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マスク談話

「あれ、大樹?」
ーうわぁ、ちゃんと化粧しとけばよかった。

「え、透子?」
ーやっべぇ、めんどくさいやつに会った。

「え、なに、今この辺住んでるの?」
ーこの時間に、コンビニから出てくるってことは、近所?え、じゃあ亜紀とは別れたってこと?

「んー、まぁ」
ーこういうところが面倒なんだよなぁ。あれ、でも、ちょっと可愛くなってねぇか。

「え、そうなんだ」
ー買ってるものは一人分?え、じゃあやっぱりこの辺に住んでるってこと?

「透子は?」
ー葵が体調悪いって言うから、コンビニに買いに来たなんて言えねぇ。

「え、私?」
ーそういえば、私、大手企業の歳上彼氏ができたってインスタに強がってあげちゃってたんだ。忘れてた。

「まだこの辺り?」 
ーそういや、彼氏いるっけ。遊ぶならいっかー。

「んー、その辺にまだいるよー」
ー一人でずっといるなんて絶対言えない。

「へー。そうなんだ」
でも、マスクって2割まし可愛く見えるっていうし。 

「そういえば仕事は?どう?」
ー大樹のとこってボーナスよかったんだよねー、誕生日とか結構いいものくれてたし。

「あ?まぁ変わらず」
ー3ヶ月でやめて葵に食わせてもらってるなんて言えねぇ。

「そうなんだ」
ーえー、一人ならいい物件よね。私ついてるかも。

「じゃあ、また」
ーありだな。

「じゃあ、また」
ーありかも。

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