ボイストレーニングで聞いた不思議な話

聞いてきたのは夫である。

今から遡ること数年前、夫は会社のセミナーで「元気がない。」と指摘され、(指摘内容が小学生みたいだ。)ボイストレーニングを受けてみることにした。

自分がモソモソ話すのが原因ではないかと考えたようだ。

そしてネットで調べたボイストレーナーに個人レッスンを申し込んだ。

レッスンから帰ってきた夫は珍しく興奮していた。
「凄かった！」
の連発である。

何が凄かったかというと先生の声。
特殊モードに入ると
部屋中の空気がビリビリと振動し
バリバリ響き出すというのだ。

私は聞いてみたくてたまらなくなった。

そしてその声のまま先生は夫に言った。

「声には不思議な力があります。
本当にこの声になりたいですか？
この声は確かに聴衆を惹きつけます。
仕事にはもってこいでしょう。
ところがあなたがこの声で話すようになると、
今のあなたの話し方がいいと思っている人はあなたから離れてゆくのです。
どの声を使うかよく考えることです。」

なんとも凄みのある言葉だ。

使いこなせる声をたくさん持ってこそ知る境地なのだろう。

夫はしばらく通い、ある程度の成果を得た。

しかし声がビリビリ響き出すようなことはついぞなく、家では相変わらずモソモソ話している。

それでよし。