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「アジェンダ283」感想

タイトルの通り、ついにきたノクチル実施後初のユニット間越境イベント「アジェンダ283」の感想記事。

先に感想を言うと凄く面白かった。言ってしまえばただアイドル達がゴミ拾いしたり、しなかったりするだけで決して大きな障害などが発生するわけではなかったのだがそれでも十分に読んでいて楽しかった。

今更言うまでもないがアイドルマスターシャイニーカラーズに実施されている23人のアイドル達には1人1人メイン担当となるライターがおり、またそれを統括するシナリオリーダーがいるという体制で各アイドル達のシナリオが構成されている。(以下の高山Pのインタビュー内にて記述)

なので先日復刻された「サマー・ミーツ・ワンダーランド」のようにこれまでのユニット越境イベントもそういった体制のおかげか、どのユニットもコンセプトやキャラが崩れることなく他ユニットキャラクターと絡む姿が描かれていた。

そして今回新ユニットノクチルが新たに加わり、そのノクチル自身も記憶に新しい単独イベ「天塵」のこともあってどんなイベントになるか直前まで凄く楽しみにしていた。

実際に読んでみて思ったのだが、どのユニットも本当にユニット毎の個性が強く、素晴らしい内容だった。

これを書いている筆者はイルミネとノクチルが好きなので今回はこの2つのユニットにフォーカスを当てての感想を書いていく。しつこいようだが本当にどのユニットも素晴らしかった、冬優子かっこよすぎ。

○イルミネ

実質今回のメインとなっていたイルミネ。ミニ扇風機を探しに事務所の倉庫に行くがそこでノクチル連中とエンカウントし、なんとも言えない空気感になってしまうのが今回のオープニングでは描かれた。

真乃と灯織が幼馴染で固まっているノクチルへ萎縮している中「やっほー!」と臆することなく突撃していくめぐるについては流石の一言。八宮めぐる式コミュニケーション矯正術がなかったらそもそもイルミネーションスターズというユニットは成立していなかったんだぁ…というのを改め実感した。

そうしたオープニングから始まった今回のイベント全体を通してだが、イルミネーションスターズと言うユニットはメンバー全員が気配りをすることに長けている一方で、真乃と灯織はその意識が強すぎて色々気負ってしまうのがわかる。

今回のアイドル達によるゴミ拾い自体も真乃が発案してプロデューサーにより事務所を挙げてのイベントになったが、それに対し「皆無理をして参加しているんじゃ…」と真乃は不安になっている様子が描かれていた。

そんなイルミネだが、今回のゴミ拾いでは主に

真乃→放クラ・ノクチル

灯織→アンティーカ・ストレイライト

めぐる→アルストロメリア

という形で他ユニットと交流を取っていた。

今回特に印象的だったのはめぐるwithアルストロメリアの河原でのシーン。

過去のイベントであるイルミネの「Catch the shiny tail」そしてアルストの「薄桃色にこんがらがって」を読んだ人にはとても刺さったのではなかろうか。筆者は読んでいて脳内でヒカリのdestinationが流れ出して情緒がとんでもないことになっていた。

上に挙げた2つのイベントではメンバーそれぞれが直面した大きな問題に対し葛藤し、悩み、そしてそれを受け入れて成長していく物語だった。その中でこの河川敷で起きた出来事は間違いなく個々の記憶に刻まれ、そしてかけがえのない思い出になっていた。

イルミネにとってはセンターというポジションに葛藤するしていた真乃が、センターとしてではなく灯織とめぐるの隣で頑張ると真乃が決意した場所。

アルストにとっては正面からの勝負をする甘奈と千雪、そしてそれを見て自分にできる精一杯の行動を起こした甜花達3人が「反対ごっこ」の名目で各々の抱えていた思いを吐露した場所。

起きた時間もその場にいたユニットも異なっているが、確かに両ユニットにおいて重大な出来事がこの河原で過去にあって、そうしたことから大切な場所になっていた。

そうした過去を経てアイドル達が今日に至るまでに経てきた成長をシナリオの随所から確かに感じることができた。

めぐるがシナリオ中で言ったこの台詞も、Catch the shiny tailで言っていた「真乃の隣が自分の場所」という台詞から地続きになっている。

真乃の両脇には灯織とめぐるがおり、まためぐると灯織と隣にも別のアイドルがいて…という風に確かに同じ事務所のアイドル達の「つながり」が生まれているのを感じさせてくれた。

今回のイベント自体が、そうしたこれまで築き上げてきたつながりの集大成のようにも感じた。各ユニットが意欲や目的こそ異なれど、真乃の発案とプロデューサーの招集に賛同し河原に集まり今日という1日を楽しく過ごしている様子は読んでいる我々プレイヤーも楽しめた。本当今回のシナリオ完成度が高いな…。


○ノクチル

既存ユニットが上記のようにこれまでの成長を実感できるような描写がされる一方で、新しく参加したユニットという立場でまだアイドルとしてスタートラインに立ったばかりの彼女達は今回のイベントの準主役ポジションだったように思える。

オープニングでのノクチルとイルミネのやり取りから、やはり事務所内でのノクチルの立ち位置は特異な物のように思えた。

「仲良し幼馴染4人ユニット」ということで、既に完成された身内感が展開されており、そこに対して踏み込むことへ真乃や灯織は委縮している様子だった。

一方でノクチル側に関しても各々のイルミネへの対応が中々興味深かった。

まず小糸が凄い勢いで内弁慶っぷりを発揮していた。正直他ユニットへ絡む際に先頭立ってノクチル側から出てくるのは小糸だと思っていたので今回の真乃とのやり取りでの様子は驚いた。

他キャラを例に出すと、甜花はホームユニットでも樹里や摩美々に対して苦手意識こそ見せているが、コミュニケーションが全く取れていないわけではない。しかし今回の小糸はそういったレベルを凌駕していた。イルミネ結成初期の灯織と会話したら小糸泣きそう。

あと地味に小糸のこの円周率をスラスラ述べる所「えっすげぇ」ってなった。

一方雛菜は幼馴染の前ではやは~あは~な感じだが、事務所での先輩であるイルミネへの態度はちゃんと敬語を使うなど上下関係を意識していた。なんとなく雛菜はこうした世渡りに関して上手くやっていそうというのはpアイドルのコミュなどから薄々感じていたが、いざシーンとして見ると中々驚いた。

樋口は前から当たりの強い態度は対プロデューサーに対してのみで、他のアイドルに対しては幼馴染と同様に接すると予想していたがこれに関しては概ねその通りだった。ただこのめぐるのようにグイグイ来るタイプは苦手なのかもしれないと感じた。

浅倉に関しては「なんなんだコイツは……」感が一層際立っていた気がする。あ~~じゃないんだよあ~~じゃ。


そんなノクチル一同も今回のイベントではゴミ拾いイベで他ユニットと絡んで仲良しこよし、とはならない。何故ならノクチルはロックなので。

ゴミ拾い開始早々に飲み物を買い忘れた事に気付き、飲み物を買うついでに雛菜の提案でアイスを食べようとコンビニへ向かうノクチル。浅倉いつも何か忘れてない?財布とかエアコンのリモコン置いた場所とか。

その様子を見た真乃は灯織とめぐると一緒にコンビニへ向かう。ここらへんの様子は今回の報酬になっているsアイドル真乃のサポートイベントで詳しく描写されている

コンビニでアイスを食べているノクチルを見て一緒にアイスを食べようとする真乃と灯織だったが結局そうこう悩んでいる間にノクチルはコンビニを去っていく。

ノクチルに話しかける勇気が少し足りなかったと言う灯織に対し、自分もそうだと真乃は言う。

この会話で時間をかけてノクチルへ歩み寄って、いつかノクチルの皆と一緒にアイスを食べるとことを目標とする灯織と真乃。

来年のイベントでイルミネとノクチルが仲良くアイス食ってたら泣いちゃうと思う。

作中時間が進み、放クラメンツとゴミ拾いに連なる壮大な環境問題についてのディベートを終えた真乃は公園でゴミ拾いをしているノクチルの様子を見に行く。

公園ではノクチルが缶蹴りをしていた。そして真乃は再び小糸と遭遇する。この時の小糸の心情としては(お、怒られる…)といったあたりだろうか。このシーン、テキストには無いが小糸が掠れそうな声で「真乃…ちゃん…」って言ってるのだが声優さんの演技が凄い。

最初は多分ゴミ拾いをしていただろうノクチルだが、恐らく缶を見つけたあたりで浅倉か雛菜あたりが缶蹴りを提案。そして缶蹴りがスタートし、その真っ只中に今回のゴミ拾いを発案した真乃が来てしまった。状況だけを書いたら確かに真乃に怒られても仕方なそうなシチュエーションだ。まぁ真乃は怒っても「むんっ!」だが。

しかし真乃は怒らない。怒れない。今回参加してくれた事務所のメンバーに対し「無理言って参加させてしまったかもしれない」という意識をこの時点で真乃はまだ持っているためだ。参加者が缶蹴りしてても漫画読んでてもSNSでのバズり目的の写真を撮っていても真乃はそれを咎められない。

そうした観点でこのシーンにおける真乃の心情を考えると「やっぱりゴミ拾いなんてやりたくなかったかな…」という申し訳無さがあるように思える。なのでこの時点で小糸と真乃の両者が互いに罪悪感を抱いている状態に見えた。

そんな真乃へ一緒に缶蹴りをやろうと誘う雛菜。それを承諾して混ざる真乃。ここで真乃がノクチルに混ざって缶蹴りをすることに先程のコンビニで行われた灯織との会話が後押しになっているの、話の構成が美しすぎる。

またこの真乃の承諾に対して「ノリいい~!」と言う雛菜、多分雛菜は真乃が承諾すると思ってなかったのかなと思う。断られること前提で誘ったと思うと雛菜が恐ろしい。

そして始まるノクチルwith真乃の5人による缶蹴り。その中で印象的だったのは隠れたままどこかにいる浅倉に対し、「どうせすぐ出てくる」と特に気に留めていなかった樋口だ。

このシーンを見て筆者が思い出したのはW.I.N.G編で浅倉をプロデュースすると見れる共通イベントの「旅に出ます」と日報に書いてふらっとどこかへ行った浅倉を必死に探すプロデューサーだった。

浅倉が見当たらないことに対して狼狽したプロデューサーと、浅倉がどこかへ行くのはいつものことだからと気にかけない樋口がこの場面で対比されているように思えた。担当しているプロデューサーと幼馴染という立場の違いがより浮き彫りになった気がする。

また当の浅倉本人は缶蹴り中に隠れながらクジラの鳴き声動画を見ているというフリーダムな立ち回りをするノクチルの中でも際立った奔放さを発揮していた。読んでいてこの浅倉に関しては天塵でも感じたノクチル内における他メンバーとの温度差を感じた。

他のノクチルメンバーが缶蹴りをしている中、自身も楽しんでいるがその最中に夢中になっているのは別の物という状況。缶蹴りを「アイドル活動」、クジラの鳴き声動画を「プロデューサー」に置き換えてみるとなんとなく自分の中で腑に落ちた。流石にこじつけな気もするが。

しかし缶蹴りをしていても、幼馴染であるが全然連携できていないという描写などからやはりこの「缶蹴り」に缶蹴り以上の何かを見出してしまう、オタクは深読みが大好きなので。

そうなると樋口がちゃんと作戦とか立てて缶蹴りで「勝ち」狙いに行ってるのとか割と面白いのでこの缶蹴り=アイドル活動説はめっちゃ妄想捗るな…。

そうこうしてノクチルと一緒に缶蹴りをした真乃へ浅倉が言う。

ここの浅倉、前述した「旅に出ます」云々でのプロデューサーとの会話で「言葉にしないと伝わらない」って反省した部分が活きていると思う。「そういうのじゃない?」のあたりが特に。

兎にも角にもここでの浅倉の発言が今回のイベントの全てだと思う。

前述した通り自分が言いだしたゴミ拾いという行事を他のアイドル達に「参加させてしまった」と負い目を感じていた真乃だが、最も関わりが薄いノクチルから「まぜてくれて、ありがと」と言われたことで安心できただろうと思う。

だからこそ最後は笑顔で「まざってくれて、ありがとう」と言って今日という一日を「楽しい」日だったと真乃も感じたのだと考える。


ほぼイルミネとノクチルのことしか書いてないけど今回のイベントの感想はこんな感じだ。

冒頭でも書いたが、シャニマスはキャラクター1人1人に担当ライターがいるという体制のためこうしたユニット越境イベでの擦り合せは本当に大変なのだと思う。

しかしそうした体制のおかげでキャラ1人1人の機微が凄い。言ってしまえば河原でのゴミ拾いで各々が好きなことをする、というだけの今回のイベントでこれだけ読んだ後の満足感が凄いのはそうしたライター陣の技量他ならない。

始めてまだ僅か3ヶ月程度だが、これからもこのアイドル達の成長を見守っていきたい。そう思わせてくれる素晴らしいイベントだった。

余談

この2人並ぶと本当新旧主人公感凄い。

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