#57 ○○の無い仕事は計算機やAIに代替される

 私が今働いている自動車会社でも、この15年で大きく仕事のやり方が変わってきている。以前は試作する車の数が非常に多かったが、試作車はコストがかかるので、シュミレーション技術やCAE技術を使って実車を使わずに性能や結果の確認ができるような環境が構築され始めている。

計算で結果が出る事は予測した結果がその通りなのかを予測できる技術なので、その”計算をする目的”を人間が考えることになる。例えば乗り心地のいい車にしたいのか、クイックに曲がる車にしたいのかなど、その車を作る目的を考えるのが仕事になる。

そして、その目的は”売れる車”という目的から生じる。そしてその目的は”会社の収益が上がる”という目的から生じる。

”目的”というワードを強調したのには、ソフトウェアを作成するときに使われるオブジェクト指向という概念が会社にもそのままあてはあるからだ。ソフトウェアはある目的をもって作られる。そしてその目的を達成するために概念を継承して子オブジェクトが作られたり、抽象化して新たな親オブジェクトを作ったりしている。

会社でいうと、利益を上げるという目的(オブジェクト)があり、そのために利益を上げるために車を作るというという目的を達成する車両企画部署があり、その車を作る目的のためにエンジン設計部やシャシー設計部などの様々なモジュールが組み合わされている。

現在はそのモジュールを構成しているほとんどが人間で最後の実行だけをAIや計算機が実行している。会社=ソフトウェアと考えたときに、そのすべてをAIや計算機が実行した方が”利益を上げる”という目的に対して到達度が高くなるのがすぐに訪れると思う。その場合に現在の労働者(ホワイトカラー)は何ができるか?という事を考えるのが重要だと思う。

第1次産業で働いていた労働者が”機械”という代替物が発生したことでホワイトカラーに移行したのと同じく、ホワイトカラーで働いている今の職種は計算機やAIによって代替されていく。

私は計算機やAIにすぐには代替されないものは感情とモチベーションだと思っている。それは人間力として言い変えられると思う。誰にどんな思いを届けるために計算をするのか?そのインプットをするのが人間の役割になる。その会社のプロダクトがそのまま会社にいる人間力を映す鏡となる。

そう。人間力は金銭的な価値がついていないが、そこが最も大事な経営資源となる時代がもうすぐそこまで来ている。


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