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油外商品販売促進の落とし穴:管理強化が招くモチベーションの低下リスク

1.はじめに


 首都圏に複数店舗を展開する、あるガソリンスタンド運営会社は、油外商品の販売を促進するべく、現場スタッフの管理を強化しました。しかし、その結果、スタッフのモチベーションが低下してしまい、油外商品の販売実績が悪化するという問題に直面しました。

 本記事では、この事例を分析することで、管理強化が必ずしも効果的ではない理由と、モチベーションを高め、業績を向上させるためのマネジメント方法について考察していきます。

2.油外商品販売促進の課題:管理強化の落とし穴

 そのガソリンスタンド運営会社は、油外商品の販売促進を目的として、現場スタッフに以下の項目を毎日記録させ、毎月報告させる施策を実施しました。

* 1日に接客した顧客数
* 1日に油外商品のおすすめをした回数
* 1日に販売した油外商品の件数・金額・収益

 このように管理を強化した結果、スタッフのモチベーション低下を招き、油外商品の販売実績が低下してしまいました。では、なぜモチベーションが低下してしまったのでしょうか。

「管理を強化するとモチベーションが落ちるのはなぜ?」

3.心理的リアクタンスとは

 心理的リアクタンスとは、自分の自由な選択や行動が制限されたと感じた時に生じる、反発や抵抗の感情を指します。1966年にアメリカの心理学者ジャック・ブレームによって提唱されました。

 例えば、親から「勉強しなさい!」と強く言われると、反発して勉強する気が失せてしまうことがあります。これは、自分の行動の自由を制限されたと感じ、心理的リアクタンスが生じるためです。

 ガソリンスタンドにおいて、上記のような声掛けの管理をし過ぎると、声掛けを強制されたとスタッフが認識してしまい、「カウントが大変」「忙しいから」などと、できない理由を述べて、かえって声掛けをしなくなるリスクが高まります。さらに、以下の理由も挙げられます。

「今のあたしは心理的リアクタンス発動中やで」

4.X理論・Y理論とは

 1960年にアメリカの心理学者ダグラス・マグレガーは、人間のモチベーションを高める方策として、X理論・Y理論を提唱しました。

 これは、人間には生まれつき「怠け者で命令・強制されないと仕事をしないという側面 (X理論)」と「働き者で自己実現のために自ら進んで仕事をするという側面 (Y理論)」 の両面があるという考えに基づいています。

 X理論における人間観は以下のようなものです。

* 人間は生まれつき怠け者で、仕事は嫌なものと考えている。
* 責任を避け、楽な方に流されようとする。
* 命令や強制、脅迫によってコントロールする必要がある。
* 外部からの報酬によって動機づけられる。

「人間は本来、ダメな生き物なのよ」

これに対してY理論の人間観は以下のようなものです。

* 人間は本来、働き者で、仕事は満足感の源であると考えている。
* 責任を持ち、積極的に仕事に取り組む。
* 自ら目標を設定し、達成するために努力する。
* 内発的な動機づけによって行動する。

「人間は本来、やる気に満ちた生き物なんやで」

 上記のガソリンスタンドのように、管理を強化することはX理論に基づくものであり、キャリアの浅いスタッフには有効と言えますが、キャリアが豊富で、自主的に働き、より成長したいと考えるスタッフは、心理的リアクタンスによる反発心を抱くリスクがあります。

 そこで、Y理論に基づいたマネジメントが有効となるわけですが、マグレガーは具体的な方策として、目標管理制度、権限委譲を挙げています。以下では、この方策について解説していきます。

「目標管理制度と権限委譲の事例やで」

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