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顧客を感動させたガソリンスタンドの事例!臨機応変な接客をするためには?

1.赤ちゃんの眠りを守ったスタッフ


 顧客満足度を向上させ、売上アップを実現するためには、画一的なマニュアル接客ではなく、臨機応変な対応が重要です。本記事では、セルフ洗車機を利用する母親に対するガソリンスタンドスタッフの接客について事例を紹介し、マニュアル接客の弊害や、臨機応変な接客のポイントを解説します。

 ある日、チャイルドシートで眠る赤ちゃんを車に乗せた若い母親が、セルフサービスのガソリンスタンドにご来店されました。彼女は、ドライブスルー洗車機の入り口に向かい、洗車機の操作盤にお金を投入し、洗車メニューを選ぼうとしました。

 ドライブスルー洗車は、顧客が車に乗ったまま洗車機に車を入れて洗車する仕組みであり、洗車中は水の噴射音や水を吹き飛ばす風の音などで、車内には相応の音が響きます。よって、眠っている赤ちゃんを目覚めさせてしまう可能性がありますが、この母親はそのことを承知で洗車機を利用しなければならない理由があったのでしょう。

 そんな母親に同店のスタッフが駆け寄り、このように言いました。

「さて、なんと言われたのでしょうか」

 「洗車中に洗車機の音で赤ちゃんが目を覚ましてしまうかもしれません。私が洗車機にお車を入れて、洗車が終わりましたらお声がけしますから、お客様は赤ちゃんと店内の待合室でお待ちください。

 スタッフからの提案に、驚きと感激で目が潤みそうになったこの母親は、提案を喜んで受け入れました。そして、洗車が終わった後、スタッフに心からの感謝の言葉を伝えました。

 このように、臨機応変な接客が顧客の感動を生み、リピーターになったり、より高額な油外商品の販売に結びついたりするでしょう。

 逆に画一的なマニュアル接客は、顧客満足度や購買意欲の向上を阻害する要因となり得ます。確かに、マニュアルは基本的な接客の流れや言葉遣いを定めることで、安定したサービスを提供するのに役立ちます。しかし、マニュアルに頼りすぎると、以下の問題が発生します。

2.マニュアル接客の弊害

  • 顧客との心理的距離が縮まらない:画一的な接客は、顧客との間に心の距離を生み、コミュニケーションを阻害します。

  • 顧客のニーズを把握できない:マニュアルに定められたセリフを棒読みするような接客では、顧客の真のニーズを把握することができません。

  • 顧客離れの原因となる:画一的な接客は、顧客にとって退屈で、新鮮味を感じられないものとなりえます。特に、競争が激しいガソリンスタンド業界においては、顧客離れの原因となる可能性があります。

  • 油外商品の販売機会を逃す:マニュアル接客では、お客様に合わせた提案やお勧めを行うことが難しく、油外商品の販売機会を逃してしまう可能性があります。

 そこでマニュアル接客から脱却して、冒頭のスタッフのような臨機応変な接客が必要なわけですが、ここで意識したいのは、顧客との心理的距離を縮めることです。これによって、顧客はスタッフに心を開きやすくなり、自身が持つニーズを開示する抵抗が小さくなります。

 顧客ニーズが理解できれば、それに応じた臨機応変な接客がしやすくなりjます。そのために以下の2点に取組みましょう。

3.臨機応変な接客のポイント

(1)笑顔で接客する

 ここで言う「笑顔」とは、口角を上げる、歯を見せるといった顔の形ではなく、そのスタッフの表情を見れば顧客が笑顔になる表情を指します。

「笑顔の破壊力って結構おっきいんだいな」

 アメリカの作家、講演家、教育者であるデール・カーネギーが1936年に出版し、20世紀で最も多く読まれた本の一つとなった著書「人を動かす」では、笑顔について以下の記載があります。

動作は言葉よりも雄弁である。微笑みはこう語る──「私はあなたが好きです。あなたのおかげで私はとても楽しい。あなたにお目にかかってうれしい」犬がかわいがられるゆえんである。我々を見ると、犬は喜んで夢中になる。自然、我々も犬がかわいくなる。赤ちゃんの笑顔も同じ効果を持つ。

デール・カーネギー「人を動かす」より

笑顔を見せる人は、見せない人よりも、経営、販売、教育などの面で効果を上げるように思う。笑顔の中には、渋面よりも豊富な情報が詰まっている。子供たちを励ますほうが、罰を与えるよりも教育の方法として優れているゆえんである。

デール・カーネギー「人を動かす」より

 意図的に笑顔を作り、顧客を笑顔にすることで、好印象を与え、顧客との心理的距離を縮めることによって、顧客ニーズが把握しやすくなり、臨機応変な接客に繋がることが期待できます。

(2)声のトーンを上げる

 スタッフに「大きな声を出せ」と指示するガソリンスタンドは多いものですが、声のトーンが高くないと単なる大声になってしまい、顧客にとってはうるさく感じるリスクが発生します。

「声量ではなくって、トーンを上げるのさね」

 音が心身に与える影響の専門家である山﨑広子氏の著書「声のサイエンス」では、声のトーンが持つ重要な役割について、脳科学や心理学の研究結果に基づいて以下の内容が解説されています。

  • 高い声のトーンは、脳の前頭前皮質を活性化させ、集中力や思考力を高めます。

  • 高い声のトーンは、若々しく、活発な印象を与えます。

  • 高い声のトーンは、自信があり、誠実な印象を与え、説得力を高めます。

  • 高い声のトーンは、喜びや興奮などのポジティブな感情を表現します。

 このように声のトーンを上げることによって、好印象を与え、顧客との心理的距離を縮めることによって、顧客ニーズが把握しやすくなり、臨機応変な接客に繋がることが期待できます。

4.まとめ

 本記事では、マニュアルに縛られない柔軟な対応が、顧客満足度向上を向上させ、売上アップにつながることを、実例を交えて説明しました。

 さらに、マニュアル接客の弊害として、顧客との心理的な距離が縮まらず、ニーズを把握できないなどの問題を指摘しました。その上で、笑顔で接客することや声のトーンを上げることなど、臨機応変な接客を実現するための具体的な取り組みを提案しました。

 顧客との良好な関係を築き、満足度を向上させるためには、従来のマニュアルにとらわれない柔軟な接客スタイルが必要です。臨機応変な接客は、顧客に寄り添い、彼らのニーズや要望に応えることで、顧客の心を掴み、ビジネスに貢献するでしょう。

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