SUPER BEAVER『東京』聴いた?~バンドからの重い愛第二章~

※すべては個人の感想です。あなたの感想を否定するものではありません。よろしくお願いします。



我らがSUPER BEAVERの新譜が出ましたね!いきなり余談ですが、バンドからの重い愛、というのは私が音楽文に書いた文章のタイトルです。音楽文が終わっちゃうのでnoteにサルベージしました。3分くらいで読めるのでぜひ。

アルバムを通して聴いて、久しぶりにこの文章を自分で思い出してしまうくらい、これまた重くて偏っててずっしりと熱い愛を受け取ってしまったなあ~という感想でした。その辺りを詳しく記していきたいと思います。

事の発端は、表題曲『東京』がTFTの特別バージョンとして公開された時だった。ん?なんだろうこの違和感。そもそもぶーやん一人じゃなくて緑黄色社会の長屋さんと一緒に歌ってるからいつもと聴こえ方が違うし、まだ原曲も聴いてないのにアレンジバージョンだし、違和感だらけなんだけど。それでも、その事を引き算してみても。
“愛されていて欲しい人がいる、なんて贅沢な人生だ”
この曲の大黒柱であるこのフレーズがどうしても私にはfitしなかったのだった。だって、愛されていて欲しい人の事は、私が愛してるもん。
愛されていて欲しいって、なんだかすごく不遜というか烏滸がましいというか、いやだからこそ“なんて贅沢な人生だ”に繋がるのは分かるんだけど。
言いたいことは分かる。もう会えない人の幸せを願うというのも分かる。
曲も演奏も好き。
“手が離れた冷たさを~”とか、“かじかんだ手、終電はもうすぐなのに”とか、めちゃくちゃ柳沢亮太で好き。
原曲を初めて聴いた時は、鳥肌が立ったし演奏全部で愛してるって言ってくれてる気がしてホッともした。

でも、ビーバーの音楽には1人で孤独で誰にも自分の言葉が届かないような気がしてしまう夜に寄り添っていて欲しい。
そこで“愛されていてね”と言われてしまうと、愛されていない私でごめんなさいって思ってしまわないだろうか。
そこまでの孤独が身に覚えがある人はいないんだろうか。
愛されていて欲しい人が、誰にも愛されないって今泣いてたらどうするんだろう。それでも贅沢な人生だって言えるんだろうか。

やっぱり私は愛されていて欲しい人の事は、世界中を敵に回しても私が愛する!他人なんてどうでもいい!となってしまう愛情過激派なので、表題曲なのにこんなにもやもやするなんて悲しい……。
ぶーやんがゲストで出たラジオのDJが「この曲を聴いて、こう思える自分で良かったって思った」って話していて、あーやっぱりこう思えない私が狭量なんだな、まだまだ人間できてないなあって落ち込んだし、そりゃ感性全部が好きなバンドと一致する事なんてないし、自分の感性にだけは嘘はつけないし。と思っていたのは全部伏線だったんだな。
うううやられた。そうだそうだ、ビーバーの愛ってこうだった。

音楽文『バンドからの重い愛』でも書いたんだけど、ビーバーの愛って、すごく偏ってると思うんです。
いつもその瞬間に本気だからこそ、目の前の人しか愛せない。目の前にいない人の事まで責任もって愛してるって言えない。
そして。このアルバムは今までと違ってどんな風に受け取ってもらえるかがすごく気になるってやなぎがインタビューで再三言ってたり、実際Twitterのタグ巡回をめちゃくちゃマメにしたりしてるのって《届いて欲しい人に、届けたい》想いが強いからじゃないかなあと思う。
あー、スーパービーバーって東京リベンジャーズの人たち?ふうんって聴くような感じではなくて、ライブのチケットを何回何十回真っ向勝負でチャレンジしてもダメで、ようやく取れたアリーナツアーではメンバーは豆粒くらいにしか見えなくて、それでも同じ会場にいられて嬉しくて、ラジオも雑誌もチェックしてメンバーの言葉をちゃんと受け取って、新譜の盤を待ち焦がれて宝物のように手にして、歌詞カードをめくりながら全身で聴いてる、そんなあなたに。愛されていて、なんて突き放した言葉じゃなく。
幸せになってくれ幸せになってくれずっと願わせてくれ
それぞれに頑張ってそれぞれに頑張ってそれぞれに頑張ってまた会おう
それぞれに頑張ってそれぞれに頑張ってそれぞれに頑張ってまた笑おう
報われろ報われろ報われろ報われろ報われろ
うまくいけうまくいけうまくいかない時も伏線にして
一緒に頑張ろうはなんか違うとずっと思ってる
親愛なるあなたへ心込めて 頑張れ
 (『ロマン』より一部抜粋)
1人で孤独で誰にも自分の言葉が届かないような気がしてしまう夜にめちゃくちゃ寄り添ってくれてるーーー!!!泣
やいやい言っててごめん。11曲目にたどり着くまで信頼し切れないでごめんなさい。ちゃんとここまで手を伸ばした手は、こんなにもぎゅっと握ってくれてたんだ。どこまで愛が重いバンドなんだ!!!

もちろん、ふうんって感じで聴いてる人の事も大事に思ってるんです。それはライブに来れなかったからって愛してない訳じゃないのと一緒、こここそが偏りの部分、ビーバーの偏愛の重要ポイント。
みんな一度は思った事があると思う、ライブに行けた人は愛してもらえていいなあという気持ち。『ロマン』はそれの歌バージョンだと思った。ロマンを受け取れた人だけが、愛してもらえる。
それにこの曲って、ものすごく《誤解を恐れずに》歌わないとダメで、他意なくそのままに受け取ってもらえるって聴き手を信頼してないとできない曲だと思う。
そう思うと『東京』を演奏する時は不特定多数の、例えば他の人目当てでテレビを見てた人も目にするようなシチュエーションが考えられて、『ロマン』をメンバーが演奏する時は明確に私たちの顔が浮かんでるんだと思う。
『ロマン』を聴いてはじめて、本当に実感として、聴く人が増えて関わる人が増えて、その人たちの幸せを願いたくて『東京』の“愛されていてほしい”が出てきたのも納得できたし、最後に何かひとつ足りない気がして、ギリギリで『ロマン』ができたってやなぎが言ってたのもよく分かる。最後に手を伸ばせる範囲のみんなの手をぎゅっと握りたかったんだろうな。

という訳で、バンドからの重い愛第二章が開幕してしまった『東京』。ひとこと全曲レビューを。

1.スペシャル
“何の気なしに撮った 何でもない写真を
何の気なしに見返して 涙が滲んだ”
なんでこの気持ちをすくって曲にできるんだ柳沢亮太……。
“良い人ぶっちゃいないよ、むしろエゴだよこんなの”はい、最高。
愚直だ、まっすぐだ、誠実だってまずビーバーがひとことめに言われる事へのカウンターパンチ。実はやなぎの歌詞ってこういうひねりというか皮肉というかセルフツッコミがが効いてて好き。ここのところの、コーラスをボーカルが追いかける形(いわゆる突破口スタイルですね)大好き。

2.人間
わんつー!にんげーん!って明るく拳をあげながらすごい事を歌ってない!?そうなんだ、嫌いだけど、嫌いになれないんだよ、にんげん。でも嫌いになっていい時もあるんだよと老婆心ながら付け足したい。
ギターが好き!しかしこのギターを弾きながらほぼコーラスで一緒に歌ってるやなぎすごくない?どうなってんの……これはライブで絶対確認しなければ!こうやってライブ中のやなぎから目が離せなくなっていくのだ……。

3.名前を呼ぶよ
知ってる曲がくるとホッとする笑。死ぬほど聴いたけど、やっぱり名曲。この流れで聴くとまたグッとくるものがある。ビーバーのこれくらいの落とした感じの曲、ほんとに聴き飽きないし絶品なんだよなぁ。

4.ふらり
いやもう声出たよねーーー!!!そんなガッツリ急にやなぎが歌いだすと思わないものー!!!笑。
こういう曲ぶーやん似合うんだよなー。声に説得力があるすぎるからそれこそ『東京』とか『人間』みたいな真っすぐな曲を歌って欲しくなるけど、こういう軽さもうまい。なんなら歌のうまさがめちゃくちゃ際立つ。リズム隊も好き!

5.愛しい人
やっぱり愛しい人好き。優しい。今回のアルバム、恋愛の歌が多いって言われがちだけど、やなぎ何があったの?って言われがちだけど、そもそもこの曲を書いた人が恋愛について考えてないわけなかろう。

6.VS.
ギターソロ何回聴いても笑うって言うぶーやんが好き笑。“純情”ってぶーやんに歌わせるやなぎ最高だな。これはライブのやなぎも楽しみだけどリーダーも楽しみだー!

7.それっぽいふたり
またかわいい曲調ですごい事歌っちゃって~笑。この曲は連番したい人の顔がいっぱい浮かんだ。誰かと聴いて一緒にノリたい。歌詞はアレだけど笑。いやでもやっぱりかわいい。こういう曲こそMV作ってほしい。メンバーだけで!!!同棲してる感じでどうすか!(は?誰と誰が?笑)

8.318
はい好き!そうなのよ!これくらいのテンポでこれくらいのキーでけだるく歌うぶーやんってめちゃくちゃ色っぽいのよ!ぶーやんの声の良さと艶っぽさがめちゃくちゃ際立つ!ギターも大人っぽくメロウだし、ベースもドラムもジャジーなのに……なのに……なんでこんな元気なの!!!笑!しっとり聴かせるのかと思いきや、バンドめっちゃうるさい。最高。あとでGiGS読んだら、ジャズってわからんもん、ってリズム隊が言ってて笑った。そういうところが大好き。
ぶーやんってビーバーじゃ曲作らないのに、自分で作ったと思えば『sakayume』みたいな曲作っちゃって、あの雰囲気をビーバーでも…と思っても結局こんなバンドサウンドになっててほんとSUPER BEAVERって最高。

9.未来の話をしよう
この曲はあれだよね、ブレス2回問題。リリース前にラジオでかかって「なんかブレス2回なかった今?」ってみんなザワついたやつ。まさか歌おうとして歌わなかった(声が出なかったという解釈)なんて思わんやん涙。サブスクで済ませずにちゃんと盤を買って歌詞カード見ながら聴き込んだ人しか気づけないのもすごい。もうね、ビーバーの新譜はのんきに丸腰で聴いたら危ない。いろんな角度で命を狙ってくる……笑。
しかしこの曲の包容力ったらすごい。そしてこういう曲のひろぽんの“そこに変わらずいてくれる”ドラムの安心感がすごい。いつもはゴリゴリに独走
するリーダーの寄り添ってくれ方もすごい。もうこうなった時のビーバーの団結力ってすごい。絶対に瀬戸際の勇気になりたいと願う時の爆発力がビーバーのバンド力だと思う。

10.東京
いろいろ言ってごめんね、東京。嫌いじゃないんだよ。
“僕らお互いを知ってる、良いところも逆も”って、ここで「逆も」って書くやなぎの語彙がめっちゃやなぎで好き。

11.ロマン
去年のツアーに参加した人は「すげえ、ぶーやんのMCってこんな風に曲になるんや」って感動したと思う。私も、こんなにそのまま歌詞にするんやって思ってびっくりした。というか、そもそもぶーやんの言葉が詩的なんだな。でも「努力は報われない」ってあんなに言ってきたぶーやんに“報われろ 報われろ 報われろ 報われろ 報われろ”って歌わせるのすごい。だからこそ、なんだろうな。しかしこの歌詞を書いたやなぎもすごいけど、歌い切ったぶーやんもすごい。ボーカリストって、その曲の世界観をどう表現するか、いわゆる“表現力”が問われるけれど、この曲なんて表現力もなにも、剥き出しのそのままだもん。もはや武士なの?武道なの?
『未来の話をしよう』で変わらずそこにいてくれるひろぽんのドラムの安心感って書いたけど、そのドラムがここまでエモーショナルに歌ってる時点でもう涙腺がだめ。ひろぽんのドラムって突如刺してくるよね。
そして私は常々、やなぎは“たたみ掛け”の天才だって言ってるんですが(ex『まわる、まわる』『はちきれそう』)もうこの曲のここでこんな風にたたみ掛けられると!もうむり。だめだロマンについて語り出すとあと5千字は書きそうなので、今度居酒屋でね笑。

12.最前線
最終的に聴いてる人が自分に向けて言ってる言葉になる、って仰ってたのはTalking Rock!の吉川さんだけど、ほんとにそうで、この曲を最初に聴いた時、私この先、最前線でもう進めないくらいめちゃくちゃ悲しい事があったら“ゆけ、ゆけ、ゆけ”って口ずさむんだろうな、って思った。やなぎもまさかそんなところまで思われるなんて想定してないと思うけど、オットのお葬式で口ずさむんやろうなって思った。重い。そしてオットが先に死ぬ想定でごめんオット。でもそれくらい、人の人生に寄り添う曲だと思った。タイトルからもっと攻めた曲調かなって思ってたから、このやなぎの優しさ明るさ、ビーバーの楽しさ頼もしさが全面に出た曲調だったの、意外だったし救われた気がした。

以上愛しい12曲。これからの人生にこの12曲がいてくれると思うと、なんだってできそうな気がする!

新譜聴きながら“ライブでどんな風に演奏するのかなあ”って思ってしまうのってわりと特殊だと思う(普通作品はそこで完結するので)やっぱりビーバーは根っからのライブバンドなんだなあ。ツアー楽しみ!きっとまたツアーで聴いて深まっていく盤なんだろう。またどれだけの愛を受け取れるのか、愛を渡せるのか楽しみ!みんなそれまで元気でいようね!!





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