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人が手伝ってくれるのは車輪が付いて車が転がってから

 学生時代は学生フォーミュラというレーシングカーを作るサークルをやっていた。やっていたというより、5人で始めたという言い方の方が近いかもしれない。もともとはエコランという1Lのガソリンで何キロ走れるかという競技をやっていたサークルだったが、その年に学生フォーミュラというレース競技自体が始まってそこに参加しようという話になったのだ。

 エコカーとレーシングカーを作る手順は全く異なるし、材料、設計方法などすべて手探りの状態からスタートした。今の様にYoutubeはないので、CADの操作は見様見真似というよりトライ&エラー、設計方法はアメリカ人、イギリス人の書いた本で何となく理解したつもりになって設計した。

 製造も自分たちでやるが、大学にある工作センターで、機械を時々壊し、管理のおじさん達に教えられながらやっていた。それでもレースに勝つという若さゆえのモチベーションで、毎日が楽しかった。

 そんな活動の中で一番悩んだのが人の問題。ここはフツーの会社と変わらないかもしれない。最初の5人はモチベーション高く活動するのだが、部員が増えないのだ。ビラを撒いてもあまり人が来ないし、来てもやることは何ですか?と聞いてくる新入部員に対して自分で手一杯のメンバーたちは放置してしまい、すぐやめてしまうのだ。

 最初の大会は5人で何とか走れる状態にするのが精いっぱいで車検が通らず出走ができなかった。落胆していた5人だったが、得られたことがあった。動く車があると、呼んでいないのに新入部員が入ってくるのだ。ここをやりたい、ここを変えたい、ここの担当をやりたい。頼んでもいないのに勝手に車両の改良が始まった。

そう、人は問題が見えて、そこに自分が貢献できると自然と手伝いたくなるのかもしれない。

今、起業して数か月がたった。最終地点は見えないが、まだ人に手伝ってくもらえるくらいの仕事量はないし、いきなり来てもすぐに仕事ができる状態ではない。学生時代、車が転がるまで必死に頑張った時の様に、人が手伝いたいという状態まで持っていくのが経営者の仕事なのかもしれないと思った。

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