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(312) 車両横断禁止と (311) 指定方向外進行禁止の違い

概要

赤地の「〇〇禁止」の中でも最もレア度が高いもののひとつである「車両横断禁止」の規制標識。一見、右折を禁止するようなシンボルの形をしているため、「指定方向外進行禁止」で代用できそうなものである。実際、「車両横断禁止」はあまり設置例は多くないように見える。また、車両横断禁止の場所では交差点の右折ができないなど勘違いをしている人も多いようである。

この記事では、両者の違いについて見てみることにする。

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補助標識の特徴

本題に行く前に車両横断禁止の補助標識について見てみよう。車両横断禁止の本標識には、ほぼすべての場合について補助標識が付加される。補助標識がないものは珍しい。車両横断禁止は他の規制標識と異なり、規制区間が明示的に表示される※。これは、この標識が交差点などの点で規制される場合と、一定区間で規制される場合があり、曖昧さをなくすために常に表示しているものと思われる。

※ 1992年6月以降の道路標識の改正で、区間内表示が省略可能になった。これ以前に設置された標識は、区間内表示が残っているものも存在する。

補助標識には、規制時間帯や、稀に規制車種等も掲示されることがある。

車両横断禁止は道路外の施設又は場所に出入するための規制

交通の方法に関する教則交通規制基準によると、車両横断禁止は、「車両の横断が歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあると認められる場所または区間」について、「道路外の施設又は場所に出入りするための左折を伴う横断を除く横断」を禁止するものである。この文章、どの部分がどの部分を修飾しているのか、句読点もなく分かりにくいのだが、「道路外の施設又は場所に出入り」するための「左折以外 (つまり直進と右折による)の横断」の禁止を意味する。また、「横断」は交差点における右折を含まない。

図解すると以下の通りとなる。

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図1: 車両横断禁止の規制の意味

① 道路外の施設又は場所に入るための左折による横断なので🔵。
② 道路外の施設又は場所に入るための右折による横断なので❌。
③ 道路外の施設又は場所から出るための右折直進による横断なので❌。
④ 交差点での右折なので🔵。(右折レーンなし、中央線あり。)
⑤ 道路外の施設又は場所に入るための直進による横断なので❌。交差点を右折するだけなら🔵。
⑥ 交差点での右折なので🔵。(右折レーンあり、中央線なし。)

指定方向外進行禁止は交差点での地点規制

では、これは「指定方向外進行禁止」の規制で防げないのかというと、これではうまく行かない。「指定方向外進行禁止」は交差点での地点規制であり、これ以外の場所で道路外の施設又は場所に入るために右折をする場合などには有効とならないからである。「車両横断禁止」であれば、区間で規制できる。

たとえば、図1の②は一番多いパターンだが、「車両横断禁止」の規制ではこれは禁止される。また、標識に右方向の横線矢印がついているのは、③のような、片側の店舗からもう片側の店舗や道路に横断する場合を想定している。

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しかし、一方 ④のようなケースはこの規制ではOKとなり、少々分かりづらい。規制の本質的な意味を考えれば、中央線が連続している交差点での右折は後続の車との衝突のリスクがあり、本来推奨されないはずである。また、④のケースでは右側の道路が公道である必要があり、私道や公共施設の駐車場入口のような場合だと交差点とは見做されずに②と同様の扱いになり違反になるリスクもある。

また、⑤のケースも直進はNG、右折はOKとなる。直進のケースは、そもそも⑤の方向から交差点に侵入してくる車は「車両横断禁止」の標識を見ていないため、その状態で取り締まるのは理不尽であるし、右折を許してしまうのも規制の本質から考えると危険である。

車両横断禁止と指定方向外進行禁止の組み合わせによる現実的な規制

以上のことを考えたときに、現実的には「車両横断禁止」の規制単体のみで対応するのではなく、規制区間の交差点に「指定方向外進行禁止」の規制も同時にかけて対応するのがよく、実際の道路での規制を見てみると組み合わせになっていることが多いことに気づくだろう。

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図2: 車両横断禁止と指定方向外進行禁止の組み合わせによる規制

車両横断禁止の規制区間の中央線が途切れないT字路で規制をすることで、④のような右折を防ぐことができる。また、T字路に規制区間外の方向から侵入してくる車に対しても標識を設置することで⑤のようなケースを防ぐことができる。

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場所: 東京都江東区 葛西橋通り
ダンゴになっていないが転回禁止規制区間でもある
キャプチャ
場所: 東京都江東区 葛西橋通り
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場所: 東京都江戸川区西小岩
交通規制基準によれば、交差点付近での「車両横断禁止」標識の設置は右折禁止と間違われるため推奨されていない。また、標識が単体で掲示されていても、大抵は転回禁止の規制も同時にかかっている。(この区間もそう)

また、車両横断禁止が行われているところでは、同様の動きをする「転回禁止」も十中八九規制されている。

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場所: 東京都中央区日本橋
転回禁止と車両横断禁止とのダンゴ。また、可変標識でも同じ時間帯の規制で交差点での右折禁止を規制している。

原付の二段階右折とは関係ない

原付は通常のルールとして、信号機がある片側の車両通行帯が2以下の「狭い道路」の交差点での右折時は、自動車と同様に道路の右側端に寄って右折 (小回り)し、片側の車両通行帯が3以上の「広い道路」の交差点での右折時は、交差点の側端に沿って二段階で右折すると定められている。このルールと違う方法で原付の右折を行わせたい場合に下記の図の左 (二段階)、または右 (小回り) の規制が行われる。

右の標識と車両横断禁止の標識は似ているが、車両横断禁止の標識の有無は原付の二段階右折には影響しない。(327の8/9)「原動機付自転車の右折方法」はそもそも交差点における規制であり、車両横断禁止は交差点規制ではない。

原動機付自転車の右折方法 (二段階/小回り) の規制標識

このように、車両横断禁止の規制は他の規制とも絡み合ってとても複雑で分かりにくいため、ドライバーには嫌われる傾向にあるのかもしれない。

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