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【十二月短篇】杜野凛世

・先日実装された【十二月短篇】杜野凛世 についていろいろ書いていこうと思う。とはいえ考察できるほど造詣が深いわけではないので感想と気が付いたこと程度にしておこうと思う。

間違っていることも多いだろうし、人によって違った解釈が生まれると思うので、私個人の考えだと多めにみてほしい。


以下コミュ内容のネタバレがあります


・感想

・さて、今回限定で追加されたこのカードだが、コミュの内容は「ふらここ」や「水色感情」に負けず劣らずの素晴らしい内容だった……
 凛世のプロデューサーへの伝えきれない思いや感情を歌劇「カルメン」に少し絡めつつ水色感情のその先の物語を描いており、BGMや演技も相まってさらに引き込まれるような演出となっている。
 水色感情に比べると、プロデューサーと凛世の関係性にほんの少しの進展があったのではないかと思う。先に水色感情を見ておいたほうがより楽しめそうだ。
 シナリオライターの、凛世という女の子の恋愛感情や、絶妙な二人の距離感の表し方がとても上手く、もどかしさを感じつつも甘酸っぱいさを感じる。行動描写や言葉遣い、間の取り方に至るまで彼女の感情が見え隠れし、その一つ一つを読み解くことで彼女の心の中を推し量ることができる。


・カルメンについて

 今回コミュで出てきた「カルメン」といえば小説か歌劇だが、どちらも鑑賞したことがないので、内容について詳しくは知らない。今回モチーフとなっているのは歌劇のほうだろう。簡単にあらすじを説明しておく。

たばこ工場で働くカルメンの自由な姿に、軍隊に所属し伍長でもあるホセが惹かれ始める。彼には婚約者がいたが婚約を破棄し、カルメンと共に歩むことを決める。
とある騒動から、カルメンのために軍を裏切ってしまった彼は、カルメンとともに密輸団に所属することになるが、そのころすでにカルメンの心はホセに無く、ホセの母が危篤のため田舎に戻っている間に、エスカミーリョという闘牛士の男性に恋をしていた。
戻ってきたホセの復縁をカルメンが跳ね除け、指輪を投げ捨てたことで、嫉妬に狂ったホセはカルメンを刺し殺す。

 最初カルメンと聞いたとき、絶対重い内容だと思ったし、ストーリーをなぞらえるなら凛世に新たな思い人ができるのか、もしくはプロデューサーのほうかとも思った。
最初にメイクスタッフが出てきたことで、第三者の介入もあるのかと、どれにしろ重そうな内容を覚悟していたのだけれど、カルメンの恋の自由さに焦点を当てたモチーフの仕方のようで、その心配はおそらく杞憂だった。


・ep1 紅の踊り子の主題・序

 カルメン…というセリフから始まり、凛世とメイクスタッフとの会話の回想から始まる。ここでいうカルメンは口紅のことだ。その口紅をした凛世の元へとプロデューサーが訪れる。

ここで選択から分岐する。

P「準備、ばっちりみたいだな」

凛世「プロデューサーさま……はい……」
P「よーし、それじゃ20分後にCスタだ 今日も頑張ろうな」
凛世「はい……!」
凛世「――……あの……」
P「ん?」
凛世「……あの……紅を……変え……」
凛世「――失礼いたしました……何も……」
P「何でも言ってくれよ?」
凛世「いえ……!あの……」
凛世「何も……ございません……――」

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 凛世の変化に気が付かないプロデューサーに、自ら紅を変えたことを告げようとするものの、やはり言い出せずプロデューサーは去ってしまう。

 もう、ここの凛世の台詞が声優の演技も相まって本当に良くて、めちゃくちゃもどかしいしプロデューサーも気付いてやってくれ!!
 メイクスタッフさんから似合っていると言われて、プロデューサーにも褒めてほしかったけど彼は気がつかない。自分から言おうとして、やっぱりやめてしまう。ここの悲しそうな心境がこちらまで伝わってくる。
 是非一度文だけで無く音声付きで見てほしい!このコミュは!

「恋は野の鳥」
「来たと思えば飛んでいく」
「捕らえたつもりが逃げられる、逃げたと思えばあんたが捕まる」

 ここの台詞はカルメンの一節、劇中にうたわれるハバネラと呼ばれるアリアの歌詞から取ったものだが。結構有名なのでフランス語だが聞いたことがある人も多いだろう。
恋の自由さ、気まぐれさをうたったものだが、この歌詞に対して「素敵」だとこぼす。その後、「カルメン……は……――」と最後までは言わない。彼女だったらどうしただろうという、彼女の自由さに対してのあこがれに近い感情なのか?


選択肢によっては凛世の変化にプロデューサーがちゃんと気が付く。

それぞれ「カルメン」からのセリフの引用があり、彼女の自由さ気まぐれさにあこがれつつも、彼女にはなり切れない。荷が勝ちすぎる役だと弱気になっていることが伺える。


・ep2 夜、と呼べばはいと言う

 このコミュではたびたび凛世の心の中での発言が出てくる。プロデューサーはうかがい知ることができない心の声を我々は知ることができる。

クリスマスの夜、街を歩いているところを偶然プロデューサーに声を掛けられる。

「たくさんの灯りが……
プロデューサーさまに……なりました……」

 これまでただぼーっと視界に入っていたたくさんの灯り。プロデューサーの登場で一気に灯りが集まったようにプロデューサーのことを見てしまうような感覚。とてもいい表現だと思う。

 寮に戻るなら送ろうというプロデューサーと一緒に夜の街を歩く。
クリスマスで賑やかな街の様子にプロデューサーが話を振るが、ぼんやりした様子の凛世。いつもと違う格好をしたプロデューサーに違った印象を受けたのか、彼のことを意識し少し緊張している様子。
似合っていると伝えると、ツリーとか電飾とか、もっと奇麗なものを見てくれというプロデューサー。

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「見えるものしか……見えぬのです……」

と心の中での描写が入り、今宵は何もかも奇麗だと告げる。

この時の凛世には、プロデューサーしか見えていないんだろうな。

今回一番好きなコミュです。どの選択肢でも凛世の思いが伝わってくるし、綺麗だと告げる流れが完璧すぎて。


・ep3 紅の踊り子の主題・変

「ひとつ……」
「ふたつ……」
「――3つめは……覚えておりません……」
「貴方さまを……見ておりましたから……」

 今夜は花火があがる。現場から見えるかもと楽しみにしていた凛世を、プロデューサーが見に行こうと誘う。
ずっと一緒にはいられないが20分ほどなら大丈夫だと伝えるが、直前のプロデューサーしていた電話の内容が聞こえていた凛世は彼がすぐに出なければいけないことに気が付いている。
遠慮しようとするが、楽しみにしてたんじゃないか?と言われ、プロデューサーのやさしさに甘えることにする。
話している途中の彼の言葉を遮り、時間がないからと積極的に誘う凛世。楽しそうに彼を連れ屋上へと急ぐ凛世。

「まばゆく……まばゆく……」
「照らされる……貴方さま……」
「貴方さまを……見る凛世……」
「3つ目は……何色だったでしょう……」

ここでの凛世は花火を見ることより、プロデューサーといられる時間のほうが大切で、ひとつ、ふたつと花火があがり、自然とプロデューサーのことを見つめていたのだろう、3つ目の花火の色を覚えていないほどに…

ここで、プロデューサーにどうぞ、行ってくださいと伝える。直ぐに発たなければいけないのでしょうと。それを聞き、凛世に別れを告げるプロデューサー。

「――ああ……そうだ……」
「紅だったかも……しれません……」

いつもと違ったカルメンを意識した口調で思う凛世。

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「貴方なら……引き留めたのでしょうか……」

とやはり自由にはなり切れない凛世。そんなことを考える凛世に、一人じゃ心細いだろうと思い、「たまやー」「見えてるか?」とメールを送るプロデューサー。

「……なんと……ばかな凛世……」
「はい……お引き留めせずとも……
ひとつ空のもとに……貴方さまは……――」

やはりカルメンのようになり切れず、プロデューサーを送り出してしまう。しかし心には引き留めていればもっと一緒にいられたという気持ちが拭えない。そんな凛世に向けたプロデューサーやさしさ、どんな形であれ自分のことを思ってくれていることに気が付き、引き留めなくてもよかったと………いいコミュでした。

シャニマスのプロデューサーは行動心理がイケメンすぎると思う。あと、このセリフで章を終わらせるセンスが良い。


・ep4歳末些事

断捨離の話。倉庫の整理を凛世に手伝ってもらい、優柔不断で捨てるか迷うプロデューサーに対し「3...…2......」と3秒で断捨離を促す。
これまでの凛世に比べ、プロデューサーとの接し方に少し変化があったような気がする。
師走だというのに今年の日めくりカレンダーを残すというプロデューサー。疑問に思う凛世に、カレンダーをくれた人が凛世のことを好きだと言ってくれていたと話す。

「捨ててよいのは……物……
ご縁は……けっして……――」


日めくりを一気に破り、古紙回収に出してほしいと凛世に預けるが、そのまま持ってきてしまう凛世

「この日は……プロデューサーさまと……初めてお会いした日……」
「この日は……プロデューサーさまと……即席麺を食した日……」
「この日は……――」

と、3秒考えたが捨てられないものばかりだと。
積み重ねた日々や人の縁を大切にしている、凛世の気持ちが伝わってくる。


・true 紅の踊り子の主題・跋

年末、年賀状を書く二人。メイクスタッフへ個人あての年賀状に一筆入れる内容に悩むプロデューサー。「来年も凛世をよろしくお願いします」などは定型文と同じだからなぁ、と色々考え、「俺も化粧品のこと、勉強します!」にしようという。ep1での凛世の様子を思い出し、ちゃんとわかるようになるからと。

「プロデューサーさま……
大変……お世話になっております……」
「来年も……凛世を……よろしくお願いいたします……」

凛世の出したはがきには、先ほど定型文だからとプロデューサーが書かなかったようなことが書いてある。

「定型文のように……なってしまいました」
「けれど……
足すものも……引くものもなく……」
「心のまま……」



・おわりに

・今回のコミュでは、凛世の片思だった水色感情から、それだけでは終わらないプロデューサーとの関係性も描かれている。
このまま付き合って幸せになってしまえ!と思うのだが、この絶妙な距離感がアイマスの魅力だと思う。

・trueもめちゃくちゃ良いですよね、終わり方も「足すものも引くものもない」って言うのが。
葉書で伝えたいことなどないから定型文のままなのか、定型文でも思いは伝わると言うことなのか、普段からお互い見て伝え合っているからこそその他の言葉は不要なのか。

・水色感情に続くssrでまたとんでもないのを出してきたなと思う。是非とも一度自分で読んでほしいと思うが、限定ということで非常に手に入りづらい。
ニコニコかYouTubeで編集して動画にしても良いかも知れない。けど、これって運営的にどうなのかな、グレーゾーンかな。

・途中2度ほど出てきたメイクスタッフさんだったり、trueでのプロデューサーの「メイクさん、フリーだったよな」って台詞の理由がいまいちわかっていないのだが、この辺の関係性も「カルメン」の関係性と重ねたりしているのだろうか…歌劇なんて見る機会がなかったのでこれを機に調べてみようか、知識が足りてないことで見逃している表現やメタファーなんかがあったりするのだろうか…

・凛世のライターさんのかく恋愛小説とか読んでみたいのだけど、シャニマスのライターの情報とか全くないのでめちゃくちゃ気になる。
今回の「カルメン」もそうだが、水色感情の「L'amour est bleu」とか、「ティンパンアレー」とかシャニマスは引き出しが広いなぁ、多分気が付いていないだけでいろんなところにいろんなモチーフやパロディーが含まれているんだろう。

・思いでアピールが長いし3Dだしかわいいし過去一番好きかも

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・コミュ中凛世が使っていた口紅はシャネル ルージュココ 466番(カルメン)だと思う。

ep1での引用元のアリア(ハバネラ)


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