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シリーズ初見のFEエンゲージ感想

キャラデザに強く惹かれ、それだけで買った。自分にしては珍しく一目惚れをするようにゲームを買い、苦手とするSRPGに初めて足を踏み入れたことも含めて感想を書いていこう。終盤のネタバレを多少含むので注意
ちなみに難易度はノーマル+カジュアルで、クリアまでにかかったプレイ時間は約50時間。

脳筋エネミーに立ち向かう「エンゲージ」システム

”エムブレム・エンゲージ!!”
FEエンゲージの主人公「リュール」と初代FEの主人公「マルス」の力が一つになった姿

緻密な戦略と重い一歩で着実に敵軍を削っていく、というのがSRPGの基本形だが、それを真っ向から打ち破るようにFEエンゲージに存在しているのが「エンゲージ」システム。FEシリーズの過去作主人公たち(紋章士)の力が宿った指輪を使い、彼らと一心同体になる強化システムだ。

エンゲージ状態は3ターンしか継続しないが、エンゲージ中は紋章士たちが持つ固有武器やスキルが解放され、さらに1度のエンゲージで1回だけ超強力な必殺技(エンゲージ技)も放つことができる。

紋章士「シグルド」の必殺技、”オーバードライヴ”

この「エンゲージ」システム、はっきり言ってぶっ壊れ性能である。状況が整えばたった1度の攻撃で3~4体の敵をまとめて倒したり、1度の攻撃で平均して与えられるダメージが20~30における本作に存在する、HPが70以上あるような強敵を1撃で消し炭にすることも可能だ。

だがしかし12種類もの強化変身モードが備わっている本作において、これらは全て適切なバランスで働いていると言っていいだろう。なぜならこちらが強力な力をぶん回すのに合わせて相手もガンガン脳筋ステータスになっていくからだ。

序盤こそ物理防御と魔法防御の数値を見て弱点をちまちま突くような戦闘が主となるが、中盤以降の敵はどいつもこいつも物理、魔法ともに高水準の値で無数に出現する
序盤は無敵の力のように感じられたエンゲージも、中盤以降は”ないと対処しきれない”=”本作において存在が大前提”のシステムに変化し、互いに強烈な能力値同士で殴り合うからこそ成立している、ある種稀有なシステムにも感じられた。

また、いくら強力といえど3ターンという制限は存外重く、早撃ちしてしまうとラストに構えるボスの対処が間に合わなかったり、温存しすぎると敵の軍勢に対して攻めあぐねてしまう…という「エンゲージの切りどころ」を見極める形でSRPGの中に落とし込んでいる点も面白かった。

いわばこのゴリ押しシステムにより、本作は間口が広く爽快感も強い、遊びやすさのあるSRPGと言える。苦手なゲームジャンル2位にSRPGを挙げる自分がクリアまで楽しめたので間違いないだろう。
ちなみに苦手なゲームジャンル1位はパズルだ。

超個性的、魅力たっぷりなキャラクターたち

俺の推し「ロサード」

FEシリーズといえば個性的なキャラクターたちが多数登場するいわゆる”キャラゲー”としての軸も持ち合わせているが、もちろん本作もそうだ。
本作に登場するプレイアブルキャラクターは総勢30名以上。紋章士も含めると50に届きそうだ。

ただの限界オタク、珍味好き、ハイテンション聖職者、ふざけた子安、「意味深」なセリフ回し、男の娘など…キャラごとに強い属性が与えられているため、初見のインパクトはもちろんやりこんでいく中で生まれるキャラへの愛情も強い。

それらキャラクターたちに合わせ、戦闘でどの武器を持つか、何かに騎乗するか…といった役職システム、固有スキルの継承、エンゲージなども合わさりキャラカスタマイズの選択肢は膨大だ。推しに全力の愛情を注いで育成すればどのキャラであっても必ず心強い味方になってくれるのもオタクとしては嬉しいところであった。

キャラデザをそのまま落とし込む、高クオリティな3Dモデル

紋章士「ミカヤ」

このゲーム、3Dモデルのクオリティが中々にいい。着眼点そこかよ!かもしれないが、個人的にこれがかなり気に入っている。
本作のキャラクターデザインは数々のラノベのイラスト、Vtuberのデザインなどを手掛けたイラストレーター、「Mika Pikazo」氏が担当されている。

主人公「リュール」のとんでもない髪色、ほぼ原色の赤と青2色構成である

Mika Pikazo氏といえば原色に近いような彩度の高い色が散りばめられたカラフルかつビビッドなイラストが印象的だが、本作のキャラクターデザインにおいても氏の鮮やかな色使いが炸裂している。

その中でもやはり印象に強く残るのが本作の主人公「リュール」だろう。なんとほぼ原色に近い赤+青の2色を左右でセパレートだ。めちゃくちゃドギツいカラーリングにも感じられるが、主人公の立ち位置や、ストーリーで語られるこの髪色の意味合いを理解した後だともうこの髪色以外ありえなく思えるのだ。イラストレーターってすごい。

支援会話(キャラストーリー)シーン

主人公の髪の話はこのへんにして…
本作においてキャラクターの元デザイン、つまりイラストレーターの絵柄が目立った破綻なく見事にモデルに落とし込まれている点がとても好印象だ。
絵柄の表現と3Dモデル…というと近年ではXenoblade2なんかが記憶に新しいが、本作もそのような魅力を感じる。

キャラクター(ユニット)一覧画面
戦闘開始(会敵)シーン

そんなキャラクターたちは、拠点、会話、戦闘、UIに至るまで全て3Dモデルで描写される。Nitendo Switchという次世代機からは一歩引いた立ち位置のハードにおいてフレームレートの低下もなく無数の3Dモデルを表示できているところに、開発の強いこだわり、執念を見ることができる。
もちろんそうした画作りには背景描写の簡易化といったハードに制限されている面も見られるが、それが気にならないくらいにはモデルのクオリティ及び出番が多く、キャラクターたちに強い存在感を与えている。

シミュレーションゲームと数人での会話というミスマッチ

序盤の会話シーン

さて、ここまで感想を述べてきて

  • 力強くも奥深い絶妙なバランスの戦闘

  • 魅力的なキャラクターたち

  • 高クオリティかつ出ずっぱりの3Dモデル

と本作の特徴や評価点を挙げてきたが、明確な不満点もある。
やはり本作において最も引っかかる点といえば、数十人規模で動く戦闘シーンの合間に挟まる4~5人程度で構成された会話シーンだ。

戦争を題材とした作品であるにも関わらず、重役数人同士でしか会話が行われない。こちらのプレイアブルキャラクターが30人を超えようと、敵幹部が登場し数多の兵士を引き連れようと、だ。
それだけでもストーリーの掘り下げに対して特別大きな不備があるワケではない。むしろ王道中の王道を通るが故にそうした会話シーンで事足りている、ということだろう。
本作では前述したように会話シーンにおける背景描写の簡易化(静止画の背景をバックにモデルが数体立つ)がされている。

そうしたハード本体から来る描写における制約と数人での会話シーンが合わさり、主軸としては国同士が争う大事になっているのに国王数人と主人公、敵幹部の井戸端会議のような光景でひたすらストーリーが進む…というミスマッチが出来上がってしまっている。
戦闘シーンや各種UI、それこそデザインやモデリング、モーションなど、メインのプレイ体験に合わせて作りこみが徹底されている部分がしっかり見えてくる分、余計な悪目立ちをしてしまっている印象だ。

ピンチと逆転の連続、ド王道のお話をどう受け取るか

ピンチで覚醒する主人公

本作のストーリー構成は良くも悪くも真正面からぶつかりそのまま突き抜けていく、いわば王道展開だ。
分かりやすくピンチになり、分かりやすくパワーアップし思いっきり大逆転し、そのまま勝利…といった流れが続く。ここをどう受け取るかでストーリー評価が分かれてくるだろう。

に寄せて解釈すれば、読みやすく理解しやすい曲がりのない構成。挫折と成長を繰り返し、最後に巨悪を打倒し大団円。
に寄せて解釈すれば、容易に先が予想でき裏切りも交錯もない構成。安易なピンチと打開から来る緊張感の薄さ。

世間一般としては否寄りの意見が多く、自身も本作のストーリーで気になる点はいくつか存在している。一番はやはり雑なピンチ描写だ。
数カット先ですぐ打開するのが分かりきっているのに、ポンポンと死んだり生き返るので戦争のお話なのに命の重みがあまり感じられない。状況がどうあれ、主人公が死んで生き返るくだりを2連続でぶつけてきたのはさすがにビビった。

この横一列にズラッと並ぶ構図はどの作品でも好き

しかし個人的には本作のストーリー構成は好きか嫌いかで言えば好きだ。包み隠さず言うのであれば、1マップの攻略に40分~1時間もかかってクソ疲れてる状態だから軽めに話が進む方が気が楽。これに尽きる。
それにそもそも自分は王道展開が好きなタイプだ。圧倒的不利な絶望的状況を仲間との絆や一度限りの奇跡で一気にひっくり返す瞬間は何度味わっても爽快感がある。

本作自体が過去作主人公たちが多数登場するお祭り作品のような位置付けなこともあり、多数のレジェンドが未熟な主人公と共闘し、主人公は次代の新たな英雄として語られていく…という主軸は、幼いころから特撮作品をたくさん通ってきた身としてスッと入る食べやすいものだった。

総じて本作のストーリーは「戦争という”深さ”には欠けるが次代のヒーローライズを”スムーズに”描く王道ファンタジー」だと解釈している。
賛否両論(世間一般には否寄り)の作品をいつも賛寄りで評価する自分だからこその結論かもしれない。どちらも目立つからこそ、その良いところを強く評価したい。

つまるところ

これうき

本作はオーバーパワーを緻密に振り回すという稀有なSRPGであり、”推し”を尊重してくれるキャラゲーであり、貫きすぎて世間には刺さりにくい王道ファンタジーだ。

FEシリーズ初見+苦手なジャンルという不安要素を押しのけるほど、ゲームシステムは簡単かつ奥深く、ファイアーエムブレムというジャンルの面白さを手軽に味わえる作品だった。
ストーリー面では多少引っかかる点こそあれど、ゲーム本体はシリーズ入門用としてバッチリ仕上がっている。自分同様、シリーズを一度も遊んだことがないユーザーにこそ届いて欲しい作品と感じた。

キャラデザ興味あるな~~~でもSRPGは触ったことがなくて怖いな~~~というそこのオタクは顔で買っても多分満足できるから遊んでみよう。
あと戦闘BGMも結構いい。特にブロディアとソルムの2段階目は推せる

全然関係ないがこの記事の総文字数は約4300字だ。長すぎる。
圧縮言語を学びたいところだ。

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