速報:2021年11月19日宗谷地方の暴風
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速報:2021年11月19日宗谷地方の暴風

黒良 龍太

北海道宗谷地方では2021年11月19日午後に低気圧の影響により、宗谷岬で風速30メートルの猛烈な風を観測しました。複数の地点で最大風速と最大瞬間風速が11月の極値を更新しています。この暴風事例の速報をお伝えします。また、ヨーロッパで局地的な暴風災害をもたらす"sting jet"との類似性についても簡単に触れます。

なお、この記事に使用したデータや表・図は、明記していないものは気象庁ホームページを利用しています。

暴風の観測記録

11月19日のアメダスの日最大風速の観測記録を下の図表で示します。宗谷地方の沿岸部や島で猛烈な風、非常に強い風を観測し、3地点、宗谷岬・声問・本泊で11月の極値を更新しています。この最大風速を観測した時刻は利尻島で17時、宗谷岬や声問では20時前後で、風向は北西ないし西となっています。

最大風速更新状況
2021年11月19日の日最大風速の分布図とランキング(気象庁ホームページより)

次は、最大瞬間風速の観測記録を下の図表で示します。宗谷地方は多くの地点(8地点)で11月の極値を更新しています!この最大瞬間風速が30メートルを超えた地点は5地点あります。

最大瞬間風速更新状況
2021年11月19日の日最大瞬間風速の分布図とランキング(気象庁ホームページより)

地上天気図と衛星画像

下に19日12時と21時の地上天気図を示します。この期間、低気圧は前線を伴って発達しながら、宗谷海峡を東北東へ時速50km前後で進みました。中心気圧は6時間で6hPa低下し、少なくともこの期間は急速に発達していると言えます。21時には前線は閉塞し、低気圧中心の北西側から南西側で気圧の傾きが大きくなっています。

地上天気図
地上天気図(2021年11月)

19日15時、18時、21時の気象衛星ひまわりの赤外画像を示します。宗谷地方付近をコンマ状の雲域が通過しています。19日18時の画像を見てください。利尻島の西北西には輝度の高い雲域があって、その先端は東南東方向に鋭く尖っています(黄色の丸部分)。21時の画像ではこの雲域は不明瞭となっていますが、この先端部分は宗谷岬付近を通過したことが21時の画像から想定でき、最大瞬間風速が30メートルを超えた観測地点では、この先端部分が通過した地域にありそうです。

赤外画像_丸つき
気象衛星ひまわりの赤外画像(2021年11月)

同時刻の水蒸気画像も下に示します。先端部分の東側では暗域となっていて、上層・中層に乾燥した空気が流れ込んでいます。降水を伴う雲域では乾燥した空気が侵入し混合することで、蒸発や昇華により気温が低下することもありそうです。

水蒸気画像
気象衛星ひまわりの水蒸気画像(2021年11月)

地上観測の時系列

最大風速が11月の極値更新したアメダス、本泊、声問、宗谷岬の3地点の10分ごとの観測時系列を下の表に示します。これらの地点は、風が南よりから北西に変化していることから、低気圧はこれらの地点の北を通過したことがわかります。次に、赤色の枠の時間帯を見てください。この時間帯の最初の時刻は、風向が変わった後に瞬間風速が急に強くなったタイミングです。さらにその後に降水を伴って気温が1度ないし3度低下して約4度となった頃に、さらに瞬間風速が強まって極値を更新しています。

アメダス本泊・声問・宗谷岬の10分毎の観測値(2021年11月19日)

この時系列から、地上付近では降水と乾燥した空気との混合の影響を受けて、蒸発や昇華、雪の融解により気温(または温位)が急に低下したタイミングで瞬間風速がさらに強まったと見ることもできます。

Sting Jetとの類似

イギリスでは、低気圧西側で発生する"sting jet"と呼ばれる局地的な強風が知られています。この強風により災害が発生しており、この現象予測も行っています。この"sting"はサソリの尾の毒針とのことだそうです。この現象についてイギリス気象局の説明が詳しいです。詳しいことを知りたい方は、このリンク(英語)をご確認ください。

このイギリス気象局の説明にある"sting jet"の特徴は、これまで示した宗谷地方の暴風における雲の特徴や低気圧と強風域の位置関係、乾燥した空気による降水の蒸発による気温低下が影響など類似していると思います。

北海道における局地的な暴風は、ヨーロッパで発生している局地的な暴風"sting jet"と同じメカニズムにより発生している可能性がありそうです。ただし、発達している低気圧により気圧の傾きも大きく、”sting jet”の効果も加わって暴風となったかなどの考察が必要です。

北海道でもこの現象に名前をつけて暴風予測の手法も開発して、暴風災害への注意喚起ができれば、防災効果も向上すると思います。名前は「サソリの毒針」、北海道なので「カムイの槍」はどうでしょうか?

これで速報としての記事は終わりです。今後、高層観測も活用した解析やモデルを活用した解析を進め、続報をお伝えできればと思っています。

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ありがとう。明日、夕焼けが見られそうですか?
黒良 龍太
激甚化する気象現象におののきつつも、過去の顕著な気象現象にも興味があり、また日々の気象も全く同じものはない。防災と気象現象の理解を深めるために顕著事例の天気図を作成・解析している。この中で得た現象の記録、知見や作成したコードを記事にする。気象を勉強する方々の参考になればと思う。