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NFLジャッジリビュー Week1 ①

  某リーグが配信している動画を観て思いついた、NFLの試合の中で起こったルール関連の興味深い事象を取り上げて解説する企画。
  現地の解説をちゃんと聞いていれば大体説明してくれているレベルのことをまとめるという生産性の無い活動であり、3週もやればネタ切れになるだろうし、そもそも飽きる可能性が非常に高いので継続には期待しないでほしい。

1. false start by the entire offensive line

(DALvsTB 1Q 9:46)

  記念すべき2021年レギュラーシーズン初の反則。センターが本来のタイミングでスナップしなかったため、「ボールが動く前にオフェンスラインの他の選手が動いた」とみなされたものである。間違えたのはCなのに、反則を取られるのはC以外という点で非常に理不尽。
  「C以外が動いた」ということを強調する ”False start, everyone but the Center.” という言い方もあり、こちらの方が広く知られている。

  何故か日本在住NFLファンの間でも人気が高いが、たくさんの人が動いたからといってペナルティーが重くなるなどといった特別なことは一切ない。
  ルール上の厳密な解釈は、「誰か一人が動いた瞬間にプレーが切れているため、他の人の反則はそもそも存在しない(例えそれが1000分の1秒の差であっても)」というものである。もし仮に完全に同時だったとしても、同一チームの罰則が二つ以上同時に施行されることは(パーソナルファウル等を除いて)ないため、その内一人の反則を選択した結果、やはり5ヤードの罰退となる。

  記録上はほんの僅かな差で先に動いた人間を探し出すような無意味なことはせず、「反則者:Unnamed」として記録されることが多い(公式記録での取り扱いは不明)。


2. パーソナルファウルにあたるDPI

(DALvsTB 2Q 1:54)

  パーソナルファウルやアンスポーツマンライクコンダクトなどサクシーディングスポットから罰則を施行する例は数多く存在するが、一つの行動が二つの反則としてカウントされるのは珍しい。
  パスインターフェアの罰則に関してはNFL Rulebookに以下のような記述がある。

(8-5)
 If the interference is also a personal foul (12-2), the 15-yard penalty for such a foul is also enforced, either from the spot of the foul (for interference), or from the end of the run if the foul for pass interference is declined. 

  今回はD#がフェイスマスクを伴ってO#のキャッチを妨害し、かつボールデッドの地点がDPI発生地点より手前だったため、DPI(反則地点でオートマチックファーストダウン)+FMM(15ヤードの罰退)がどちらも施行されることとなった。

  ちなみにNCAAルールでは、このような場合O#がどちらか都合が良い方を選択する。以下はアメリカンフットボール公式規則・公式規則解説書(2021-2022版)からの引用である。

(7-3-9-e)
Bチームによる有資格レシーバーとの接触が,パーソナル ファウルをともない,キャッチ可能なパスのレシーブを妨害した場合,パス インターフェランス,あるいはプレビアス スポットまたはラン エンドから施行される15ヤードのパーソナル ファウルとして罰せられる。公式規則7−3−8は,パスの最中の接触についての特別な規則である。しかし,その妨害が通常ならば資格没収または退場となる行為を含む場合には,反則を犯したプレーヤーは資
格没収または退場となる。


3. 10秒減算の回避

(DALvsTB 4Q 0:55)

  2ミニッツウォーニングの後、オフェンスがゲームクロックを止める反則を犯した場合、ディフェンスチームは通常の罰退に加えて10秒減算(=ゲームクロックを10秒進める)を選択することができる。反則チームがこれを回避するためにはタイムアウトを消費する必要がある。

  今回はTBがフォルススタートで時間を止めたため10秒減算となるところであったが、後半最後のタイムアウトを消費してこれを回避した。この判断は賛否が分かれている。

  NCAAルールでは2ミニッツウォーニングが無いため、適用できるのは前後半残り1分未満であり、オフェンスディフェンスどちらの反則に対しても適用可能である。

  なおこの10秒減算は反則以外の時計が止まる行為(怪我やヘルメットオフ)に対しても適用できる。10秒減算が適用された場合はレフェリーのレディフォープレーで計時開始、適用されなかった場合はスナップで計時開始となる。


4. OPI疑惑

(DALvsTB 4Q 0:24

 

  実質的に勝負を決めたこのプレーが一部で「OPIだったのではないか」という議論を巻き起こした。OPIは ”Offensive Pass Interference” の略であり、決しておっぱいのことを言っているわけではない。

  問題はこのTB#14がDALのCBを押した(ように見える)手が、ボールが空中にある時に認められている接触である、「相手のボールへプレーする機会を妨げない範囲で、ボールにプレーしようとして相手に置かれた手」、もしくは「相手に対して競り勝った状態のプレーヤーがボールにプレーしようとして発生した接触」にあたるかどうかである。
  スローモーションでしっかり見ると押しているように見えなくもないが、ゲームスピードだとそれほど接触が強力だったようには見えず、フラッグが出なかったことは(個人的には残念だが)妥当と言わざるを得ないというのが、筆者の現時点での結論である。

 


5. なぜインテンショナルグラウンディングじゃない?

(DALvsTB 4Q 0:24-)

  上記のOPI疑惑プレーでファーストダウンを獲得した後、ブレイディは3プレー連続でポケット内からボールを投げ捨てたが、あくまでレシーバーの延長線上に投げていたためインテンショナルグラウンディングは取られなかった。

  また、NFLルールはインテンショナルグラウンディングを「ロスを避けるために投げるもの」と定義しているため、D#のプレッシャーがかかっていない状態であればどこに投げてもインテンショナルグラウンディングにはならない(はずであるが、実際にはわからない)。


6. その他

①DALvsTB 2Q 11:23の反則(O#トーンティングとD#アンネセサリーラフネスがオフセット)でO#が反則を取られたのは、今季からトーンティング(挑発行為)を厳しくとるようになったことが影響していると言われている。
  ちなみにトーンティングはNFLではアンスポーツマンライクコンダクトと別の反則として扱われるが、NCAAルールではアンスポーツマンライクコンダクトの一種という扱いであるため、カレッジや日本の試合でトーンティングという単語が単独で登場することはあまりない。

②DALvsTBの最後のプレーは、最初にボールを持ったDAL#20がダウンしたからでも、その後ボールを拾ったDAL#1がダウンしたからでもなく、「前後半残り2分以内の時、ファンブルしたボールをファンブルした選手の味方がリカバー/キャッチした時ボールはデッドになる」という規定によって笛が吹かれたと思われる。第4ダウンにも同様の規定が存在する。

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