Four Factorsに基づいた選手の評価
こんにちは、らんそうるいです。今回は5回を予定している連載の第2回として、Four Factorsに基づいた選手の評価について書きたいと思います。連載におけるこの記事の位置づけを図で示すと次のようになります。

前回(第1回)の内容をおさらいしましょう。バスケのデータの内、最も基本的なデータ、たとえば得点やフリースローを放った回数、をベーシックスタッツと呼びます。ただ、ベーシックスタッツは単体では解釈が難しいことが多いです。たとえば、オフェンスリバウンド数が少なくても、それはその選手がオフェンスリバウンドを獲得する能力が低いのではなく、チーム全体でシュートをあまり外していないためオフェンスリバウンドの機会が少ないせいかもしれません。そこで、選手の評価にはベーシックスタッツ同士を組み合わせたアドバンスドスタッツが使われることが多いです。
アドバンスドスタッツは有名なものだけでもかなりの数になります。そこで今回(第2回)は、アドバンスドスタッツの中からFour Factorsを説明します。Four Factorsを取り上げる理由は、Four Factorsはそれぞれがチームの攻撃の終わり方と対応付けられており、評価に応用しやすいからです。よろしくお願いいたします。
Four Factorsとは何か?
Four Factorsとは、次の4つのアドバンスドスタッツのことです。攻撃を評価するために使われます。
eFG%(effective Field Goal %):3Pシュートの価値を考慮したフィールドゴール成功率です。
FTR (Free Throw Rate):フィールドゴール試投数に対するフリースロー試投数の割合です。
TO%(Turnover %):自チームの攻撃回数に対するターンオーバー数の割合です。
ORB%(Offensive Rebound %):自チームが外したシュートの内、オフェンスリバウンドを獲得できた割合です。
Four Factorsはなぜ重要視されるのか?
バスケットボールにおいてチームの評価は勝利との関連で行われるべきです。バスケットボールは制限時間内に相手より多くの得点を挙げたチームが勝利するスポーツなので、効率の良い攻撃を多く行うことで勝利に近づくことができます。
このような視点に立つと、PTS(得点)はPPP(Point Per Possession:得点効率)とPOSS(Possession:攻撃回数)という2つのアドバンスドスタッツに分解することができます。これを図示したのが次の図です。この図が意味するところは、一回の攻撃で獲得できる見込める得点に、攻撃の回数を掛け算すると、一試合の合計得点を推定できるということです。

連載の初回で説明したベーシックスタッツとPPP・POSSとの関係は分かりづらいので、関係を解釈しやすいようにベーシックスタッツを4つのスタッツにまとめたものが、冒頭で紹介したFour Factorsです。PPP・POSSとFour Factors、Four Factorsとベーシックスタッツの関係を図示すると次のようになります。水色のアドバンスドスタッツは得点効率に関連するスタッツで、橙色のアドバンスドスタッツは攻撃回数に関連するスタッツです。Four Factorsと同じ行(=横のライン)に配置されたベーシックスタッツは、Four Factorsと関連の深い自チームのベーシックスタッツを表しています。たとえば、eFG%は2P・3Pシュートと関連が深いことを意味しています。

Four Factorsが良い値であると、チームが効率よくたくさん攻撃していることになるので、重要視されています。
Four Factorsと攻撃の終わり方
初めに、Four Factorsは攻撃の終わり方と対応付けられていると紹介いたしました。これを図示すると次のようになります。

バスケットボールの攻撃は複雑ですが、終わり方に注目すると実は4パターンしかないことを上図は意味しています。これら4パターンとFour Factorsとの対応関係を説明すると、
シュートが成功する → eFG%
シュートが失敗して相手にリバウンドをとられる → ORB%
ファウルを受けてフリースローを獲得する → FTR
ターンオーバーを犯す → TO%
となります。
上図のゴールは緑色のPTSに辿り着くことです。eFG%・FTRが高いほど、TO%が低いほど、PTSに辿り着きやすいです。ORB%が高いほど攻撃を再開できるので、PTSに辿り着きやすいです。このように、Four Factorsは攻撃の終わり方に注目することで、チームが効率的な攻撃をたくさん行っているかを評価しています。
Four Factorsを用いてどんな選手評価ができるのか?
ここまではチームの評価という文脈でFour Factorsを説明してきましが、選手単位でもFour Factorsを適用することができます。チームのFour Factorsはチーム全体の攻撃を捉えているので、それを選手単位に分解して、個々人にFour Factorsを適用すると、チーム全体の攻撃における個々人の位置づけが考察できます。チーム全体から選手単位に視点を移しても、Four Factorsの解釈は全く同じです。
そのため、選手単位でFour Factorsを適用すると「選手Aは得点こそ少ないがORB%が高く、チームの攻撃回数を増やすことで貢献してくれているな」とか「選手Bは得点効率が高いが、これはFTRが高いので、フリースローをたくさん稼いでいるためだ」といったことが考察できるようになります。
Four Factorsに基づいた選手評価の限界
Four Factorsの限界としては次の2つが挙げられます。1つ目は評価の観点が4つあるので、総合的にその選手の出場がチームにとってプラスなのかマイナスなのか分からないことです。2つ目はベーシックスタッツとして記録されないプレイによる貢献は捉えられないことです。
1つ目の限界:総合的な貢献度が分からない
たとえば、ORB%は高いが、TO%も高い選手がいたとします。ORB%はチームにとって高いほどプラスになるスタッツである一方、TO%はチームにとって高いほどマイナスになるスタッツです。ORB%もTO%も高い選手の出場は結局、チームにとってプラスなのかマイナスなのか分からない、という限界があります。
2つ目の限界:スタッツに残らない貢献は分からない
たとえば、Bリーグではスクリーンプレイと呼ばれる、守備の進路を妨害するプレイの集計結果は公開されていません。このようなプレイはおそらくチームにとってプラスなのですが、Four Factorsでは評価が難しいです。現状、
Four Factors以外のアドバンスドスタッツを使っても難しいです。
次回:総合的な貢献度を表すスタッツの紹介
そこで、第3回以降では選手の総合的な貢献度を表すスタッツとして、オールインワンメトリクス(連載では単にメトリクスと呼ぶことがあります)をご紹介します。
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