1月3日は休日?道路標識における "休日" の取り扱い
道路標識には規制対象となる日や時間が書かれていることがある。このうち日の期間 (A月B日からC月D日まで)や時間 (X時XX分からY時YY分まで)による指定は万人が客観的に理解できるが、「休日」「祭日」等、それ以外の方法で日が設定されている場合がある。そして道路標識に書かれている内容と一般通念の意味が違う場合もある。この記事では、そのような特殊な日の指定方法について見てみよう。
よく見られる "日" の指定方法
道路標識の日の指定で最もよく見られるのは、以下のように曜日、休日という単語を使った指定である。
道路標識における "休日" の定義
曜日は万人が客観的に理解できるが、「休日」「祭日」はその人の職業、国籍、宗教等によって異なってきそうである。標識令 (道路標識、区画線及び道路標示に関する命令)では、道路標識に記載される「休日」を以下のように定義している。
「国民の祝日に関する法律」(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定されている祝日は2024年1月現在は16個が規定されている。
また、「国民の祝日」は休日、ただし国民の祝日が日曜日の場合の振り替え休日、「国民の祝日」に挟まれた「国民の祝日」でない日 (つまり5月4日)も休日とする、と定義されている。
つまり、年末年始は会社勤めの人であればだいたい12月29日から1月3日あたりまで会社は休日となるところが多いが、標識令上は年末年始は1月1日のみが休日である。また、夏のお盆の週も会社は1週間くらい休みになるが、標識令上は休日ではない。また、土曜日も休みの会社が多いが、標識令上は土曜日は休日ではない。また、標識令上は日曜と休日は区別して「日曜・休日」と記載する。(日曜を含まずに「休日」「休日を除く」という表現は道路標識ではされない)
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では、以下の標識を見て、2024年1月3日 (水) 午前11時にこの場所の白線内に駐車料金を払わずに駐車できるか、について正しく答えられるだろうか?
答えは「駐車するには駐車料金を払う必要がある」である。
ちなみに、補助標識が以下のようになっている場合もある。この場合は「1月1日~3日を除く」と書かれているので、「駐車するには駐車料金を払う必要はない」。
道路標識における "平日" の定義は?
それでは、社会通念上よく使われる "平日" はどうか?「平日」は道路標識の中に時々見かける時があるが、実は標識令上、定義はされていない。また、警察庁が発行する「交通規制基準」では、推奨しない表現とされている。
土曜の取り扱い
「平日」という表現は、一週間のうち"休日" を除いた普通の日のことであるが、実は人によってとらえ方がさまざまである。その人の職業、国籍、宗教等によって異なってくる可能性がある。日本の一般通念上、日曜は休日で通常の勤め人の曜日感覚で月曜から金曜までは平日だとして、取り扱いが不明瞭なのが「土曜」である。結論から言うと、標識令上は土曜は休日ではない。よって "平日" に含まれる。
多くの会社では1980年代になってから週休2日制が導入され始め、1988年4月の労働基準法改正により導入が加速した。学校では1992年9月から公立小中学校及び高等学校の多くで一部の土曜が休みとなり、2002年にすべての学校で完全に週5日制となった。このように、土曜は社会通念上は1990年代に平日から休日に移行し、公共交通機関のダイヤも平日ダイヤは月曜から金曜までとなっているが、標識令が施行された時期は1960年 (昭和35)であり、この頃は土曜は平日であり、標識令上の土曜の取り扱いもその後改正されていないため、当時の定義のまま現在まで使われている、という解釈となる。
「交通規制基準」でも、最高速度の規制実施基準の説明で
としており、日曜・休日以外は平日と考えていることを伺わせる。
ちなみに、学校が完全週5日制となったことで、スクールゾーン関係の規制 (朝7:00~9:00頃の通行禁止規制等)は、昔は「日曜・休日を除く」となっていたが、その後「土曜・日曜・休日を除く」に変更された規制箇所も多い。(ただし、標識の変更し忘れで「日曜・休日を除く」になっている箇所もある)
もうひとつの "平日": 行政機関の休日
また、法律上 "平日" を定義しているものとしては1988年 (昭和63)に公布された「行政機関の休日に関する法律」がある。
最近施行された法律「子ども・子育て支援法施行規則」でも、平日を日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日、一月二日、一月三日及び十二月二十九日から十二月三十一日までの日以外の日としており、同じ定義である。この定義では平日には年末年始休暇期間が含まれない。社会通念上はこちらの方が "平日" に近いだろうが、標識令上はこれらの法律は参照していない。
実際の規制でも "平日" の解釈に混乱が見られる
以上、条文や規制基準の解釈から "平日" の定義についてみてきたが、実際に「平日」が規制の中で使われている例を見てみると、土曜が含まれる、含まれないという解釈が都道府県によっても異なるように見える。
土曜を平日に入れる派: 神奈川、大阪、奈良
土曜を平日に入れない派: 東京、京都
解釈に混乱が見られるケース: 大分
道路標識における "祭日" の定義は?
あまり一般的ではないが、一部の道路標識の規制条件に「祭日」という表現が見られることがある。「祭日」は宗教儀礼上重要な祭祀を行う日のことで、もともと法律でも定められていたものの、1947年に廃止されており、その後は法律上定義されていない。標識令や交通規制基準など道路標識関係の条文にも「祭日」という記載は一切出てこない。
「祭日」は多くの日程が現在の「国民の祝日」に引き継がれており、社会通念上「祭日」=「祝日」ということで、「国民の祝日」と同じ意味で道路標識にも記載れている場合があるものと思われる。
特殊な日の指定方法
その他に、特殊な日の指定方法がなされる場合があるので挙げておく。福井県で駐車禁止の規制日に使われる「偶数月」「奇数月」は面白い概念である。また、競馬、競輪、競艇等ギャンブルが行われる日は会場周辺の交通規制に影響があるため、ギャンブル会場周辺でこのような記載が見られる。ギャンブルをやる人以外は「開催日」「発売日」と言われてもピンとこないが、規制される人が知っていれば良いという考え方なのだろう。場合によっては、これらの標識にギャンブル開催日カレンダーが貼られている場合もある。
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