【傾聴スキル】ベテラン社員のモチベーションを高める方法
1. ベテラン社員のモチベーション
「ベテラン社員のやる気を引き出したいけど、どうもうまくいかない…」という悩みを抱えるリーダーは、傾聴スキルを活用することで、活路を見出せる可能性が高まります。
以下の記事で、新しい取り組みに慎重なベテラン社員に対する有効なリーダーシップの一環として、SL理論を紹介しました。特に熟練度の高い部下に対して有効な「委任型リーダーシップ」を活用し、必要に応じてコーチングを提供することが効果的だと述べました。
今回は、そのコーチングの要となる傾聴スキルに焦点を当て、ポイントを解説します。
2.私がベテラン社員のモチベーションを高める方法を紹介する理由
私がベテラン社員のモチベーションを高める方法を紹介する理由は、以下に述べる経験があるためです。
私は21年間、ガソリンスタンドの運営会社に勤務し、そのうち13年間は店長を担いました。ベテラン社員を部下に持ったことも数多くありましたが、彼らが常に高いモチベーションを維持していたわけではなく、時にはやる気を引き出すのに苦労することもありました。
その状況を改善するために、中小企業診断士の資格取得を目指して学んだコーチングスキル、特に「傾聴」を実践したところ、少しずつベテラン社員のやる気を引き出すことに成功し、最終的には高いモチベーションで業務に取り組んでもらえるようになりました。
その後、経営コンサルタントとして中小企業のリーダーたちと関わる中で、多くの方がベテラン社員との接し方に課題を抱えており、傾聴スキルが有効であることを実感しています。
このような経験から、今回の記事では、ベテラン社員のモチベーションを高めるために具体的に傾聴スキルをどのように活用すべきかを解説していきます。
3.ベテラン社員のモチベーション向上のために傾聴が必要な理由
以下では「ベテラン社員」を「年上の部下」として取り扱いますが、サイボウズ チームワーク総研は、2023年7月に「年上の部下へのマネジメント」に関する意識調査の結果を発表しました。この調査は、年上の部下を持つ30~50代の管理職1,500人と、年下の上司を持つ50代の正社員1,000人を対象に行われました。
調査の結果、年下の上司が「年上の部下のマネジメントに必要だと思うこと」として最も多く挙げたのは、「敬語や丁寧な言葉遣い」、次いで「日々の声掛け」、そして3位に「部下の話を聞く」でした。
一方で、年上の部下に「年上の部下へのマネジメントに必要だと思うこと」を聞いたところ、1位は「部下の話を聞く」、2位が「適切な判断と意思決定」、3位は「部下のミスのフォロー」と、年下の上司と年上の部下で異なる結果となりました。
特に注目すべき点は、年上の部下が「部下の話を聞くこと」を最も重要視しているのに対し、年下の上司はこれを3位に留めている点です。このギャップは、年上の部下が自分の意見や経験を尊重されたいと感じているのに対し、年下の上司は、言葉遣いや声掛けなどの表面的なマナーを重視していることを示しています。
つまり、年上の部下のマネジメントにおいて重要なのは、部下の話をしっかりと傾聴し、その経験や意見を尊重することだと言えるでしょう。そこで、以下では「傾聴スキル」について解説していきます。
4.傾聴の重要ポイント
傾聴とは、単に相手の話を「聞く」ことではなく、心を込めて耳を傾け、共感を持って理解しようとするコミュニケーション技術です。傾聴には以下の3つの重要なポイントがあります。
(1)頷き・相槌
部下の話に対して頷いたり相槌を打ったりすることで、部下は話をしっかり聞いてもらえていると感じ、信頼感が高まります。
例えば、心理学者マタラッツォの実験では、面接官が志願者の話に頷くかどうかで、志願者の発言量に大きな差が見られました。頷いた場合、志願者は平均して1.5倍以上も多く話すことができました。
さらに、山形大学と北海道大学の共同研究では、頷く人、首を横に振る人、静止する人の3つのパターンの動画を評価者に見せ、その印象を調査しました。その結果、頷いた場合は他のパターンに比べ、「好ましい」「近づきやすい」と評価される割合が30〜40%も高いことが示されました。
(2) 繰り返し
部下の話の中で重要な部分を繰り返すことで、部下は自分の話を理解しようとしてくれていると感じるようになります。また、重要なポイントが共有されることから、上司と部下の共感が高まるでしょう。
(3) 言い換え
部下の話を自分の言葉で表現し直すことで、どれだけ認識の度合いが一致しているかを確認できます。言い換えにより、上司の認識度合いが低いことが明らかになった場合は、部下に説明を求めます。このプロセスを通じて、部下は自分の意見や感情が理解され、尊重されていると感じることができます。
5.傾聴スキルでベテラン社員のモチベーションを高める方法のまとめ
ベテラン社員のモチベーションを高めるためには、傾聴スキルが不可欠です。部下の意見や経験を尊重し、心を込めて耳を傾けることで、信頼関係を築くことができます。具体的には、頷きや相槌を用いて部下の話を受け入れ、重要なポイントを繰り返し伝えることで関心を示し、さらに言い換えによって理解を深めることが効果的です。
この記事を参考に、傾聴スキルを活用し、ベテラン社員とのコミュニケーションを深めていきましょう。次回は、傾聴スキルを身につける研修の内容をご紹介していきます。
なお、ベテラン社員の活用など組織の活性化に関する個別のご相談も承っております。以下のフォームからお気軽にお問い合わせください。