見出し画像

ガソリンスタンドの事例から学ぶ従業員の内発的動機づけを高めて業績を拡大する方法

1.内発的動機づけと外発的動機づけの違いとは?


 業績拡大には、従業員のやる気を高めることが不可欠です。しかし、単に報酬でモチベーションを維持しようとすると、一時的な効果しか得られない可能性があります。

 そこで重要となるのが、従業員の「内発的動機づけ」を高めることです。この記事では、内発的動機づけを高めるための具体的な方法と、それを実践した企業の成功事例をご紹介します。

 内発的動機づけは、面白いと感じること、達成感を得られることなど、内側から湧き出る「やる気」を指し、外発的動機づけは、お金、賞賛、評価など、外からの刺激によって生じる「やる気」を指します。

「2種類の『やる気』があるのよな」

 以下で示したアメリカの心理学者エドワード・L・デシ氏が行った実験は、報酬が人の「やる気」に与える影響を検証したものであり、内発的動機づけの重要性を示す代表的な研究として知られています。

2.エドワード・L・デシの実験:報酬がやる気に与える影響

 この実験では大学生を対象に、パズルを組立てるという課題を与えました。実験の参加者は、以下のグループに分けられ、報酬について異なる対応をされました。

  • グループA:パズルを1つ組立てるごとに1ドルの報酬を与える

  • グループB:報酬は一切与えない

 これにより、各グループには以下の結果がもたらされました。

  • グループA:最初は報酬によって積極的にパズルを組立てていたが、報酬がなくなった途端にパズルを組立てなくなった。

  • グループB:報酬がなくても、パズルを組立てること自体に面白さや達成感を感じていたため、自発的にパズルに取組み続けた。

 この実験結果から、以下のことが分かります。

3.デシの実験から学ぶ内発的動機づけの重要性

 外発的動機づけとして与えられた報酬が与えられなくなると、やる気が萎えてしまいます。これに対して内発的動機づけは、持続性が高く、学習や仕事のパフォーマンスを向上させる効果が高いと言えます。

「報酬がないと萎える」

 デシの実験は、報酬よりも内発的動機づけを育むことが重要であることを示唆しています。よって、職場においても内発的動機づけを高めるような環境づくりを意識することが重要です。

 これを踏まえ、従業員の内発的動機づけを高めて、大きな実績に結び付けたガソリンスタンドの事例を見ていきます。

4.ガソリンスタンドの成功事例:内発的動機づけを高める工夫

 複数のガソリンスタンドを展開している企業に勤務するA氏は、比較的小規模な店舗に配属されていました。同店の顧客は固定客が多いものの、客数自体は少ない状況でした。そのため、A氏は顧客の購買履歴をほとんど記憶しており、固定客に最適な油外商品の提案を通じて販売実績を伸ばしていました。

 この実績を買われ、A氏は大規模な店舗に異動を命じられました。新店舗に赴任してみると、以前の店舗とは異なり、顧客がひっきりなしに来店します。

 当初は、販売する顧客に困らないと感じていたA氏でしたが、そのうちに顧客数が多すぎることから、顧客の購買履歴が把握しきれず、どの商品を勧めるべきか分からないという悩みを抱えます。

 A氏の元気のなさを見て取った同店店長は、彼と面談をすることにします。当初は弱みを見せまいとしていたA氏ですが、辛抱強く話に耳を傾ける店長に対して、上記の悩みを打ち明けます。

 そこで、店長はA氏の得意分野であるタイヤ販売に特化することを提案します。顧客に応じた油外商品を販売するよりも、すり減ったタイヤを装着しているような、タイヤ交換が必要な顧客を見出し、販売していくことに注力するという提案です。これにより、自分の得意分野に集中したA氏は自信を取り戻し、タイヤ販売で大きな成果を挙げます。

 この事例は、内発的動機づけの重要性を示しています。人は、自分が得意なことや興味のあることに取り組むことで、内発的なモチベーションが高まり、より高いパフォーマンスを発揮することができます

 この内発的動機づけを高めるためのポイントとして以下が挙げられます。

5.まとめ:内発的動機づけを活かした組織づくりのポイント

 内発的動機づけを高めるポイントとして以下が挙げられます。

  • 個々の強みや興味・関心に合わせた仕事を与える

  • 自主性や裁量権を与える

  • 達成感を味わえるような目標を設定する

  • 定期的にフィードバックを行い、成果を認める

  • 成長機会を提供する

 報酬や外部からの評価に依存する外発的動機づけは、それがないとやる気を維持することは困難と言えます。一方、内発的動機づけは、自分の興味や得意分野に基づいた取組みを通じて、持続的かつ高いパフォーマンスを引き出すことが期待できます。

 組織は、従業員一人ひとりの強みや興味に応じた仕事を提供し、自主性や達成感を味わえる環境を整えることで、内発的動機づけを高めることができます。これにより、従業員のモチベーションが向上し、組織全体の業績向上に繋がることが期待できます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?