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NFL反則解説シリーズ #3 「オフェンスホールディング」

今回は2020年シーズンで2番目に多く取られた反則であるオフェンスホールディングについて解説する。

■注意

①情報の正確性には細心の注意を払っているが、誤りを含む可能性がある。

②特に注意書きが無い場合はNFLルールの話である。

③記載内容は執筆時点で最新のルールに基づく。

④基本的な単語については解説を省略することがある。分からない単語があった場合、過去の記事「#0-3 反則に関する用語」「#0-2 罰則の運用」を参照していただくか、ネットで検索していただきたい。

■要約

オフェンスホールディング(Offensive Holding : OH)は、オフェンスの選手が相手のことを掴む反則で、10ヤードの罰退となる。


■定義

オフェンスの選手が、手や腕を使って相手の進路を著しく制限する反則である。これはブロッカーの手がディフェンスの選手のフレームの中にあろうと外にあろうと関係ない。「著しい制限」には以下の行為が含まれるが、これに制限されるものではない。

①相手を掴んだり、タックルしたりする。

②相手をひっかけたり、引っ張ったり、捻ったり、回したりする。

③相手を地面に引き倒す

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【ホールディングの例】


■罰則

反則地点から10ヤードの罰退。ただし反則地点がスクリメージラインより後ろだった場合はプレビアススポットから10ヤードの罰退。

※反則地点が自陣エンドゾーン内であった場合はセーフティとなる。

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【ホールディングのシグナル】


■原因

ルール上、ブロッカーは位置関係がどうであれ相手を掴んではいけないのだが、実際にブロックを行う時にはディフェンス選手の胸を掴みにいくことが多い(これを胸を取ると言ったりもする)。

適切な位置関係でブロックしている限り、そもそも審判から見えないのでホールディングを取られることはないのだが、相手が自分のフレーム外に出た時に手がそのままだと掴んでいるところが審判から見えてしまい、ホールディングを取られることになる。

また、基本的に相手の肩に手がかかったらホールディングとなる(肩を押すのは問題ない)。相手のスピードについて行けなかったり、手を処理された時にそれでもブロックしようとして思わず肩に手が行ってしまうというのもよくあるパターンである。

相手が自分のフレームから外れた時は、遠いサイドの手を離し、両手を揃えて押すようにしなければならない。これもオフェンス(特にOL)の重要な技術である。

以上から分かるように、ブロックが上手い選手、つまり相手のスピードにきちんとついていくことができ、手を適切な位置に当て続けられる人はホールディングを取られにくい。逆に自分が下手だったり、ディフェンスが上手かったりすると思わずやってしまう反則である。

【参考:ホールディングが取られる状況】


■補足

#0-1でも書いたが、2020年シーズンに取られる回数が著しく減少した反則である。2019年シーズンに回数が増加した(2018年シーズン比+36%)ためOLの技術が上がったことや、試合時間短縮のために「明らかな(clear and obvious)反則」しかとらなくなったことが影響していると言われている。

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なおディフェンスにもホールディング(ディフェンスホールディング=Defensive Holding : DH)という反則が存在する。これに関しては後日別記事で解説する。


■観戦時の見分け方

非常に出現回数の多い反則であるため、乱暴な言い方をするとOLの周りにフラッグが落ちていたら大体この反則である。NFLでどうかは知らないが、日本のサイドラインでは後ろの方に落ちたフラッグを見て「あー多分ホールディング……ほらね」といった会話がよくみられる。


■戦術的な利用

ホールディングを戦術的に利用したとして有名なのは2016年Week 12 CIN@BALにおいてBALが行ったインテンショナルホールディング(+インテンショナルセーフティ)である。

これはホールディングしまくって相手を足止めすることで時間を稼ぐというもので、残り試合時間11秒を潰しきってからボールを持ったパンターが外に出たので、相手に2点は与えたもののリードしたまま試合を終わらせることに成功した(CINは罰則をディクラインして同じダウンを繰り返すことはできたが、untimed downとなるためスナップ直後に膝を着かれて終わりである)。7点差だったため、パントを蹴って相手に攻撃権を与えれば万が一もありうるシチュエーションであった。

ちなみにこの作戦は現在では禁止されている(「時間を流すための故意反則」として15ヤードの罰退+ゲームクロックをスナップされた時間に戻すという罰則が与えられる)。



■NCAAルール

「つかんだり、引いたり、引っかけたり、締めたり、囲んだりして不正に相手を妨害してはならない」という反則であり基本的にはNFLルールと同じである。罰則も同じ。

なお上述のインテンショナルホールディングはフットボール綱領「コーチの倫理」の項で明確に禁止されている。またフットボール綱領には「ホールディング」の項が別で存在し、「全てのコーチとプレイヤーは(ホールディングをしなくてもすむよう)正しい手の使用を完全に理解しなければならない」という記述もある。

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