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零細起業の経営実務(16)補助金をもらう

起業を志す研究者さんへ、リーゾの経験をお伝えしているシリーズ、今回は、「補助金」の話です。

小さな会社にとって補助金は魅力的なものです。いかに獲得するか?を語るノウハウ本やウェブサイトがたくさんあったり、補助金獲得を手伝ってくれるコンサルタントがたくさんいたりすることからもわかります。

リーゾも、今までにいろいろな補助金のお世話になってきました。
以下、補助金獲得ノウハウとしてはあまり役に立たないと思いますが、手探りでいろいろな補助金にチャレンジしてきた経緯をお話しします。何かご参考になる部分があればうれしいです。

まず創業初年度から利用できる補助金として、つくば市の「賃貸型企業立地推進奨励補助金」をいただきました。オフィス賃料の2割を2年間補助してくれます。リーゾが借りた物件の賃料はそもそも安く、その2割となるとわずかな金額ではありましたが、それでもありがたいものでした。
それ以上に、補助金の手続について経験できたこと、つくば市産業振興課に存在を知ってもらえたのが大きなメリットでした。

同じくつくば市の「創造的研究開発補助金」。これは、初年度は不採択で2年目に通り、このお金で核酸抽出試薬シリーズを充実化することができました。
ちなみに初年度不採択の理由を電話で聞いたところ「初年度はちょっと…」とのことで、やはり起業したては信用がないようです。

同じくつくば市の「経営革新計画承認奨励補助金」。魅力的な補助金で、いつかもらいたいと思っていたところ、実験補助者育成事業で経営革新計画を出すことができ、めでたくいただくことができました。
このおかげで、セミナーや個別講習で使う物品をかなり充実させることができました。なお、経営革新計画で補助金がもらえる自治体は珍しいようで、つくば市で創業する人の特権かもしれません。

「いばらき産業大県」の「地域資源育成支援事業」は、地域資源を生かした新たな商品・サービス等の試作開発に使える補助金で、つくばで栽培した美食同玄米で高圧加工パックごはんを試作するということで申請し、使わせてもらいました。その成果であるパックごはんはその後商品として着実に成長し、少しずつですが地域ブランド商品として認知され始めています。

直近でいただいたのは、一昨年度の「ものづくり・商業・サービス補助金」です。土壌DNA検査サービスという「革新的新サービス」を、ビジネスとして成立させるための準備に使わせていただきました。申請書の作成には支援機関との連携が必須で、某銀行さんにお世話になりました。

思い返してみれば、意外とたくさんの補助金にお世話になってきたものです。
数は多いものの、実はいただいた(申請した)金額自体はそれほど大きくはありません。

というのも、(知っている人には常識ですが)補助金って実は「後払い」がほとんど。事業期間中は立替えなけれなならないんです。しかも、補助率がたとえば3分の2なら3分の1は自腹。戻ってこないお金です。

つまり、リーゾみたいに資金力のない零細では、多額の補助金を獲得すると支出がかさみ、かえって経営が危険にさらされることになりかねません。

恥を忍んで告白しますと、起業したての頃はそんなことも分からずに何千万単位の申請書を出したこともありました。不採択で腹が立ったものですが、採択されてたら相当苦しむことになったでしょう。審査官の親心と今はありがたく思います。

要するに、補助金も、「身の丈に合うものを、ほんとうに必要なだけ」獲得すべし、ということで、この姿勢は、採択される申請書を作るための重要なポイントでもあるのではないかと思います。

というのは、補助金を出す側としては、選んだ責任が問われますから、筋の通ったお金の使い方をしてきちんと成果を出してくれる相手がありがたいはず。
なので、ただなんでもいいからお金が欲しくて書いてるだけの申請書は、見透かされて、スルーされちゃうのではないでしょうか。読むほうもプロですから。

それともうひとつ、補助金について知っておかないといけないのは、「補助金を獲得すると後が大変」ということ。公的なお金なので当然ですが、支出に伴う見積書、納品書、請求書、領収書などを細かく管理して様々な書類を作成して提出しなくてはならず、マンパワーの乏しい零細には事務作業がかなりの負担になります。きちんと筋の通った、数字もぴったり合うものを提出するまで、補助金は振り込まれないのでもう必死です。

そもそも本来のビジネスで稼いで事業費を賄えるのなら、そんなエネルギーを使う必要もないのですから、補助金のことなど考えずにきちんと稼いで賄うのが理想の姿なのだろうなあと思います。
貧乏起業では、なかなかそうはいかないところもあり、うまく利用できれば問題ないですが、補助金獲得そのものに夢中になって商売がおろそかにならないように気をつける必要はありそうです。

<おまけ>
会社がもらった補助金ではないのですが、起業直後に「受給資格者創業支援助成金」をハローワークからもらいました。失業給付受給者が事業者となって雇用保険加入者を雇用した場合にもらえるものです。

申請は、本当に会社があるのか実地調査や面談審査をされるなど、それなりに手間でした。でも約30万円の手当は給与未払→失業→起業という、いちばんお金がない時代に夢のような大金で、本当にありがたかったのを思い出します。

※調べたところ、残念ながら受給資格者創業支援助成金は平成25年度末で廃止となったそうです。

(2016年5月6日配信のすいすい通信より)

「すいすい通信」
https://rizo.co.jp/merumaga.html

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