オートリバース考(雑記)

青春ラジオ小説 オートリバース


 なんて馴染みのない、と思った。親衛隊も、カセットテープも縁遠くて、オートリバースに関してはその言葉すら知らない。繋がる共通点は、アイドルを好きな気持ちだけ。でも本を開いて、声を聞いて、安心した。彼らと時間を共有するにはそれだけでも十分だった。
 タカシナは、“つよい”にんげん。チョクは“にんげんっぽい“にんげん。ぼくが原作を読んでまず受けた印象だ。つよい、というのは身体的にも精神的にも共通してもったイメージ。生きていると胸を張れそうな感じのしないチョクには「しんでいない」なんて言葉も浮かんだ。でもタカシナと出会ってから、そして女神や親衛隊と出会ってからは、チョクはしんでいないんじゃなくて、いきていた。「この街さえ出れれば」と思って、渋谷公会堂に集って、努力の報われる場所を信じていきていた。それも親衛隊が変わってしまうまでだけど。再びチョクが生きられるようになったとき、それはタカシナとのかたちが前と同じに戻ったときで、タカシナのエメラルドグリーンが消えてしまったとき。
 「この胸の穴はあなた」これはタカシナやチョクからコイズミへの言葉か、チョクからタカシナへの言葉か、きっとそのどちらでもある。ぼくからしたら、この胸の穴は猪狩さんや作間さんだし、他のオタクからしたら各々の担当さんを思うんだろうな。
 アイドルとファンとは、近いようで遠い、遠いようで近い、そんな精神的関係を持っている。しんどい時に(限らずとも)聞く彼女ら彼らの声は何よりも心のそばまで入ってくるもので、かわいくかっこよくきめる姿は基本的に画面の向こう側に、離れたステージ上にあるもの。チョクの言うイカロスのように、近づいてしまえばそれは何かこの相互関係を壊す要因となってしまう。
 現代には親衛隊も、お茶会もない。ぼくらは彼らのように、1位を取らせたくてあの手この手で複数投票したり、飛び込みで番収に参加したり、そこでコールをしたりすることはない。でも、国宝級イケメンやJr大賞に自分の神様の名前を書き、YouTube、TVer、radikoを回し、出演番組があればトレンド入りを狙い、CDの売上ランキングでは未だに戦っている。もしも付き合えたらどうしようだとか奇跡を願ってみたり、本当に存在してるんだなんて感動したり、絶対一番良い景色を見せたいって頑張っている。こんなに時間が過ぎても、ファンって中身は全然変わってない。
 そんなファン像を現役の高校生で現役のアイドルである猪狩蒼弥、作間龍斗のふたりが演じた。どう思ったかな、自分たちのファンもこういう気持ちかなって想像したりしたかな、それは、ちょっとこわいな。勝手に愛を押し付けてごめんね、受け入れてくれたらいいなぁなんてワガママを思ってるよ。


 さて、ここまでつらつらと書いてきて今更だが、やっぱり何よりもまず作品を聞いてほしい。可能なら原作本も読んでほしい。ドラゴンフライの伝わり方も変わると思うから。
 こんなに素敵な作品と猪狩蒼弥さん作間龍斗さんが出会えたこの世に、このラジオというメディアに、このキャンペーンに感謝。ラジオっていいね!

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