オールインワンメトリクスに基づいた選手の評価──EFF系

こんにちは、らんそうるいです。今回は5回を予定している連載の第3回として、オールインワンメトリクスの内、私たちがEFF系と呼んでいるものについて書きたいと思います。連載におけるこの記事の位置づけを図で示すと次のようになります。

選手の評価指標の整理:下は個人の具体的なプレイで、上は出場選手たち(ラインナップ)の得失点差を表しています。下に行くほど具体的・上に行くほど抽象的です。

 前回(第2回)の内容をおさらいしましょう。アドバンスドスタッツを使うと選手の能力が評価できます。特にFour Factorsは攻撃の終わり方と対応関係がありました。しかし、Four Factorsは評価の観点が4つあるので、良いスタッツも悪いスタッツも両方とも高い選手が試合に出場することは、チームにとってプラスなのか分からないという限界がありました。そこで、総合的な貢献度を評価するために使われるのがオールインワンメトリクスです。
 今回(第3回)はオールインワンメトリクスの概要を説明した上で、EFF系とプラスマイナス系そして混合系に整理したいと思います。この整理に基づいて、EFF系のメトリクスの長所と短所をご紹介します。よろしくお願いいたします。

オールインワンメトリクスとは何か?

オールインワンメトリクスは選手の試合での貢献を1つの数値で表そうという試みです。貢献度は「100回攻撃した時の得失点差(=ネットレーティング)」で表現することが多いです。

1つのスタッツで総合的な貢献度を評価するメリット

1つのスタッツで総合的な貢献度を評価するメリットは、総合的に見てその選手の出場がチームにとってプラスなのかマイナスなのか分かりやすいことです。このことをFour Factorsと対比しながら説明したいと思います。
 Four Factorsでは良いスタッツも悪いスタッツも含めて評価の観点が4つありました。そのため、たとえば良いスタッツは高いが悪いスタッツも高い選手が出場することはチームにとってプラスなのかマイナスなのか分からないという限界がありました。オールインワンメトリクスは、1つの数字で良い影響も悪い影響も含めた総合的な貢献度を評価しようとしているため、このようなことが起きないようになっています。

EFF系・プラスマイナス系・混合系のメトリクス

オールインワンメトリクスはネットレーティングで表現されることが多いと述べました。ネットレーティングの計算方法は大きく分けて2つあります。EFF系とプラスマイナス系という分類は計算方法に基づいたオールインワンメトリクスの分類で、ベーシックスタッツ・アドバンスドスタッツから計算するものをEFF系、プレイバイプレイから計算するものをプラスマイナス系と私たちは呼んでいます。これらは系統ごとに長所・短所が似ています。

EFF系とPM(プラスマイナス)系のメトリクスの関係:この記事ではEFF系のメトリクスに焦点を当てます。

EFF系のオールインワンメトリクス

EFF系のオールインワンメトリクスは、EFF(Efficiency:エフィシェンシー)に端を発するタイプです。計算の方針は「良いスタッツの合計から悪いスタッツの合計を引き算する」です。EFF系で有名なオールインワンメトリクスの例を挙げると、Bリーグ公式ホームページで公開されているEFF、古くからのNBAファンには馴染みの深いPER(Player Efficiency Rating)、そしてBPM(Box Plus-Minus)があります。

プラスマイナス系のオールインワンメトリクス

プラスマイナス系のオールインワンメトリクスはプラスマイナスに端を発するタイプです。プラスマイナスとは、出場時間中の得失点差のことです。プレイバイプレイの公開が始まってから、出場選手と得失点の推移が分かるようになり、計算され始めました。プラスマイナス系で有名なオールインワンメトリクスを挙げると、プラスマイナス、ネットプラスマイナス(オンオフレーティングとも呼びます)、APM(Adjusted Plus-Minus)そしてRAPM(Regularized Adjusted Plus-Minus)があります。

混合系のオールインワンメトリクス

混合系のオールインワンメトリクスはEFF系とプラスマイナス系を混ぜ合わせたタイプです。混合系で有名なメトリクスを挙げると、PIPM(Player Impact Plus-Minus)やLEBRON、RPM(Real Plus-Minus)などがあります。

EFF系のメトリクスの長所

EFF系のオールインワンメトリクスの長所は、プラスマイナス系と比べて、短期間のデータでもしっくり感のあるランキングを作成できることが多い点です。これはEFF系のメトリクスの計算の材料になるベーシックスタッツ・アドバンスドスタッツが、プラスマイナス系のメトリクスの計算の材料になるプラスマイナスに比べて、極端な値を取りにくいためでないかと私は推測しています。
 また、近年は測定されるスタッツの種類が広がってきています。NBA公式サイトでは、選手の走行距離や得点に結びついたスクリーンプレイの数(スクリーンアシスト)、ボックスアウトの数が集計・公開されています。EFF系のオールインワンメトリクスはこれらの新しいスタッツをまだ計算に含めていないので、これらを計算に取り入れることで、さらに良いものに進化していくだろうと私は考えています。

EFF系のメトリクスの短所

EFF系はベーシックスタッツとして測定されていないプレイを評価することが苦手です。たとえば、守備の評価と攻撃のオフボールのプレイの評価が苦手です。これは現在集められているスタッツが攻撃側でボールを持っている選手のプレイに偏っているためです。こうして集められたスタッツからEFF系のオールインワンメトリクスは計算されるので、EFF系による評価でも偏りが残ってしまいます。
 そこで第4回では、個々のプレイではなく得失点差の推移に注目することで、守備やオフボールのプレイも含めて、コート上での全ての貢献を一つの数値に押し込んだプラスマイナス系のメトリクスのお話をさせていただければと思います。

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