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年上の部下を動かす!傾聴がマネジメントに与える影響

1.部下の声を聞くことの重要性


 サイボウズ チームワーク総研は、2023年7月に「年上の部下へのマネジメント」に関する意識調査の結果を公表しました。この調査は、部下に年上の正社員がいる30~50代の管理職1,500人、上司が年下である50代正社員1,000人を対象にしたものです。

 年下の上司に、年上の部下へのマネジメントに必要だと思うことを聞いたところ、多かった回答ベスト3は、上から順に「敬語・丁寧な言葉遣い」「日々の声掛け」「部下の話を聞く」でした。

 これに対して年上の部下に、年上の部下へのマネジメントに必要だと思うことを聞いたところ、多かった回答ベスト3は、上から順に「部下の話を聞く」「適切な判断と意思決定」「部下のミスのフォロー」でした。

 年下の上司は「部下の話を聞く」を3位に挙げていますが、年上の部下はこれを最も重要な要素として挙げています。このギャップは、年上の部下が自分の意見や経験が尊重されていると感じたいのに対し、年下の上司は他のマナーや声掛けを優先していることを示しています。

「年下上司は年上部下を傾聴することが大事」

 つまり、年上の部下を円滑に動かしていくには、部下の話を傾聴することが必要と言えますが、以下ではそのスキルについて解説していきます。

2.傾聴のポイントとは

 傾聴とは、単に相手の話に「聞く」ことではなく、心と耳を傾け、共感しながら理解しようとするコミュニケーション技術であり、以下の3つのポイントがあります。

「『聞く』んでなく『聴く』のさね」

(1) 頷き・相槌

 部下の話に対して頷きや相槌を示すことで、部下は自分の意見や感情が受け入れられていると感じやすくなり、信頼感が高まります。この効果は、いくつかの研究で証明されています。

 例えば、心理学者マタラッツォが行った実験では、面接官が志願者の話に対して頷くか頷かないかで、志願者の話す量に大きな差が生じました。頷いた場合、志願者は平均して1.5倍以上の量を話すことができました。

 また、山形大学と北海道大学の共同研究では、頷く人、首を横に振る人、静止する人の3つのパターンの動画を評価者に見せ、それぞれの印象を調査しました。その結果、頷いた場合は他のパターンと比べて「好ましい」「近づきやすい」という評価が30〜40%も高かったことがわかりました。

(2) 繰り返し

 部下の話で重要な部分を繰り返すことで、自分が部下の話に集中していることを示し、内容を確認していることが伝わります。これにより、部下は自分の話に関心が向いていると感じ、安心感や信頼感が生まれます

(3) 言い換え

 部下の話を自分の言葉で表現することで、自分が部下の話をどの程度理解しているかを確認でき、それを踏まえて部下の話の意味をより深く理解することができます。理解が深まるプロセスを通じ、部下は自分の意見や感情が受け入れられ、尊重されていると感じるでしょう。

 以下では、このような傾聴のスキルが重要であることを示したガールズバーの事例をご紹介します。これはスタッフが顧客の話を傾聴した事例ですが、スタッフを年下上司に、顧客を年上部下に置き換えて読み進めると理解が進むはずです。

3.ガールズバーにおける傾聴の成功事例

(1)ガールズバーでのセクハラ

 あるガールズバーでは、特定の顧客が行うセクハラが問題になっていました。具体的には女性スタッフの身体を触るわけですが、この顧客はそのガールズバーの出資者であり、経営者の友人でもあったことから、簡単に出入禁止には出来ませんでした。

 このセクハラ対策を思案する店長が気付いたのは、セクハラを受けているのは、特定の女性スタッフ数名のみということでした。

 これらのスタッフは、特別容姿が良いというわけではありませんでしたが、顧客の話を聞くよりも自分の話をしたがることや、顧客の話に対して「ヤバいー」か「ウケるー」しか言わないという特徴がありました。

 これらのことから、コミュニケーション能力の低さが、顧客から軽く見られており、話が退屈だからセクハラをしているのではないか、という仮説が成り立ちました。

(2)セクハラ対策

 そこで、あるスタッフがセクハラを受けている女性スタッフに「さしすせそ作戦」を提案しました。

 これは、以下の言葉の頭文字をとったものです。

 「さすがですね!」
 「知りませんでした!」
 「ステキ!」「スゴイ!」
 「センスいいですね!」
 「そういうのって〇〇さんの長所ですよね」

 「ヤバいー」と「ウケるー」を封印し、ひたすら上記の「さしすせそ」で返し、得た回答を元に質問をする。その回答に「さしすせそ」で返し、質問をするのが「さしすせそ」作戦です。

 その会話の中で用いるべき適切な「さしすせそ」はどれか、また、その会話の中で用いるべき適切な質問は何かを判断するには、傾聴のスキルが必要となります。店長はセクハラを受けているスタッフに、これが出来るように練習をさせました。

 その効果は、少しずつ確実に出るようになりました。セクハラ客は、過去の武勇伝を楽しそうに語りながら、お酒を飲むペースも上がり、酔いが回る時間が早くなりました。結果として顧客の滞在時間は短くなったにもかかわらず、売上が上がるようになりました。

 そんなある日、来店していたこのセクハラ客がスタッフに言いました。「オレに興味を持ってくれるのは、この店だけだ。今まで触ったりして悪かったな。もうしないからさ。」というものでした。

4.マネジメントにおける傾聴の重要性

 現代社会において、部下の話を聞き、共感することは、効果的なマネジメントを行うために必須のスキルとなっています。しかし、単に話を「聞く」のではなく「傾聴」こそが、真のコミュニケーションを促進し、信頼関係を築く鍵となります。

 ガールズバーの事例は、傾聴スキルの重要性を如実に示しています。顧客の話を聞き、共感することで、セクハラの解決だけでなく、顧客満足度向上と売上アップという成果を達成しています。

 部下の話をしっかりと聞き、共感できるリーダーこそが、真のチームを創り上げ、組織を成功へと導くことができると言えるでしょう。

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