見出し画像

オポンチキにささげる詩

オポンチキを殺す
僕は オポンチキを殺す
なんの意味もなく 無惨に殺す
それが必要だから 殺す

あっという間に
上野駅
中央改札口の
東京油組総本店の店舗の前で 殺す
油そばを食いながら
右足の親指の
爪の先で
たやすく オポンチキを ひとひねり

でも誰にも褒められない
僕はうなだれる
僕は心細く 泣き出す
この事態には そう なんの意味もない

僕の涙は 油そばに落ちる
そして とてもしょっぱい味を追加する
僕はどんぶりを カウンターに上げて返す
さようなら
今日もおいしかった
でも せめて
白ねぎと海苔を追加すると
けっこうな値段がするのは
考え直してほしい

さて

僕は店をあとにする
誰も待っていない
おんぼろアパートに帰る
でも 扉をあけると
どうして
オポンチキが 待っている
殺せ
やつを 殺せ

にやりと笑って
僕は
腰の刀をぬきはなち
ふたたび オポンチキと対峙する