミミ村祭りに参加できたら嬉しいです😻♡