見出し画像

資本主義社会のマリア展示概要補足


民族の文化と融合した宗教やおまじないに興味があり、おまじないのメッカであるメキシコに旅行したことがある。メキシコでは主にキリスト教が信仰されているが、我々日本人が想像するそれとは異なり、お国柄もあるのかおおよそ厳かさとはかけ離れた明るく朗らかなものだ。メキシコにローカライズされた褐色のマリアが人気を集める一方で、悪事の成功すら祈願できる死神信仰(サンタムエルテ)や、怪しげなおまじないグッズを扱う店が街中いたるところに点在している。日本のお盆にあたる「死者の日」も賑やかなガイコツの祭りとして有名だ。望みや欲望をダイレクトに(少しの良心を交えて)表現することがとても人間らしい。

祭りの装飾や民芸品の素朴さも人間らしさを感じる部分だ。祭りや宗教行事に使われる民芸品は世界中様々な民族で作られているが、遠く離れた国であっても不思議と似た雰囲気を持つことがある。おそらくその用途が、豊作や多産を祈るなどどの民族でも共通であること、身の回りで入手しやすい材料で制作されているためであろう。

前置きが長くなったが、当展示では、現代資本主義社会における信仰、祭りを表現することを考えている。色々問題はあるが、現状あるがままを肯定しそこから出発するための儀式である。そのため象徴としては裁く神ではなく許す神の代表としてマリア像を選択した。材料としてはネット通販の結果として身の回りにありふれるようになった、ダンボールを使用している。

メキシコでは、ピニャータと呼ばれる、祭りで子供達が割るくす玉がある。動物やキャラクターなどの形をしているが、後世に残るようなものではなく、祭りが終われば捨てられるものだ。当展示も後世に残すような意図はなく、インスタレーションとしてその場に居合わせた人のみが共有できる、祭りのようなものでありたいと考えている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?