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2022年夏期ロンドン大学通信課程卒業式

2020年初めから続く新型インフルエンザの世界的パンデミックのため、その年の3月に予定されていた卒業式を含め、前年の式から約3年4か月もの間ロンドン大学通信課程卒業式は挙行されませんでした。その間、数度に渡る感染の波があり、現在も続いていますが、本年2月24日のイギリス国内隔離規制、続く3月18日のイギリス入国規制の完全撤廃を以て、ロンドン大学卒業式が今年行われることになりました。

実は、大学事務局からの3月4日付メールにて、7月13, 14, 15日の3日間に渡り卒業式を挙行する予定なので、その日程は予定を開けておくように、続報を待て、とのお達しが事前に来ていました。

このため、続くメールを期待して待っていたのですが、3月18日の入国規制の完全撤廃に関してのイギリス政府公式発表に合わせ、正式に卒業式への招待メールが来ました。この日のために、再びアカデミック・ガウンに袖を通すため、再び壇上に上がるために、3年間勉強を頑張ってきました。既に学位記を受け取っていましたが、欠席する理由はありません。すぐに申し込み、家族席と合わせ、卒業式のチケットを確保しました。卒業生はもちろん無料ですが、今回は各卒業生当り2人までゲスト席を£25/人にて購入可能でした。

同時に、今回卒業式典を一手に引き受けるMarston社にアカデミック・ガウンのレンタルも申し込みました。
通常はBarbican Centreという約2,000名収容の大ホールで行うのですが、今回はUCL隣接、SOAS、Birkbeck、ロンドン大学本部(Senate House)からもほど近い、Euston駅目の前のFriends Houseという小規模の多目的ホールで行われました。

通常は毎年3月に午前・午後計2回実施されますが、今回は2019/20、2020/21、2021/22の3年分の式を実施するので、7月13, 14, 15日の午前・午後各2回ずつ計6回実施されるとのことでした。

例年、ロンドン大学総長でもあるアン王女も、午前、若しくは午後いずれかの式に御臨席されます。前回Graduate Diploma修了時に出席した卒業式でもお目に掛かれませんでしたが、今回は6回も卒業式があるので、尚更お会いするのを期待していませんでした。それでも、卒業式に出席できる喜びで一杯で、7月までの4か月、毎日指折り数えてその日が来るのを心待ちにしていました。

今回、卒業式出席にあたり一番のネックは、日本への入国規制でした。欧米主要国は、アメリカを含めて帰国時の陰性証明提示が不要となっていました。日本も岸田総理が5月に此処ロンドンのシティにて、6月には欧米並みに入国規制を緩和する旨発言していたこともあり、現在日本入国に必要な出発72時間前以降のPCR陰性証明提出義務撤廃を発表するのでは、と淡い期待を抱いていました。しかし、7月に入ってもそこまでの規制撤廃とはなりませんでした。

このため会社には今回、帰国前PCR検査が陽性の場合、陰性になるまで帰国便に乗れない。万が一予定通り帰国できない場合は、その間遅滞なく業務はロンドンから行う旨説明し、その為の関連装備を準備していました。そのような中でも、今回もロンドンへの卒業式出席に快く送り出してもらえました。前回卒業式は、当時駐在していた任地から出席し、また勿論当時パンデミックもなく海外旅行のハードルは全く高くありませんでしたが、前回同様快く送り出してくれ、理解ある会社に本当に感謝しています。

羽田から15時間ものフライトの後ヒースローに到着し、チェックイン後に滞在先の近所を散歩してみました。事前に報道等で見聞きしていた通り、まるでパンデミックが終わったかのように、街を歩く人のほとんどがマスクを着けていませんでした。付けている人のほとんどが旅行者と思われる人たちでした。体感ではマスクを着けている人たちは、全体の3%程度でした。皆楽しそうに闊歩しています。ああ多国籍の自由な空気のロンドンに戻って来れたんだなぁ、この2年半もの間海外旅行を我慢してきたんだなぁ、と歩きながら外国に渡航できた嬉しさと共に感慨に耽っていましたが、私たちは予定通り帰国せねばなりません。マスクを取りたい気持ちを我慢し気を引き締めて、帰国まで雑踏ではマスクを外しませんでした。

今回QRコード付きの卒業式eチケットを式典1週間前までには送る、と連絡が大学から来ていました。それ以降来なければ、迷惑メールフォルダを確認した上で、担当部署に問い合わせて欲しい、と連絡が来ていました。さすがに、式直前なので問題なく来るだろうとのんびり構えていたのですが、期限を過ぎても来ません。問い合わせのメールを入れたところ、ロンドン渡航直前にやっと返信があり、まだ式典出席者全員のeチケットを準備している最中で、明日5時までに必ず送るので、申し訳ないが待って欲しいとありました。そして、ロンドンに到着した式典出席2日前にやっと送られてきました。ハラハラやきもきしましたが、プログラム履修中に何度も何度もこんなやり取りを大学事務局としていたっけなと感慨に耽りながら、最後の最後までこういう適当さを含めてイギリスだなと改めて思いました。

そのeチケットですが、私の出席する日のみ、通常の確認事項に加えて、2つの身分証明書ID(パスポート、免許証、銀行キャッシュカード、式出席の予約確定メールなど)を持ってくるよう指示が記載されています。これは何かあるな、と思いました。ある種の期待を持ちながら、当日、混雑を避ける為に指定された時間に会場に到着しました。

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会場のFriends House(写真は式典終了後)

会場の入り口前の黒山の人だかりを縫って受付に進み、家族全員分のIDチェック、受付手続きを済ませます。子供には、塗り絵セットをくれました。その後、予約していたアカデミック・ドレスを受け取ります。係員が着用を手伝ってくれるので、流れはスムーズです。式典開始までの時間で、家族と記念撮影などをします。地域の公民館を少し大きくしたぐらいの規模のこぢんまりした会場なので、会場は卒業生とその家族でごった返しています。皆、こぼれんばかりの笑顔で、思い思いにポーズを取りシャッターを切っています。そうこうすると、卒業生が自分の席に着席する時間です。専攻毎に固まって着席します。係員が自分の席まで一人一人案内してくれるので、迷うことはありません。ここでゲスト席に着席する家族と別れます。

入って場内を見回した感じ、本当にこぢんまりとした会場です。日本の小学校の体育館ぐらいの広さに、アリーナ、客席、舞台が全て収まるような規模です。

式典開始前の会場

自分の着席する席には、当日の式次第、ロンドン大学の歴史などが記載された薄い冊子、ロンドン大学本部と全コレッジの位置関係をモチーフにしたデザインの記念ポストカードが置かれています。
指定の席に着席し、当日初めて会う同じプログラムの卒業生としばらく会話を楽しみました。私の名前を名乗ると、すぐに日本人だと分かったようです。どうして、と聞くと、過去1年半東京駐在で千葉県船橋市に住んでいたらしく、それですぐ分かったようです。パンデミックもあって、途中混乱もあり大変な中での大学院だったが、この日を此処ロンドンで迎えることができて、本当に良かったとお互いの頑張りを労い合いました。

卒業記念小冊子(式次第など)
卒業記念ポストカード

会話も一段落し、式典開始まで若干時間があったので、冊子をパラパラめくり当日の式次第に目を遣ると、HRH The Princess Royal の文字が目に飛び込んできました。
なんと、自分の出席する卒業式にロンドン大学総長であるアン王女が御臨席されるようです。私の出席する回のみ、2種類のIDチェックが予告されていましたが、やはりこのことだったようです。それでも今回、6回も式典がある中で、お目に掛かるのを期待していませんでした。また前回、Graduate Diploma修了時に出席した式典でも、お目に掛かることが叶わなかっただけに、本当にこの上ない光栄に思いました。同時に、これほどのHigh profileな御方に今までの人生お会いする機会がなかったので、急に緊張してきました。

その間、大学スタッフより、壇上でのアン王女へのお辞儀の仕方、撮影禁止事項など、スタッフによる軽い寸劇、ユーモアを交えながら説明がありました。
そこで会場の緊張をほぐしたところで定刻となり、会場に入場音楽が鳴り響きます。会場の全員が起立します。
The Chancellor's Mace(職杖)を両手に抱えたEsquire Bedellと呼ばれる大学公式の式典責任者を先頭に、副総長(実質の総長)、アン王女らが入場され、アン王女の御着席を待って、全員着席しました。程なくして、アン王女がマイクのある演台にゆっくりと向かい、スピーチが始まります。内容は、ロンドン大学のなり立ち、建学の理念(宗教、性、出自などにかかわらず、すべての人に等しく教育を提供する)、歴史に触れながら、パンデミックで大変な状況の下で学業を修められたことを称え、こうしてロンドンに参集出来たことを歓び、お祝いする内容でした。

続いて、卒業生が順次壇上に上がっていきます。一人ひとりフルネームで読み上げられた後に、壇上の総長であるアン王女、副総長、通信課程総責任者の前を通ってお辞儀をし、そのまま元の席に戻っていきます。名前を読み上げる専門の男性がいるのですが、5年前と同じ人が担当でした。前回も思いましたが、いろんな国のさまざまな名前があります。時にどのように読むのか一見して分からないような複雑な名前もあります。そのような名前でも、淀みなく詰まることなく良く読めるな、と今回も感心しました。

それでも、今回式典当日まで例年になく準備にバタバタだったようで、読み上げるリストと人物が一致していないことも時にあり、ところどころ中断しました。その間、冗談で会場の雰囲気を和ませていて、その度に会場全体が微笑ましい雰囲気に包まれていました。

そして、ついに自分の順番が来ました。緊張で足と手が一緒に前に出ないよう意識し歩き出しました。今までニュースでしかお目に掛かったことのない王室の方を眼の前にして物凄く緊張しましたが、総長に直接お辞儀が出来て本当に嬉しかったです。ロンドン大学の学習をGraduate Diplomaから始めて7年間、最後の最後、本当にここまで来られて良かった、フルタイムの仕事を持ちながら勉強する時間を捻出するなど、大変なことも多かったですが、頑張ってきたことが報われて良かった、と心から思いました。

こうして卒業生全員の名前の読み上げが終了し、次に名誉フェロー授与に移りました。今回は、ロンドン大学通信教育プログラムの現在に至る世界的発展に寄与された、昨年定年退職されたロンドン大学元職員の方に授与されました。私もこの方のお蔭でこの日を迎えられたと言っても過言ではありません。私がUniversity of London International Programmeに一番最初に出願した時、LSE監修Graduate Diploma課程のofferを出して下さった方が、当時Programme Directorの職にあった今回名誉学位を授与された方でした。あの時、Graduate DiplomaプログラムにProgramme Director名でこの方にofferを頂けなければ、私が今回この場に居ることはなかったでしょう。間接的にでも、こうしてプログラム開始から修了まで繋がることが出来た、何かしら不思議な縁、あるいは巡り合わせのようなものを、今回の式典に出席して感じ、感慨深いものがありました。

最後に副総長から閉会の辞がありました。閉めの言葉の 'Be critical. Be kind. Stay curious.' 良かったです。ロンドン大学alumniとして、これからも勿論その意識を忘れずチャレンジして行きたいと思います。
最後に全員起立し、イギリス国歌 God Save the Queen が会場内に流れるのを静かに聞きます。その後再びEsquire Bedellを先頭に総長、副総長らが退席され、式典が終了しました。

今回、Barbican Centreという通常使用される大ホールと異なり、地域コミュニティでのお祝いに用いられそうな、非常にこぢんまりとした会場でした。とても王室の方が来られるとは想像もできないような会場です。それでも、近所の寄り合いのようなアットホームな暖かい雰囲気に包まれて、大学事務局とも距離をかなり近く感じられ最高の式典でした。未だ続くパンデミックの中、訪英する準備は大変でしたが、出席することができて本当に良かったと心から思いました。

LSE
SOAS
ロンドン大学本部(Senate House)


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