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河川:治水:巴川水系・大谷川放水路(静岡県静岡市)

大谷川放水路は巴川の氾濫対策として建設された放水路で、本来は清水に向けて東へ流れる水を南に分流させて駿河湾に導いている。河口を2つにして、水を分散させようというわけである。
と、ここまではよくある分水路の建設だが、大谷川放水路はその建設方法が奇抜である。元は南から北へ向かって流れていた巴川支流の後久川の流れを、北から南へと逆流させ(同時に拡幅)、さらに分水嶺を越えて開削し、別の河川だった大谷川につなげて駿河湾に至る。2本の自然河川を大改造して1本の放水路にしたのである。
そうした奇抜さにひかれて、放水路沿いに歩いてみることにした。
2018.12.15

大谷川放水路の起点標識が立てられている。

ここが大谷川放水路の分岐点。正面の水路が放水路で、ゴミが流れ込まないように網場が設けられている。

この地点は、今でこそ巴川の本流と大谷川放水路との分岐点だが、かつては巴川、巴川都市雨水幹線、後久川の3河川が合流していた。当時の水の流れを書き込んでみた。
「都市雨水幹線」とは下水路として管理されているもの。

歩き始める前に、放水路建設前と後の水の流れを地図で確認してみる。後久川には大慈悲院川、小鹿沢川という支流が流れ込んでいたが、今は放水路に合流して北から南へと導かれている。

巴川から分流して間もない地点。水量が少なく、堆積した土砂には草が生えている。正面には東海道新幹線の土盛りが見えている。

旧名の後久川が、橋の名前として残っている。

東海道新幹線やJRの貨物駅の部分は暗渠になっている。こちらは迂回して跨線橋で線路を越える。写真右手に走っているのが東海道本線(在来線)で、真ん中が新幹線、左が保守基地になっている。保守基地はレールの幅が異なっている新幹線と在来線の両方に対応するためか、3条軌道(線路が3本ある)になっている。

線路を渡って南側に出ると、大谷川放水路は一時的に流れを西側に向ける。このあたりは近年開発が進められている東静岡駅付近で、ビル群に向かって流れている光景が見られる。

南へ進む。元は、後久川と大谷川を隔てていた分水嶺の丘陵があり、それを掘り割って放水路が建設された。両岸の壁が一段と高くなっている。

下流を放水路に乗っ取られた大谷川。元々は、このような水田地帯を流れる小さな川だった。写真は放水路との合流点付近から上流を望む。

大谷川放水路の下流部。拡幅されて幅広い水路になっている。

いよいよ海に近づいてきた。海沿いに国道150号が走っていて、その交差点の名称に大谷川放水路が採られている。

大谷川放水路は水門を経て駿河湾につながっている。これは、放水路建設の際に大谷川を掘り下げたために海水が逆流しやすくなり、その対策である。

改めて海側から水門を眺める。ここが大谷川放水路の「河口」である。

一日歩いて、時刻はもう夕方。夕日が海を照らして美しかった。

大谷川放水路の河口付近の集落名は高松。ここから静岡駅南口までバスがある。

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