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インパクト投資が今後増える訳

そもそも「インパクト投資って何?」というのが日本の現状である。自分がいた外資証券でさえ今年まで耳にするのは新しかった(むしろまだ知らない人は結構いる)。直近の日経のサーベイによるとまだ国内での関心度は2割に留まり、ほとんどは20−30代であった。逆を言うと40代以上はこのテーマに疎い。欧州のみならず世界的にも遅れており、非常に危機感を感じている。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64909660S0A011C2EN2000/

インパクト投資とは?「金銭的リターンと並行して社会や環境へのインパクトを同時に生み出すことを意図する投資」(Global Steering Group "GSG"から引用)。

要は、高度成長期以降、利益追求型の資本主義を実践してきたことにより、その裏側で様々な環境・貧困・社会・教育・食料問題を生んでしまった。社会がまわってる間は目を潰れるが、コロナで社会活動が停止したとたん現状の社会基盤の脆さが表面化する。アメリカはいい例だ、両大統領候補は多くのテーマで対立するが、社会・人権を重視するバイデン と、経済発展・雇用を重視するトランプに大きくは分けられる。自分からすると「雇用と経済を守るためにガンガン製造業に金をブチ込む」と訴えるトランプより、「石炭・原油関連の雇用は減るが再生エネルギーの雇用は増える」と訴えるバイデンのほうが共感できる。

自分は8年間、まさに利益追求型の資本主義のど真ん中であるウォール街企業にいたが、「金持ちをより金持ちにする」ビジネスモデルが今の世の中にあっていないと感じ、パンデミック真っ最中に退職した。外銀だけではない。大企業は上場している以上、まだ四半期決算で株主還元がミッションであり、社会的リターンは寄付・フィランソロピー ・NGO任せであり、いくらフィランソロピー しても決算報告書には反映されない。そして今の寄付・NGOの規模ではSDGs2030で目指している問題解決は達成できない。2030年をターゲットとして2016年に策定されたが、先月の日経記事によると今のペースだと達成の見通しは62年遅れての2092年(自分は102歳・・)。

自分がアフリカのスタートアップへの投資を少しずつ進めてる理由は、そもそも日本やアメリカのような先進国でインパクト投資の普及はハードルが高いと考えるからだ。もちろんグリーンボンドの発行などはできるが、自分が目指すのは、起業家に直接エクイティという形で出資し、関連するSDGsなどのKPIを設定し、直接的なインパクトを可視化することだ。もちろんリターンは犠牲にせず、財務分析やバリュエーション議論はしっかり行う。世の中のペインポイント(貧困、飢餓、環境、等)が集中する途上国でこそ、インパクトとリターンの両立(いわゆる Double Bottom Line)が可能であり、今後のインパクト投資のトレンドをリードすると考える。

自分が興味があるのは、「お金の流れを変えること」。溯るのであれば、現代の「利益追求の資本主義」的な発想から、「持続可能な合本主義」的な渋沢栄一の発想に今後の資金は向かうと考える。24年から1万円札は渋沢栄一になる予定だが、コロナパンデミックになる前から確定してたのも偶然を感じる(19年4月にリリース)。

インパクト投資が普及することによって初めて社会的インパクトがある企業にお金が集まり、投資家も漠然としたESG・SDGではなく具体的な投資先が明確化する。しかし残念ながら今日明日の話ではない。今はHarvard Business Schoolがプロジェクトとして社会インパクトを加味した基準作成に取り組んでいる(下記ご参照)。1929年のウォール街大暴落のあと、GAAP(Generally Approved Accounting Principal)の基盤ができたのは1938。それから80年強、今度は収益性のみならず、社会性が反映される基準を世に出すことは必然的な流れである。



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