『桃鈴ねね、新衣装』

2021年、1月31日。
この日、ひとりのアイドルが“ 再誕 ”を果たす。

 事の始まりは昨年12月。
 ホロライブセカンドフェス“ Beyond the Stage ”にて発表された、全曲オリジナル楽曲で構成される“ ホロライブアイドルプロジェクト ”によるファーストステージ“ bloom ”
 セカンドフェスとは異なり、参加は挙手制でメンバー全員が参加するイベントではない。良くも悪くも各々の考える活動方針というものが表れてくる。
 彼女達はアイドルなのか、配信者なのか。
 それはメンバーによって変わるものなのだろう。
 しかし。ひとりだけ自由意志ではなく、とある事情で参加を辞退せざるを得ないメンバーがいた。
 それが“ 桃鈴ねね “だ。
 今回全曲オリジナルということで、ライブで披露される楽曲は先駆けて“ 9週連続配信 ”という形で発表されていった。全てbloom出演者による歌唱なのだが、その中にはホロライブ5期生が揃って歌っている“ BLUE CRAPPER ”がある。当然桃鈴ねねも含めての5期生全員、だ。
 事前に出演者を募り、それに合わせて曲を作っていたにも関わらず彼女はbloomには出演できない。
 
 その理由が“ 衣装変更 ”だった。
 
 その背景には何があったのか、私のような外の人間は想像するしかできない。
 何であれ彼女は衣装変更に伴い、ライブで使用される3Dモデルを(おそらく)新規衣装の物へと差し替えられる事になり、出演を断念せざるを得ない結果になったのだろう。
 彼女はアイドルに憧れてホロライブへと足を踏み入れたひとりだ。その志に見合う、伸びやかでハリのある歌声は同期内で群を抜いており、ホロライブ全体としても高いレベルを誇っている。歌う事に、今後最も関心を向けられるメンバーのひとりのはずだ。
 さらにbloomには同期の3人は出演する予定で、3人はそれぞれ3Dモデルのお披露目を3週連続で行なっていった。
 明らかに、ひとり取り残された状態だった。
 その心境を彼女は雑談配信で吐露している。キャラクターイメージ的にも本人の性格としても明るく賑やかな人である為に、普段はそういう一面をあまり表に出すことはない。
 が、本人としても気持ちの整理が上手くつかなかったのだろう。同期が前に進んでいくのを嬉しく思いながら、今はその背中を見つめることしかできない寂しさを、何とも言えない声色で語っていた。
 
 そんな想いを引き下げたまま、来たる決別の日。
 
 我々リスナーの想いよりも、彼女自身の抱えている物はとても大きいはずだ。
 しかし彼女は至って普段通り、明るい笑顔と和かな声で我々を迎えてくれた。
 二曲の歌唱の後、待望の新衣装お披露目。

 めっちゃ可愛かった(語彙)
 
 旧衣装を踏襲しつつアイドル衣装らしくリニューアルした印象で、三段フリルのスカート、リボンが所々にあしらわれた脚周りが、特に愛らしく素敵だ。
 過去、宝鐘マリンとのコラボ配信で西沢ママを招いてお絵描き雑談をしていた際、ママがぽろっと“ ねねちの衣装は元々胸元がガッツリ開いていた ”とこぼし、“ センシティブになりかねないのでボツになった ”というようなことを語っていたが、今回の新衣装でざあママの欲望が改めて形になったことをとても喜ばしく思う。
 個人的にスカジャンの存在がとてもいいアクセントになっていると感じた。あの一枚で“ 普段着 ”のような装いにも、ライブ中の“ 控え着 ”のような雰囲気にもなる。デザインも秀逸で、セーラーカラーになっているのにはこだわりが見える。
 ヘアスタイルも大きく変わったわけではないが、よりエアリーでふわふわな女の子らしいものになっていて……やはりというか、なんというか、ドアノブカバーと比喩され愛されたシニヨンのカバーは、無くなっていた。
 きっと部屋のドアに戻したのだと思うことにする。
 そんなわけで新衣装になってから初めての歌唱を3曲、ラストは回線の不調でちょっとグダったところを“ ゆーちゅーぶくんからの贈り物 ”と囃され、なんとも彼女らしいオチで無事に配信は終了した。

 4曲目の終わり、彼女は「頑張ってきて良かった 」と泣きそうになりながら呟いた。
 「いっぱい我慢したし、いっぱい辛いことがあった」と続け、「これからもまだ寂しい気持ちは続くと思うけど」と不安を口にするが、五期生のみんなや先輩達が「大丈夫」と励ましてくれたと語った。
 そんな仲間やリスナーの支え、そして彼女の持ち前の強さがあったからこそ“ みんなに新しいねねちを受け入れてもらえた ”のではないだろうか。
 彼女の言う通り、満足のいかないことはこの先も続くだろうし、他の困難も起こるやもしれない。けれどきっと彼女は大丈夫だろう、素敵な仲間や応援してくれる人たちがいるんだから。
 そしてそれを、彼女も分かっているはずだ。
 彼女はちょっとうざいし、ゲームのプレイスタイルはセオリーも何も無いはちゃめちゃなものだけど、朗らかで賑やかな彼女の配信は、観る人をしっかり癒してくれるし、元気を分け与えてくれる。
 新たに生まれ変わったねねちも、そんな風に“ みんなの可愛い妹分 ”な感じで、いつも楽しく元気いっぱいに魅せていってほしいと、切に願う。
 これからも頑張ってください。
 影ながら応援してる。

 そしてねっこ達。
 まだ3Dに、bloomに続くライブイベントも、もしかしたらソロライブも待ってるし、来年の正月衣装もあるぞ。
 楽しみだな!

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