見出し画像

朝食

朝起きて、歯を磨いて、プロテインを飲む。茹でたブロッコリーと人参に塩をつけて食べる。
「何もないなあ。」
弟は冷蔵庫を開けて、何を食べようか悩んでいる。私が朝食のためにいつも用意している茹で卵や野菜が冷蔵庫にある筈だが、彼はそれを選ばない。
彼は次に冷凍庫を開けて、食パンを見つけた。
「四枚切りしかない。食べきれるかな。」
弟の朝食はいつも少なめだった。しかし、食べないわけではなかった。一度、とりあえず腹を満たしてから学校へ行くのだった。
彼は冷凍の食パンをトースターに入れて、湯を沸かし始めた。
しばらくしてトースターが鳴って、パンを取り出しマーガリンを塗った。薬缶の湯は完全に沸騰してはいないが、彼はもう熱いだろう、と言って紅茶を淹れた。
弟は私の横に座って、パンを食べ始める。テレビをつけて、表示された時刻を確認した。遅刻するかも、と言って食べるペースを上げた。
ニュース番組では大盛が有名の定食屋を紹介している。
弟はテレビを見ながらパンを齧り、十分咀嚼する前に温い紅茶と飲み込む。
私が朝食を食べ終え、流しで皿を洗っている時、弟がお腹いっぱいになってきた、と呟いた。彼の手元の厚切りの食パンは、元の五分の一ほどが残っていた。私は三角コーナーを見ながら、捨てちゃったら、と助言した。
「勿体ないじゃん。」
弟は不快の表情をしながら、食パンの残りを口に詰め込んだ。そして冷たくなった紅茶も一緒に流し込み、胃に捨てた。
「苦しいわ。」
そう言って彼は徐に立ち上がり、支度を始めた。
ニュース番組は虐待の事件を報じている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?