「起業家と一緒に事業を作るパートナー」戸祭陽介さん 〜モトヤフインタビュー〜
-戸祭さん、本日はよろしくお願いいたします。まず最初にお名前をフルネームで教えてください。
はい、戸祭陽介(とまつりようすけ)です。珍しい名前ですが栃木県の宇都宮市に戸祭という地名があり、そこの武士であった戸祭氏が先祖のようです。その戸祭という地名の由来にも諸説あるようで、宇都宮氏が宇都宮城の築城に際し、この地で民戸を祭り繁栄を祈ったことによるというものや、宇都宮氏の血縁者である戸祭高定が城を築いた地(祥雲寺の西側)であることに拠るもの、あるいは土を祭る「土祭」が戸祭に転訛したものなどが代表的なようです。
-現在おいくつになられましたか。
55歳です。
-お生まれはどちらですか、またどちらにお住まいですか。
実は生まれは宇都宮ではなく東京生まれで、現在横浜市に住んでいます。
-これまでのプロフィールをご紹介ください。
新卒で入社した大和証券系のVC(ベンチャーキャピタル)を皮切りにVC業界に長くおります。様々な投資形態の会社を一通り経験してきていることで、スタートアップ投資に関する知識と経験が豊富であることが自分の強みだと思っています。
① 大和企業投資株式会社
1992年4月~2001年3月 · 9年
新卒で大和企業投資(旧日本インベストメントファイナンス(株))に入社。当時はVCは5社ほどしかない時代でしたが、VCに憧れて入社しました。審査部で3ヶ月ほど仕事をして、その後大和証券に2年間ほど出向。出向から帰任後しばらくして今度はソフトバンクグループになったあおぞら銀行(株)に出向し、その後転籍しました。
② あおぞら銀行株式会社
2001年4月 - 2007年10月 · 6年7ヶ月
あおぞら銀行時代にはVC子会社のあおぞらインベストメント(株)に出向しました。またバイアウトファンドに1年ほど出向したり投資先の経営企画等に係わったりもしました。通算してあおぞら銀行には6年強おりましたが、金融機関には5%ルール(5%以上の出資を厳しく規制する制度)があり、投資先の経営支援に限界を感じるようになりました。そこで、出資比率の制約がない業界で投資をしたい、子会社ではなく本体で事業と関係する投資をしたい、PCやインターネットに興味があった、という理由でヤフーに転職しました。
③ ヤフー株式会社 企業戦略本部
2007年11月 - 2019年1月 · 11年3ヶ月
企業戦略本部にてM&AやJV等様々な経営企画案件に関わったのち、宮坂さん体制になったタイミングで、当時の大矢CFOから「ファンドを作って欲しい」という特命を受けました。当時VCに関する知見を持っているのは部内で私だけだったこともあり、自分が中心となってYJキャピタルの企画や業務フローを作り上げ、2012年に会社を正式設立しました。
④ YJキャピタル株式会社 取締役副社長
2012年8月 - 2019年1月 · 5年8ヶ月
川邊さんの計らいでベンチャー経営に関する知見や経験が豊富な小澤さんと共にスタートを切りました。小澤さんは、私が経験してきた金融機関でのVC投資とは全く異なるノウハウ、例えば「ネットワーク力」や「徹底力」などお持ちで、大きな刺激を受け勉強になりました。その後はパートナーを経て、同社副社長に就任しました。
⑤ 個人事業主および独自VC設立チャレンジ
2018年10月 - 2019年10月 · 13ヶ月
独立して自身でのVC設立にチャレンジしつつ、個人事業主として社外取締役、社外監査役、M&Aコンサルティング、ベンチャー事業計画コンサルティング等幅広く手がけ、今のAdlib Tech Venturesの経営ノウハウの基盤となる経験を積むことができました。
⑥ 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社 パートナー
2019年11月 - 2022年2月 · 2年4ヶ月
独立に失敗し、拾っていただきました。同社ではコロナの時期に当たったこともあって十分な投資機会を作ることができなかったのは残念でした。
⑦ 株式会社Adlib Tech Ventures · 代表取締役社長
2022年6月 - 現在 · 2年3ヶ月
昨年からITコンサル業である株式会社Dirbatoから100%出資を受けAdlib Tech VenturesというVCを立ち上げて代表をしています。こちらは後ほどもう少し詳しくお話しします。
-ヤフーの在籍期間はいつでしたか?
YJキャピタル時代も通算して2007年11月~2019年3月までの約12年間です。
-ヤフーに入ったきっかけは何でしたか?
ヤフーに入る前は金融という「物」がない業界だったので、「物」がある実業に興味がありました。また、PCにはPC8001の時代から触れていて、社会人になってもMOSAICなど触っていたので、IT・インターネット業界には特に興味がありました。
-ヤフーでのお仕事はどんな内容でしたか?
コーポレートで投資・M&AのPM的業務、JV設立、投資先管理、競合調査などをやりました。細かい雑務的なものもあったので、経営企画的な大小の仕事全般といっても良いかも知れません。その後は自らのこれまでの経験を活かしてYJキャピタルの企画、設立、運営に注力しました。
-ヤフーで学んだことはどんなことでしたか?
ヤフー以前は、金融業界特有のピラミッド型で完成された組織の中で、与えられたミッションをいかに高品質にこなすかという観点で仕事をしていました。一方、入社当時のヤフーには、未完成ながら風通しが良いベンチャーの風土が残っておりました。そこではベンチャー特有の、組織やミッションがはっきりしていない環境の中で、やりたいこと、やるべきことを自分で見つけ、それに向けて自ら動いていくという仕事の仕方を学びました。
-ヤフー時代のエピソードはありますか?
ヤフー時代のエピソードは多いのですが、部署的に話せないものがほとんどです(笑)
強いて言えばやはりYJキャピタル立上げ時に、当時のCFOの大矢さんに呼び出されて、ぶっきらぼうに(笑)「ファンド作りたいんだけど」という一言のオーダーだけのスタートから、全てを自分一人で考えてYJキャピタルを立ち上げたことが一番印象に残っているエピソードです。
-YJキャピタル時代のエピソードはありますか?
1号ファンドが「30億」。2号ファンドを作るときに倍の「60億」程度の提案を取締役会に持って行ったところ、孫さんから「ニケシュ(当時、孫さんの後継者として鳴り物入りで入社した人物)が1000億、2000億という勝負をしようとしている時に、なにをそんなに小さいことを言っているのだ」と怒られました。そこで小澤さん(後のヤフー社長)が「いくらならいいですか」と(多分面白半分で)聞き返したため、CFOの大矢さんが、孫さんがとんでもない額を言う前に、慌てて「200億」と言って、そのまま決まったというエピソードが印象に残っています。
-辞めたから分かるヤフーの良さというものはありますか?
金融などの社歴がある企業と比較して緩い部分が残りますが、その分、自由に動ける余地があるところ、また、変な派閥や忖度が少なく、雰囲気がいいところだと思います。
-ネクストキャリアを選んだ決め手は何ですか?
YJキャピタルがある程度軌道に乗ったところで、新しい挑戦をしたくなり、そこで独立して自分の力でVCを立ち上げること挑戦しました。結果、失敗しましたが学ぶところは非常に多かったと思います。
-現在のお仕事は具体的にどんな内容でしょうか?
株式会社Dirbatoという会社から出資を受けVCのAdlib Tech VenturesというVCを立ち上げて代表をしています。また副業でコンサルなどもやっています。
Adlib Tech Venturesでは、事業成長という目的を起業家と共有しながらも、これまで多数の投資先を俯瞰的にモニタリングした経験を活かして、適切な判断軸を提供することで、起業家の意思決定をサポートする役割を果たしています。
社名の由来ですが、音楽用語である「アドリブ」に由来しています。俗に使われるアドリブという言葉は「出たとこ勝負の思いつき」というような意味に取られがちですが、音楽の世界では「即興で自己表現する」という意味で使われています。既存の枠に囚われず自己の力を発揮して、起業家と共に新たな事業を生み出し(=アドリブセッション)成長していくことを目指しています。
-現在の仕事の面白いところや素晴らしいところを教えて下さい。
VCとしては、投資先の経営者と一緒に事業を作っていけることが、最大の魅力だと思っています。現在の会社は親会社もベンチャー企業なので、スピード感を持って仕事ができますし、代表として多くの権限を持たせてもらっていて、自分の判断で自由に行動することができるところがとても面白いです。
また、投資先の経営者と一緒に事業を大きくする作戦を考えたり、困りごとのアドバイスなどさせてもらって役に立てること、そしてその結果が事業成長という形で見えることが素晴らしいと感じています。
-今、特に力を入れていることは何ですか?
仕事面では、新しいVCの形を模索して、実現するために日々作戦を考えています。それとプライベートの方では、趣味でギター教室に通っていて練習を頑張っています。
-ご家族以外で尊敬している方がおられたら教えて下さい。
先ほども触れましたが、何と言っても近くで小澤さんの仕事の仕方や考え方を見させてもらい、非常に勉強になりました。今も尊敬しています。
-ご趣味は何ですか?
けっこう多趣味です。先ほど申し上げたギターの他にも、スキー(ゲレンデ/バックカントリー)、登山、音楽、写真、読書(ミステリーなど)、自動車全般(F1など)、サブカル全般などです。
-ライフワークは何でしょうか?
好奇心が強く、新しいことを知ることに喜びを感じます。いろいろなことを知ることがライフワークといえるかもしれないですね。
-これからチャレンジしたいことは何ですか?
仕事面では、業界を代表する新しいVCを作ることに挑戦しています。より大きい視点だと、集めた知識を何らかの形でアウトプットして、人の役に立てるようにできるとよいと考えています。プライベートだと、ギター上手くなったらライブなどやってみたいなと思ってます。
-イマヤフメンバー(LINEヤフー)に一言メッセージをお願いします。
ヤフーは、他社と比べて自由に仕事をさせてもらえる、いい会社です。自由に仕事をする、つまり意思と目的を持って自分でやり方を考えて仕事をすることで自分の能力を磨きこみ、社内のみならず社会全体で活躍できるような人材に近づくことができると思います。自分はヤフーに入社する前は自由に仕事をする経験がなかったので、思い込みでこれはやってはいけないなどと自分自身を規制してしまい、その環境の素晴らしさに気づくのが遅くなってしまい、勿体ないことをしました。みなさまにおかれましては、早い段階からこのすばらしい環境を生かして、今後、より一層、ご活躍されることを楽しみにしております。
-戸祭さん、本日はインタビューにご協力ありがとうございました!!
(本日のインタビューは川村英樹が担当しました)
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