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【第32節vs愛媛FC】最後まで盛り上げる、サービス精神を忘れないのがレノファ山口である

みなさんこんばんは、メルビン・バンチです。

ひさしぶりの勝利と、さすがに最近サボりすぎなので久方ぶりにレビューというものを書いてみました。気分は超リハビリです。

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3試合連続失点中のレノファは4試合ぶりの[4-2-3-1]布陣。代表遠征から戻ってきた高宇洋のデビュー戦と同じシステムに戻し、零封した甲府戦の再現を狙う。

対する愛媛はお馴染みの[3-4-2-1]システム。第4節以来の対戦となるが、スタメン11人中10人が前回対戦と同じメンツ。これはなかなか珍しいかもしれない。

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キックオフ直前、木々の隙間からオレンジの月が昇り始めていた。
「愛媛の橙じゃないのか」「不吉な…」とか言ってしまって申し訳ない。

愛媛は甲府と同じシステムを基本としながらも、スタイルは真逆に近い。相手にボールを持たせた撤退守備からロングカウンターを狙ってくる甲府に対して、愛媛は後方からボールを繋いで前進するスタイルで、自由にさせると精度の高いコンビネーションでゴールを脅かしてくる。素早いカウンターも備えているが、まずはこの愛媛のビルドアップを阻害しなければならない。

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レノファは上図のような形で愛媛の前進を阻もうとした。
愛媛の3バックのうち、真ん中とボールサイドのCB②㉔にファードとサイドハーフがアタック。ウイングバック⑧にはサイドバックが縦へスライドしてマークし、その他のデヘンスライン3人は相手の1トップ2シャドウ⑲⑦⑩を見る。そして中盤の選手たちで、相手のダブルボランチ⑯⑥と前線へのコースを切る。逆サイドの選手⑤㊴は捨てることになるので、いかにピッチを横断させずに片サイドに閉じ込められるかがカギとなる。

前半はかなり多くの時間帯でこのプレッシングが奏功し、愛媛はボールを思うように繋げない。前半の主導権はレノファが握ることとなる。

山口ペースで試合が進むなか、12分に先制点を挙げる。こぼれ球を回収した佐藤健太郎からの低空のサイドチェンジ。これを㊴下川が目測を誤ったことにより、余裕をもってボールを受けた池上丈二が折り返し、カピタン三幸秀稔が流し込んだ。愛媛のミスからではあるが、鋭いボールを放った佐藤、しっかり幅を取っていて冷静に切り返した池上、これまた冷静にシュートした三幸それぞれのグッドプレーだった。

しかしこの後、これはいつもの課題なのだが、先制したことで少しプレスが緩んでしまう。リードした状況で無理に奪いに行く必要は無いのだが、中途半端になってしまったことで愛媛にも余裕が生まれ、サイドを横断されて守備の縦横スライドがきつくなる場面が現れ始めていた。

ただこの試合では、即座に建て直す。もう一度前から制限する意識を強めたことで、追加点が生まれた。愛媛がカウンターを仕掛けようとしたところへ、前線から後方までしっかりプレスが嵌まっていたことによる再逆襲。

リンクマンでありながらクロスが一級品の池上、本職は中央ながらワイドストライカーとして外から中へ入っていける山下という、両ワイドの起用が嵌まった得点。川井が追い越して前野を引っ張ったというサポートの動きも見逃せない。2点とも、良いところがたくさん詰まったゴールだった。というかゴールが生まれるということはやはり、良いところがたくさん詰まっている。愛媛側からすると、カウンターへの移行が早すぎた、下川のオーバーラップが拙速だったと言えるかもしれない。厳しい言い方をすれば下川は2失点に両方に絡んだことになる。厄介な選手なので気落ちしておいて欲しい。

2点リードしたことで、多少危ないシーンはありつつも山口ペースのまま試合が進む。ただ30分過ぎあたりから、⑦近藤が位置を下りるシーンが目立ってくる。前半はあまり問題とならなかったが、これが後半に重大問題となった。

ピンチのひとつとして、⑩神谷に完全に裏を取られたシーンがあったが、「リアル桜木花道」こと菊池流帆が追い付いて止めてしまう。ビルドアップやポジショニングなど課題も多い若きセンターバックだが、やはり化け物である。山口で夢を叶えて欲しい。

最初の選手交代の前、35~40分あたりで、愛媛は[4-4-2]にシステムを変更していた。愛媛が1点返したシーンは、この影響が少しあったかもしれない。右WBから右SHにチェンジしていた長沼が内側のレーンに入り、右CBから右SBに変身した茂木が大外へ。レノファの左SB石田がこれまでどおり長沼を見るのか、上がってきた茂木を見るのか迷わせるような配置。クロスのコースが変わった、GK吉満が触れなかったところが直接的要因だが、システムチェンジに後手を踏んだ、と言うことも出来るかもしれない。

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【閑話休題】この試合の冠スポンサーであるコープやまぐちのキャラクター。得体のしれない不安感がある。

後半が始まる。愛媛はスタート時の[3-4-2-1]に戻してきた。リアルタイム時の感覚と比べて、映像を見直してみると後半開始しばらくはまだレノファペースに見えた。愛媛はボールを保持しているが効果的なパス回しや前進が出来ずに、レノファとしては「持たせている」という感覚だったのではないか。

ただ53分あたりからか、少しレノファの守備が緩んできた。これはまずい、となったのか強度を強めようとするが、今度は突っ込みすぎて間延びする場面も。疲れの見えるレノファに対して、愛媛のボール回しが活性化してくる。

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ここから耐える展開が続くが、ピッチ上で起こっていたことをざっくりとまとめたのが上図である。たぶんこんな感じ。

まずもって前半は、レノファがしっかりと前からプレスに行っていたので逆サイドの選手を空けておいても問題が無かった。ただ疲れてくるとそうもいかない。レノファの圧力が弱まったことで、愛媛も持ち味を発揮してくる。後方に余裕が出たことで、愛媛の両WB⑧㊴は高い位置を取れるようになった。こうなると、レノファ最終ラインは4対5で数的不利になる。さらに守り方を難しくしていたのが、愛媛の右シャドウ⑦近藤だ。近藤が中途半端な位置に下りることによって、石田や菊池がどこまで迎撃に出るか難しくなる。さらに㉔茂木が右前方に張り出すことで、山下がどのコースを切るべきかも難しくなっていた。これはレノファ3バック時に前さんがやっていたのと同じような役割だ。たぶん。

そして近藤が斜めに入る動きで石田を引き付けたところに、大外から長沼が強襲。このパターンを基本としてずっと苦しめられていた。

そうこうするうちにヴェテラン(佐藤)けんたろさんが限界を迎え?佐々木匠と交代。ただこれについては、スタメンのボランチコンビが最も守備力の高い組み合わせであるので、特効薬とはならない。三幸をボランチに一列下げ、池上をトップ下に、右SHに佐々木。守備的なカードはベンチにもベンチ外にも残っていないので、全体の運動量を改善するということだろう。ただやはり、長沼をどうするか問題、その起点である近藤をどうするか問題が解決しない。

すると70分過ぎ、高宇洋がデヘンスラインに入るかのような動きを見せる。

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5バックへの変更というよりも、近藤への密着取材を買って出た格好かもしれない。ともかくも、後ろを5枚気味にすることで噛み合わせをハッキリさせた。逆に言うと、残り時間は「受ける」ということでもある。中盤の並びも再整理され、[5-4-1]の布陣に変更となった。会見コメントにもあった「選手たちの判断」が69分あたりでベンチに申し入れられ、それを容れての布陣変更と思われる。

ベンチもそれだけでは不足と思ったのだろう、73分に池上に代えて右SHに高井和馬を投入。ボールを保持する、ゲームを落ち着かせるのなら池上だが、ゲームプランは「撤退守備」に変更された。ジリ貧を避けるための「矢」としての仕事が、山口におけるカウンター最強兵器である高井さんに託されたのだ。

が、しかし、その場面が訪れない。目視による計測ではあるが、投入からおよそ15分、攻撃の際に高井さんにボールが回ってくることが無かった。右から攻められる⇒左で防ぐ、クリアする、という流れだったからだろうか。山下と宮代はどちらかというとロングカウンターで運べるタイプではなく、矢を放つ場面がやってくるのは最後の最後だった。

さらに悪いことに、78分には石田が負傷。代表から帰ってきたばかりのドストンを投入して右CBに、石田の穴埋めに高が左WBに回った。

有効なカウンターが打てずに、サンドバックと化しつつあるレノファ。前さんの神がかり的カバーリングでなんとかしのぐ場面が続く。菊池は良い選手なのだが、もう少しポジショニングだったり、出て行った後の戻る意識を高めて欲しい。

そして89分、ついに待望のシーンが訪れる。右サイドでボールを受けた高井が見事なターンで下川をかわし、独走態勢。そこへ宮代と山下が中央へ走り込む。霜田監督のコメントにあった「一刺し」が完遂されるはずだった。が、しかし、宮代を狙った高井のパスはデヘンスに当たり、コースが変わる。山下が慌てて押し込もうとするが、シュートはブロックされた。スコアは、動かなかった。

ただここからようやく高井無双がスタートし、愛媛にも諦めの色が濃くなってくる。93分には敵陣深くでファウルをゲット。宮代がボールをセットし、高井はタッチライン際に構える。アディショナルタイムは4分。宮代のパスを受けて、高井がコーナーフラッグあたりでごちゃごちゃやっておけば試合終了だ。

が、まさかまさかの「オフサイド」。なぜ平行かややマイナス位置に立っておかなかったんだ…。

思わぬラストチャンスが生まれた愛媛は前線へ放り込む。これはドストンが跳ね返すが、セカンドボールをカピタン三幸が目測を誤り、ヘデングを空振り。その瞬間、わたしと友人は悲鳴を上げり。

つめていた禹相皓が左足を振り抜くが、吉満がビッグセーブ。さらにコーナーキックとなってもうワンチャンスが生まれたが、これを跳ね返して試合終了となった。

主導権を握り続けた前半から、一転して相手の強みを見せ続けられた後半。それをプラン変更して耐え、カウンターで止めと思えば仕留めきれず。なんとか時間稼ぎに持ち込んで終了と思いきや、最後の逆襲を喰らう。分かってはいたが、何とも忙しい、安心して観させてくれないチームである。

この試合については、新たな一面を見せたとか、新しい何かを掴んだといったものではなかったと思う。もともとこれくらいの力はあったというか、運にも恵まれたというか。

ただやはり、やりたいことをやり切る力、上手く行かないときにそれを耐える力、というのは少しずつ上がってきているのかもしれない。フットボールに一足飛びに勝てるようになる魔法は無い。逆に言えば、たとえ迷走をしながらも、チームに、個人に、少しづつ何かは積み上がっていく。派手な結果は続いているが、開幕時に比べればずいぶんと前進してきたのだろう。シーズン残り10試合、結果は時の運だが、ここまで積み重ねてきたであろう「内容」をしっかり見せて欲しい。

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右からカエル、ミカン、熱帯魚。この試合は愛媛からもたくさんのマスコットが来てくれました。

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