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もしもリンクさんがアジャイルをはじめたら

リンクはウォーターフォールに疲れていた。
無理ゲー的な計画を描く者が褒めそやされ、死者が出ようが何しようがデスマを遂行した者は英雄になり、原価率無視でガンガン叩き売る者が称えられる。そんなウォーターフォールに、疲れていた。
・・・かどうかは知らないけれど、リンクはスクラム手法を用いてアジャイルを始めることにした。

しかし、PO(Product Owner)ゼルダは計画前に失踪してしまった。
SM(Scrum Master)兼 Dev(開発チーム)兼 PO代理という、おひとりサマでのプロジェクト開始で、どうする、リンク!

必要な前提知識
(下記のいずれかでOK。プレスリリースレベルの知識でもだいじょうぶだが、初期の4つの祠をクリアしているとなおよい。)

  • ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド | Nintendo Switch BotW公式

  • ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム | Nintendo Switch TotK公式

なお、本アジャイルプロジェクト?は、TotKを想定している


リンクはインセプションデッキをつくることにした

インセプションデッキとは

インセプションデッキは、プロダクトづくりに関わるメンバーが各々の意見を持ち寄って共通認識をつくり出すための大事な質問、もしくは対話の場を指す。インセプションデッキの内容は10個の手ごわい質問(タフクエッション)で構成される。

インセプションデッキ - Agile Studio

インセプションデッキとは、プロジェクトの全体像を短い言葉で表し、チームメンバーだけでなく全ての人に伝えるためのドキュメントである。開発を始める前に明らかにしておくべきことを10-12個程度の質問に答える形で整理し、チーム全員で話し合い合意したものを見える化していく。

インセプションミーティングで一気に作るチームもあれば、1週間以上の時間をかけて作るチームもある。
一般的には、インセプションデッキよりも、プロダクトプランニングやスプリントプランニングに時間をかける方が合理的だと考えられている。
なぜなら、状況の変化に伴い、インセプションデッキで合意した内容を変更する必要が生じることもあるから。

インセプションデッキは、アジャイルプロセスの中で定期的に見直すのがよい。この見直しは、ふりかえりとかむきなおりとか言われるプロセスで実施することもある。リリースごとにインセプションデッキを見直すチームもある。

インセプションデッキの問いに対するリンクの答え

今回はryuzeeさんの記事 [スプリント1を始める前にどんな準備をするか | Ryuzee.com] で取り上げられている、11の質問に答えていき、計画を立案する。ネタバレ防止その他のため、いくつか割愛している。
(各質問の解釈については、執筆者個人の経験なども含んでいるため、ryuzeeさんの記事そのままではないかもしれない。)

  1. 我々はなぜここにいるのか
    リンクは思った。「気が付いたら、ここにいたんだけど。」
    でも、目的なら、掲げられる。

    • 復活した魔王を打倒し、各種族が平和に暮らせる世界を取り戻すため

      • 魔王打倒のための退魔の剣の入手

      • 行方不明のゼルダを探し、その人望に加えて、彼女の古代への深い知見や洞察から、魔王打倒の力添えを得るため

  2. エレベーターピッチ
    ひとことで特徴を述べてアピールするのは簡単ではないけれど、いずれにせよ、会う人ごとに説明する必要はある。

    • 突然の瘴気や天変地異から脱して復興したい

    • 地域で暮らすみんな向けの

    • 本プロジェクト

    • 魔王により損なわれた平穏な日常を取り戻すための戦いです。

    • これにより完全に平和を取り戻すことができ

    • 古の封印戦争では難しかった

    • 魔王を完全に打倒することを目指しています

  3. パッケージデザイン(割愛)
    キャッチーなエレベーターピッチもタイセツだけど、ひとめ見てイイネと思ってもらえるパッケージデザインもタイセツ。しかし、意外と難しい。

  4. やらないことリスト
    ゴールに向かってやることを決めて注力して突き進むためには、やらないことも決める必要がある。それを明示的に宣言するのが、このリスト。
    リンクは、サステナビリティも重視して、まずは下記をやらないことに定めた。

    • 休憩・食事なしの無理な行軍

    • コログを全員見つけること

  5. ご近所さんを探せ(ネタバレ防止のため割愛)
    ステークホルダを挙げる。顧客も含めて、ステークホルダは漠然と想定していたものより多くなるはず。

  6. 技術的な解決策の概要(ネタバレ防止のため割愛)
    開発には技術的な解決策も重要だ。実現に現実味が帯びてくる。
    (多くのエンジニアはこのあたりは得意だったりするのではなかろうか。)

  7. 夜も眠れなくなる問題は何?
    夜は記憶もないくらい眠っているリンクだが、もちろん、リスク要因は多々ある。

    • 各地の天変地異が、突然、更に悪化して、対応が間に合わなくなるかもしれない

    • 正直、マスターソードのことを考えると、夜も眠れない

  8. 俺たちのAチーム(ネタバレ防止のため割愛)
    チームメンバーの役割や強みを挙げる。ニガテなことも挙げてみんなでフォローしあえるようにするチームもあると聞く。そのレベルまで心理的安全性を高められるとよい。

  9. 期間を見極める(割愛)
    主に下記の2種類の考え方がある。

    • リリースターゲットを3か月後などの目標として定め、そこまでに作り込むMVP機能数を悲観的な想定(トラブルがあっても無理のなさそうな実現機能数)で見積もる。楽観的な想定(ラッキーな状況ならいけるかもしれない実現機能数)を同時に見積もる場合もある。

    • 実現するMVPを決めて、期間を悲観的な想定(トラブルがあっても無理のなさそうな期間)で見積もる。楽観的な想定(ラッキーでサクサクな状況ならいけるかもしれない期間)を同時に見積もる場合もある。

  10. トレードオフを決める
    アジャイルもスクラムも魔法ではなく、リソースは限られているので、なにかを立てるためにはなにかを諦める必要が生じる場合がある。
    荒ぶる四天王QCDS(Quality, Cost, Delivery, Scope)のうち、固定タイムスロットで実現する場合にはCDは変更・調整できない場合が多い。
    リンクが考えるトレードオフスライダーはFig.1 トレードオフスライダーのようになるかもしれない。

  11. 初回リリースに必要なもの(割愛)

Fig.1 トレードオフスライダー

インセプションデッキとスクラム

インセプションデッキは、実は、スクラムのプロセスとしては定義されていない。
スクラムで言われるのは、しっかりした計画はタイセツですということ。(ここは誤解されていて、スクラムなんてたいした計画なしでできるんでしょとか思っている人も、実はいたりする。違う。)
計画を立てるのはタイセツ。でも、不測の事態に備えた臨機応変さを保つことも、タイセツ。臨機応変さを保つために、カタイところから積み上げつつ、最新状況に照準を定めるための方法が、アジャイルやスクラムのプラクティス群にはある。
不確定な要素の多いプロジェクトでも、頓挫させずに、ちゃんと遂行できるようにするために、ゴールに向けて積み上げていく。そのための関係者の理解・合意を得るための可視化の役割も、インセプションデッキは担っている。

参考

スプリント1を始める前にどんな準備をするか | Ryuzee.com https://www.ryuzee.com/contents/blog/7147

インセプションデッキ - Agile Studio
https://www.agile-studio.jp/post/apm-inception-deck


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