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休校という決断と、わたしたちが「オンライングループ通話」を選ばない理由

2020年5月9日現在、日本では「緊急事態宣言」が続き、全国の公立学校の休校が続いています。「5月末まで」「6月まで」それぞれの場所がさまざまな意見を表明していますが、実際のところ、このまま終息へ向かってくれるのか、それともまだ続くのか、「withコロナ」の世界になってゆくのか、それは誰にも分かりません。

わたしたちフリースクールRizは、4月6日より通学コースを休校とし、現時点で5月末までの休校を決定しています。

Rizは4月6日より「通学コースは休校」「オンラインコースをご提供」としておりました。東京都教育委員会の都立学校へ向けた休校要請にあわせて「4月30日まで」とお知らせしましたが、現在の状況や、政府が緊急事態宣言を延長の方向で調整していることを鑑み、休校期間の延長をさせていただくことにいたしました。

「休校」と「開校」の間で

新型コロナウイルスの影響を受ける中で、わたしたちは一度「開校」の選択肢を取っています。厳密に言うと、3月2日~3月6日は「休校」、3月9日~4月3日は「自由登校(お休みされる場合は学費は頂かない)」、そして4月6日から再び「休校」し今に至る、という流れです。

休校した後に一度開校することを選んだのは、わたしたちの理念である「子どもが自由に選べる社会」を守ろうとしたからです。

不登校の子どもたちにとって「選べる場所」は決して多くありません。朝や夕方は登下校中の同級生たちと顔を合わせるかもしれないし、日中にはいるはずのない子どもの姿は思っている以上に目立ちます。

ましてや「信じられる大人との繋がり」なんて、「我慢せず好きなことをしていい時間」なんて、「傷ついたら傷ついたと言える空間」なんて、ずっとずっと貴重なものなのです。

わたしたちが背負っている責任、寄せていただいている信頼、フリースクールの役割を思えば思うほど、「いま休校することが正しいのか」「わたしたちがいますべきことは何なのか」と迷いました

「Rizに通うようになってから、家の中でも明るくなった気がする」
「Rizでやったことを、よく家で話してくれる。楽しく通えているようで嬉しい」

最初いらした時には疲弊しきった様子だった保護者の方が、定期面談で嬉しそうに話してくださる瞬間。はじめは遊びを断ることさえ遠慮していたお子さんが、スタッフにいたずらするまでコミュニティに慣れた瞬間。

「この場所を守らねば」と気持ちが引き締まります。

拡大防止対策でさまざまな場所が休止や延期、閉鎖等の決断を下しています。そのような不安定な今だからこそ、フリースクールは子どもたちの居場所として開校されるべきなのではないかと考えました。

Rizのコラムより

結果として、通学時における子どもたちへの感染リスク、Riz内での感染拡大の可能性を考え「休校」の措置を取りました。が、正直いまでも「フリースクールとして、子どもたちへ居場所を提供できていないこと」が歯痒くてたまりません

行きたい時に行ける場所。
いつだって自分の味方が待っている場所。
不安が解消できて、ちょっと笑顔になって帰れる場所。
この場所へ行く自分のことが、好きになれるような場所。

わたしたちは、いまでもそんなフリースクールを目指しています。そのためにやれることは全てやる覚悟です。

「オンライングループ通話」を選ばない理由

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オンラインコースを作ったり、子どもたちへの個別の声掛けをおこなったり、保護者の方が相談しやすい仕組みを整えたりしているわたしたちですが、現在「オンライングループ通話」はおこなっていません。

それは、わたしたちがフリースクールを通じて目指している空間とオンラインのコミュニティとでは、決定的な「違い」があるためです。

フリースクールというと、よく「一日ずっと勉強してるの?」と聞かれるのですが、実際はそんなことありません。時間割すらなく、子どもたちは来たい時間に来て、やりたいことやって、帰りたい時間に帰ります。

スタッフとのお喋りを楽しむ子もいれば、一人でネットゲームに熱中する子、黙々と勉強に取り組む子、グループの輪からは離れマンガに読みふける子もいます。

「ネットゲームやマンガなんて、家でもできるでしょう」

そう思う方もいらっしゃるかもしれません。わたしたちも疑問に思ったことがあります。でも、Rizでその子たちと一緒の時間を過ごすうちに気づきました。

彼ら、彼女らが求めていたのは、「行動」ではなく「空間」だったんです。

誰かと話すとか、ゲームをするとか、スポーツをするとかではなくて、自分以外の誰かがいる空間とか、わずかに聞こえる生活音とか、家とは違うけど家と同じくらいリラックスできる場所とか、そういうものを求めていたんだと思います。

そしてそれは、ゲームやお喋りを楽しむ子たちも同じでした。何をするかはそれほど重要ではなく、「この場であること」が大切だったんです

オンラインで繋げば、確かに顔を見て話をすることができます。一緒にゲームをしたり、勉強をしたりすれば、楽しい時間を過ごせるでしょう。

でも、「特に話はしないんだけど誰かがいるという空間」「立ち上がったり移動したりする足音や物音がどこからともなく聞こえてくる空間」は、オンラインで作ることは難しいのです。

そして子どもたちにとって最も重要である「家を出て、別の場所へ行くという体験」が、オンラインではできないのです。

いまRizを信じてくれている子たちの求めるものとは違う形になってしまう。だからわたしたちは、「オンライングループ通話」は選びません。

これからもわたしたちらしい形で子どもたちの居場所を作ることができないか、模索してまいります。

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