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被災したアイリスオーヤマ「ダイシン気仙沼店」の事例!経営理念の重要性とその構造を解説

1.はじめに


 2022年版中小企業白書によると、約9割の企業が経営理念・ビジョンを定めています。ですが、その重要性は本当に理解されているのでしょうか。

 当記事では、経営理念の重要性を理解するために、アイリスオーヤマグループのホームセンター「ダイシン気仙沼店」の事例をご紹介します。同店は、2011年の東日本大震災の際に大きな被害を受けましたが、経営理念に基づく店長の行動は顧客の心を打ち、あれから13年が経過した今、地域一番店となっています。

ダイシン気仙沼店(ダイシンホームページより)

2.水浸しと停電、それでも「少しでも役に立ちたい」

 同店は、宮城県の海岸沿いに立地し、2011年の東日本大震災の当日、大きな被害を受け、水浸しになり停電も発生しました。営業が困難な状況でしたが、被災者たちは生活必需品を求めて店に殺到し、毛布や乾電池はすぐに売り切れました。

 そのような中、店長は「少しでも役に立ちたい」という思いから、財布を持っていない被災者にも商品を販売することを決断しました。名前と連絡先、商品の金額をノートに記入してもらい、後日の支払いをお願いしました。驚くべきことに、後日、名前を記入した全ての人が支払いに来ました。

 さらに、店長は被災者たちに対し、無料で灯油10リットルを配布し、寒さに震える人々に温かい灯りを提供しました。

 この行動について、店長は「クビになるかもしれませんが、それでもいい」とテレビ局の取材に答えました。

「この取材シーンは放映され、当時出張中の親会社社長の大山氏も観てたんだって」

 アイリスオーヤマグループの経営理念は「ユーザーイン」であり、顧客のニーズを満たすことを重視しています。この理念に基づいた店長の行動は、被災者たちの心を打ちました。

 アイリスオーヤマグループの大山健太郎社長は、「店長の行動は誇りに思う」と述べ、その行動を高く評価しました。

 この事例は、経営理念がいかに重要であるかを改めて示しています。経営理念は、困難な状況下でも、正しい判断を導き、行動指針となる羅針盤のような役割を果たします。このような経営理念は、どのように策定するべきなのでしょうか。

3.経営理念の構成

 2022年版中小企業白書によると、経営学の分野で著名なジェームズ・C・コリンズ と ジェリー・I・ポラス は、著書「永遠の繁栄の法則」の中で、経営理念・ビジョンは「コアバリュー」「パーパス」「ミッション」の3つの要素で構成されると説いています。

 しかし、これらの言葉は混同されやすいため、以下でそれぞれの違いを詳しく解説します。

(1)コアバリュー(Core Values)

 コアバリューは、企業が「何よりも大切にしている価値観」であり、「どのような組織でありたいか」を端的に表すものです。利益追求や成長といった経営目標とは異なり、「誠実さ」「革新性」「顧客第一主義」など、普遍的な価値観であることが重要です。

 コアバリューは、経営判断や行動指針の基準となるものであり、すべての従業員が共有し、日常業務の中で体現することが求められます。

(2)パーパス(Purpose)

 パーパスは、企業が「なぜ存在するのか」「社会にどのような貢献をするのか」を明確にするものです。単なる利益追求ではなく、「社会課題の解決」「人々の生活の向上」など、より大きな使命感を表現します。

 パーパスは、従業員に深いモチベーションを与え、顧客との信頼関係を築く基盤となります。また、長期的な視点での経営戦略を導く指針にもなります。

(3)ミッション(Mission)

 ミッションは、企業が「現在、何を達成しようとしているのか」を具体的に示すものです。パーパスに基づき、「どのような商品やサービスを提供するのか」「どのような顧客にターゲットを絞るのか」を明確にします。

 ミッションは、短期的な目標や具体的な行動計画を指すものであり、従業員やステークホルダーにわかりやすく伝えることが重要です。

(4)経営理念・ビジョンと3つの要素の関係

 ジェームズ・C・コリンズ と ジェリー・I・ポラスによると、経営理念とビジョンは、コアバリュー、パーパス、ミッションの3つの要素を基盤として構築されます。

  • コアバリューは、経営理念・ビジョンの土台となる価値観です。

  • パーパスは、経営理念・ビジョンの目指す方向性を示すものです。

  • ミッションは、経営理念・ビジョンを達成するための具体的な行動計画です。

 3つの要素は密接に関連しており、互いに補完し合いながら、企業の羅針盤として機能します。

4.まとめ

 アイリスオーヤマグループのダイシン気仙沼店の事例で再認識された経営理念の重要性ですが、コリンズとポラスはコアバリュー、パーパス、ミッションの3要素が経営理念・ビジョンを構成するとしています。これらを設定し、よりよい経営理念・ビジョンを構築していきましょう。

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