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学年末試験の実際

試験申し込み(Exam entry)

LSE EMFSSの試験は5-6月ですが、申し込みは早く1月でした。オンラインで試験を申し込み、ロンドン大学事務局に試験料を支払った上で、並行して現地の試験実施機関に試験監督(Invigilator)サービスのために、ローカル試験料の支払い手続きをします。各国の試験センターは、British Council で東京もそうですが、大阪はIBEC Co., Ltd.、福岡はFTC Ltd.が試験センターとして登録されています。ローカル手続きが完了すると、固有コードが通知されます。通知された固有コードを、再度ロンドン大学試験申し込みサイトに戻って入力をし、一連の試験申し込み手続きは完了となります。

その後、最初の受験日の約1ヵ月前にAdmission Notice(受験票)がメールで送られてきてます。

MScプログラムも同じような流れですが、試験申し込みが6月で、実際の試験は9-10月になります。また学費にロンドン大学への試験料が予め含まれているために、そちらは支払い不要でした。

試験の難易度比較

LSE EMFSSとSOAS MScの試験を経験しました。双方とも、伝統の持込不可3時間論述試験です。選択式(Multiple choice)問題は一切ありません。LSE EMFSSは4題回答、SOASは3題回答します。
SOASの出題が過去問から容易に対策の取りやすい素直な出題に対して、LSEの方は、一筋縄ではいかない、複数の論点を絡ませた相当捻った出題が多いという印象でした。重箱の隅をつつくのではなく、さすがLSEと唸らせるぐらいの手強くも良問揃いでした。ですので、かなり深く対策をしなければ、Passは難しいです。LSE-based studentと同じ評価基準で行くというのは、本当なんだと思いました。

実際の受験記録(LSE EMFSS GradDip)

GradDip学年末試験時の受験記録を、科目ごとにまとめてみました:

Principles of Marketing

現地British Councilの部屋が埋まっているとのことで、地方大MBAの都心キャンパス入居ビルにて受験。受験者は私一人。British Council派遣試験官と1対1。

こちらは頻出論点が決まっていて対策が取りやすいはずでしたが、今年の試験では、過去未出題の論点が半分を占めました(Tversky and KahnemanのProspect Theory、anomaliesを絡ませた問題など)。選ぶ余地はなく、4題すぐ決まりました。解答する4題を決めたものの、例年と傾向がかなり変わっていて、問い方がかなりひねってあり、正直手ごたえは半々ぐらいでした。解答冊子は13ページあったかと思いますが、1ページ目はRough Workとし、4問で2.5ページ、3ページ、3ページ、2.5ページ埋めました。ページあたり約10語×33行=330語埋めていますので、1問あたり800-1,000語ぐらい書いている計算になります。最後の方は手が痛くなってきますので、書きなぐるといった感じです。

出題例:
(a) 製品やサービスを市場に投入する前に、なぜマーケターは消費者・購買者心理を理解しなければならないのか、説明しなさい。 (15点)
(b) より適したマーケティング戦略のために、 プロスペクト理論が投げ掛ける消費者行動のアノマリーや矛盾について、論じなさい。その際いかなる戦略が有効なのか、例を用い論じなさい。(10点)


Management Science Methods

現地British Councilで受験。ロンドン大学受験者は私ともう2名。私とは別プログラムだった模様。イギリス他大学試験受験者と同室。開始して5分もたたない内に、ロンドン大学の別受験者1名が辞退退出。

Operations Research(OR)で数学科目です。論述問題と計算問題で構成されます。こちらも過去一度も出題のない行列理論(Queuing theory)が出てあせりました。また前年までは大問1つで1テーマでしたが、この年は大問1つで2テーマが大半を占め、準備していないテーマは全く解けませんでした。したがって大問あたり半分しか解答できず、得点を大きく落とす要因となりました。ただし、マルコフ過程(Markov processes)は、吸収状態(Absorbing state)まで内容を押さえていて、この大問は1テーマだけだったこと、また3行3列でそこまで難しい行列計算でなかったこともあって、ほぼ満点だったと思います。残りは経済的発注数量(Economic order quantity; EOQ)を選びました。ほぼ問題なく解答できました。こちらも計算に関しては初歩レベルの微分で十分です。あとは合理的選択(Rational choice)を選びました。こちらは算数レベルの計算なので出たら必ず選択しましょう。しかしながら、従前の計算で慎重に回答しすぎて、残りの大問では残り20分しかありませんでした。線形計画法(Linear programming)を選びましたが、ここで痛恨の計算ミス。最後の最後まであがきましたが、残り1分。わずかな部分点を1点でも2点でも良いので掴み取るべく、最後は書きなぐって終了しました。結局、最大でも55点分しか解答できませんでした。前半慎重に回答し過ぎたのが悔やまれました。実際の結果は50点だったのでセーフでした。反省としては、時間が少なくなった時点で、計算問題ではなく、論述問題を選ぶべきだったかと思いました。

出題例:
(a) 動画配信X社は、一定期間後の市場シェアを把握するのに、マルコフ理論を用いています。Y社、Z社といった2つの主要な競合が存在し、過去のデータから消費者が各企業間を渡り歩く確率は、
                                各企業へ
                                X      Y       Z
各企業から    X   0.88 0.05 0.07
                        Y   0.69 0.02 0.29
                        Z   0.78 0.15 0.07
となります。
例えば、消費者がY社からZ社へ移動する確率は、0.29です。平均的な消費者は週に一度動画を視聴します。
X、Y、Z各社の現在のシェアがそれぞれ、0.40、0.40、0.20であった場合に、二週間後のX社のシェアはいくらになるでしょうか。(2点)
(b) 一定期間経過後に各社のシェアはそれぞれいくらになっているでしょうか。(15点)(c) X社はY社を合併して新会社XY社となりました。この場合、過去のデータから消費者が各企業間を変更する確率は、
                            各企業へ
                              XY    Z
各企業から XY  0.40 0.78
                       Z   0.60 0.22

となります。例えば、消費者がZ社からXY社へ移動する確率は、0.60です。
一定期間経過後に各社のシェアはそれぞれいくらになっているでしょうか。(5点)
(d) 上記遷移行列を考慮すると、それぞれの変動の後に、合併新会社XY社が40%のシェアを保持することは、起こりうると言えるでしょうか。(3点)

Core Management Concepts

地方大MBAの都心キャンパス入居ビルにて受験。ロンドン大学受験者は私一人。他イギリス他大学受験者同室。

こちらは4題のSection Aから2問、別の4題のSection Bから2題選択します。従って、事前に8題のみ準備するのでは不十分です。8題のみ準備して回答できる4題が全て特定のセクションに集中した場合、多くても半分の2題しかとけないということになります。私もほぼ選択の余地がなくあせりました。最低でも3倍の12テーマ準備すべきだと思います。余裕あればもれなく準備すべきだと思います。この科目は4科目の中で最も難解でした。必須テキストは無駄に表現にこだわりすぎていて、まず意味を取るのが大変でした。Subject Guideはその難解な必須テキストの単なる簡略版で、全く教科書になりませんでした。何を言いたいのか最後まで判然としませんでした。にもかかわらず必修ということもあり、毎日の学習が苦痛で仕方がありませんでした。こちらは1枚をRough Workとし、残り12ページをほぼ埋めました。よって、1題あたり平均2.5-3ページ、800-900語書いています。手ごたえは半分程度でした。

出題例:
「市場の失敗」と言う用語によって、あなたは何を理解するでしょうか。市場の失敗は、企業の成長を説明するでしょうか。例を挙げなさい。(25点)

Business and Management in a Global Context

現地British Councilで受験。ロンドン大学受験者は私のみ。他イギリス大学試験受験者と同室。

こちらも必修科目です。準備万端のはずでしたが、出題傾向がこの年からガラッと変わりました。新出題のテーマが大半を占めており、非常に苦しかったです。事前に用意した8テーマでは全く不十分でした。問題を見た瞬間、顔が青ざめました。Failを覚悟したほどです。10分ほど茫然としていました。よくよく見ると、急遽前日に簡単に概要だけまとめた論点が出題されており、何とか一縷の希望が見えた感じでした。ドンピシャで書けたのは2題程度で残り2題は何とか書いたものの、手ごたえはいま一つでした。書いた分量は2, 2.5, 3, 2.5ページの各650-1,000語ぐらいです。書くには書きましたが、手ごたえは半信半疑、ぎりぎり40点でPassすればいい程度でした。

出題例:
'現代グローバリゼーションの核心は、国際貿易と海外直接投資といった現象である。' この時、
(a) 3つの主要現代貿易理論について説明しなさい。(12点)
(b) DunningのOLIフレームワークは、海外直接投資をどのように説明するでしょうか。(6点)
(c) 国によっては、海外直接投資による資本流入をなぜ規制するのでしょうか。例を挙げなさい。(7点)

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以上、もともと時間的制約もあり、Passさえすれば良いと考えていたので、総合成績でPass grade(学士での"Lower second class (2:2)"相当)と、お世辞にも良い成績ではありませんでした。特にPrinciples of Marketingは、40点台前半と間一髪でした。学習開始から5ヵ月で、4科目ともなんとか合格できました。

実際の受験記録(SOAS MSc)

独学で勉強を始めて、初めて同じプログラムを履修している方にお会いし、3科目一緒に受験いたしました。お互いの健闘を祈りました。

私は4日間に渡り4科目受験しました。標準的な問題ばかりでしたが、3年前に比べると、覚えたことがなかなか出てこず、多少冷や汗をかきました。寄る年波には勝てないなと思いました。いくつかの科目で、解答時に引用文献漏れ、著者名忘れが一部あり、これは厳しいかと思いましたが、意外にも50点以上取れていました(UndergraduateのPass gradeが40点以上に対して、Postgraduateは50点以上です)。印象ですが、思ったより採点が甘く思いました。

出題例("Finance in the Global Market"より)
2001年危機以前、USドルが低金利であったために、トルコの住宅購入者はトルコ・リラよりもUSドル建ての住宅ローンを好みました。トルコ・リラがUSドルに連動していたことから、低金利で借りるのに良い戦略であるように思われました。この戦略の持つ潜在的リスクについて批判的に論じなさい。(40点)


試験室に設定された部屋は、眺望が抜群で気持ちよく受験できました。思わず終了後に写真を撮りました。

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LSE EMFSSとSOAS MScそれぞれ、試験一発評価、試験:TMA=7:3と評価方法が異なります。LSEに比べて、SOASは2,500 wordsのTMAの2回提出が義務付けられていて、学習負荷が高いですが、そのおかげで助かった面もありました。

ある科目は、試験が40点台と、試験のみの評価だけですと大学院ではFailとなりますが、TMAと併せての総合評価が50点以上でPassとのことでしたので、TMAの保険が効いたお蔭で、単位を落とすことはありませんでした。評価方法もそれぞれ一長一短があると感じました。


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