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パオロ・ジョルダーノ コロナの時代の僕ら 埜51 メモ  

パオロ・ジョルダーノ
コロナの時代の僕ら
初めて耳にする作家! 
このスピーカー感が素晴らしく思う! 
後少しで終わっちゃうけど ホジャの作品も購入済み!

感染症とは僕らのさまざまな関係を侵す病だ。この災いに立ち向かうために、僕らは何をするべきだったのだろう。何をしてはいけなかったのだろう。そしてこれから、何をしたらよいのだろう。コロナの時代を生きる人々へイタリアを代表する小説家が贈る、痛切で、誠実なエッセイ集。

ジョルダーノ,パオロ[ジョルダーノ,パオロ] [Giordano,Paolo]
1982年トリノ生まれ。トリノ大学大学院博士課程修了。専攻は素粒子物理学。2008年、デビュー長篇となる『素数たちの孤独』(ハヤカワepi文庫)は、人口6000万人のイタリアでは異例の200万部超のセールスを記録。同国最高峰のストレーガ賞、カンピエッロ文学賞新人賞など、数々の文学賞を受賞した

 昨年末に確認され、いまなお世界中で猛威をふるうウイルス感染症COVID(コビッド)19が、欧州で最初に広まったのはイタリアだった。二月には多くの都市がロックダウンされるなか、ある新聞に発表された「混乱の中で僕らを助けてくれる感染症の数学」という記事が大きな反響を呼んだ。
 これを書いたのは小説家のパオロ・ジョルダーノ。『素数たちの孤独』で二〇〇八年にデビューし、国内だけで二百万部以上の売り上げを記録したベストセラー作家である。本書はこの文章を原型として、二月末から三月四日にかけて書き継がれた二十七本の短いエッセイをまとめ、緊急出版したものだ。さらに日本語版には、後に発表された「コロナウイルスが過ぎたあとも、僕が忘れたくないこと」という文章が「著者あとがき」として追加されている。
 外出を禁じられた空白の時間にこれらの文章を書き継いだ狙いは二つあると著者は言う。一つは災厄への「予兆」のなかで「すべてを考えるための理想的な方法」を見つけること。もう一つは、それが「人類に何を明らかにしつつあるのか」を見届けることだ。
 この感染症の危険性を、さまざまな例を挙げて数学的に解説する序盤は、物理学を専門に修めた人だけあって、実にわかりやすい。感染症とは何か。それは「関係を侵す病(やまい)」である。世界中の人やモノが緊密にネットワークされるなか、感染症はまさにネットワークに沿って蔓延(まんえん)し、感染を恐れる人々からつながり自体を奪ってしまう。
 だが本書の真骨頂はその先にある。つながりが奪われたなかにあって、著者は「誰も一つの島ではない」というジョン・ダンの詩を思い浮かべ、旧約聖書「詩篇」の一節から「数える」という行為について思索をめぐらせる。この本が稀有(けう)な魅力を湛(たた)える理由は、人文知と数理的な思考が短いテキストのなかで融合し、血肉化されているところだ。「僕は忘れたくない」という印象的なリフレインをもつあとがきは、未来に向けての切なる祈りを込めた、見事な一篇の「詩」である。

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