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チェアコンシェルジュと椅子を買え

 椅子(チカラ)が欲しい……腰痛を消し去り、肩こりを支配する椅子(チカラ)が……! と思ったのでチェアコンシェルジュのところへ行って椅子を購入してきた。
 チェアコンシェルジュをご存じだろうか。私は「有益なアドバイスをしてくれる椅子マニアの人」だと思っている。
 ここ数ヶ月で在宅勤務が急激に普及したことで、「良い椅子が欲しい」と思う方も増えたと思われる。椅子を求める方の一助になるよう、「椅子の選び方」及び「日本橋にいる椅子マニアとの会い方」について記したい。

あなたはどんな椅子を選ぶべきか

椅子を選ぶポイントは3つある。

①あなたの体格に合っている椅子

 背の高さ、筋肉の付き方、小柄か大柄か……当然ながら人によってまったく違う。椅子はほぼ全身を預けるものなので、座面や背もたれの幅、高さ等がフィットするものを選ぼう。ものによるが、やはり国産の椅子は日本人に会うものが多いようだ。

②あなたの好みに合っている椅子

 ①とはまた別に、個人の好みというのはやはりある。椅子の形や色などの見た目、部屋のニュアンスと合うか。風通しの良いメッシュ素材がいいのか高級感重視でレザー素材がいいのか。肘置き、ヘッドレストの有無はどうか。
 妥当なのは「布張り、肘置きあり、ヘッドレストはどちらでも」だろうか。ちなみに私はヘッドレストと相性が悪く、後頭部にヘッドレストがあたる感触が不快で発狂しかけた。誰に何と言われようと自分が心地良い椅子を選ぼう。

③用途に合った椅子

 その椅子であなたは何をしたいのか。絵を描きたい? その場合アナログで? デジタルで? 仕事をしたい? 勉強したい? リラックスしたい? このすべてだろうか。
 用途によって相応しい椅子は違う。身体を前に倒して書き物をすることが多いなら前傾姿勢が得意な椅子を選ぶべきだし、のんびり読書をしたいならフットレスト付きのものにしてもいい。マルチに使いたいならマルチに対応してくれる椅子を探すべきだろう。

チェアコンシェルジュに会いに行こう

 上記3点をふまえて「何となくこんな椅子がほしい」とイメージを描けたら、チェアコンシェルジュに相談しに行こう。

 日本橋にあるワークチェア専門店「WORKAHOLIC(ワーカホリック)」、チェアコンシェルジュはここにいる。
 私が足を運んだのは、国内の感染者がここまで多くはない頃だった。現在は完全予約制として人数制限をしているようなので、来店予約をして少人数で行こう。

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 店内は撮影OK、SNSへ公開してもよい(コンシェルジュに聞いた)。

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 店内には「国内外15ブランド、50脚」のチェアがありどれも自由に座って試すことができる。
 来店後の流れは、
・担当のコンシェルジュに、求める椅子のイメージや使用環境などを伝える
 ↓
・説明を受けつつ、いくつかの椅子に実際に座る。合いそうな椅子、合わなそうな椅子も座ってみることで方向性が見えてくる
 ↓
・コンシェルジュから離れ、ひとりで店内の椅子に座りまくる
 ↓
・これぞ、という椅子があればその場で注文する(しなくてもOK) 

 ざっくりこんな感じだ。
 ワーカホリックの良さは、何より「品質の良い椅子をいちどに大量に試すことができる」ところにある。良い椅子は高い。私が行った際は最安のもので5万円、高いものは20万円程度した。長く使うものなので長い目で見ればお値打ちだが、平均10万円以上する製品を試さずに購入するのは危険だろう。
 私も、座って初めて「不要だと思っていた肘置きはあった方が良い」「ヘッドレスト、気が狂う」などに気づけた。
 店内の椅子ひととおり全てに座ってわかったことだが「だいたい7万円を超えると機能自体に大差はなく、好みの世界に入る」。20万円近い海外製チェアに座った途端「なんだこの違和感!?」となったり、約半額の国内製チェアがしっくりきたりした。生産地がどうという話ではなく、コンセプトがそれぞれ異なるため合わないものは高かろうがとことん合わない。
 印象的だったのは国内メーカー・コクヨのing(イング)だ。アトラクションみたいな椅子で、安定性とか落ち着きを放り投げた一品。座ると揺れる。前後左右に揺れる。椅子の概念も揺らがされる。もちろん「あえて」そうしているのだ。立ったり座ったり、ストレッチをしたり、考え事をしつつ身体を揺らしやすいように。

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↑ingと共に展示されていた偉人(ジョブズ氏)の絵と名言。ワーカホリックにはそこかしこに偉人の名言が飾られており、楽しい。

 座っては立ち、立っては座りしているうちに、いいなあと思う椅子がいくつか浮上してくる。そうしたらその椅子に長めに座ってみるとよい。
 私についてくれたコンシェルジュさんは「椅子というのは、一瞬座ったときに『良いな』と思っても、長く座っていると印象が変わってきたりする。気になった椅子があったら数分座り続けてみて」と言ってくれた。「この店は信用できる」と思った瞬間だった。普通だったらひとつの椅子でじっとしていてほしくないだろうに、お店側からそう言ってくれて嬉しかった(とはいえ他のお客さんもいるので、周囲を窺いつつ迷惑にならない範囲で、が前提)。

 椅子のゲシュタルト崩壊を起こすほどに座り、最後の最後(本当に最後だった)に座った椅子がこちら。

 ご存じオカムラのシルフィー。
 私が求める椅子の第一条件が融通が利くことだった。パソコン使用時にも読書時にも使えるマルチさ、可動域の広さ。シルフィーは前傾にも後傾にも対応できるし座面の幅も好みで、何より名前が可愛い。私は「シルフィー……シルフィーちゃん……」と言いながら椅子の周りをうろつき、担当コンシェルジュさんに「シルフィーがほしいのです」と言いに行った。

 コンシェルジュさんは私にシルフィーの説明を詳しくしてくれたのち、パンフレットをくれて「本当に買うかどうか家でゆっくり考えてもいいよ」みたいな空気を醸し出した。慈善事業でやっているのか? それとも私に一刻も早く帰ってほしいのか? 私は動揺し「ここでは注文できないんですか」と聞いた。「ここで注文できますよ」と言われた。じゃあ買わせてくれよ!!

 というわけでその場で注文。色やヘッドレストの有無等をタブレット上で選ぶ(ハイテク)。決済時の待ち時間には併設しているカフェで一服しつつ待つ。ドリンク代はなんとお店が持ってくれる(が、決済にはそう時間がかからないためマッハで飲まないと飲み残してしまうぞ)。
 ワーカホリックで注文するメリットとして「配送手配も一気にしてくれる」「購入価格がネットとほぼ同等」というのもある。
 配送料は基本的にワーカホリックが負担してくれるうえ、椅子が入っていた箱などはその場で回収してくれるためゴミが出ない。
 製品によるけれどワーカホリックに展示されているチェアは「ワーカホリック割引」がされており(一脚ごとに値札がついているが、本来の値段と値引き後の値段が併記されている)、ネットで安く出品されているものと大差がないことも多い(中古を買えばもっと価格を抑えることはできると思うけれども)。
 なんでか知らないがコンシェルジュ代金は発生しない。慈善事業なのか?

高い椅子を手に入れた結果

 高い椅子はいい。
 これまでは柔軟性もなにもない木製のダイニングチェアに座ってタイピングしていたりしたが、座っていればいるほど全身が痛くなる呪いの椅子と化していた。楽な姿勢を求めて体育座りをしたりどんどんずり落ちていったりしていき、本来の「正しい座り方」から離れていくばかりだった。
 椅子を代えた瞬間にすべての身体のトラブル(肩こりと腰痛)から解放されたわけではないけれど、姿勢はよくなったし「健康」に近付いたと思う。
 この文章もシルフィーに座りながら書いている。背もたれの抱擁感が特に段違いで、買ってよかったなと思う。

 ただひとつの難点としては部屋が圧迫されることだ。良い椅子はたいていでかい。かさばる。私の部屋はそもそも狭い(独居房を思い浮かべてほしい)ので、そこに降臨したシルフィーにしばらく絶句してしまった。

 合わない椅子を使うと上半身の不調を引き起こし、精神的不調のきっかけにもなりかねない。私のように「心身共に健康に過ごしたいんだ俺は」と思っている方、チェアコンシェルジュと共に椅子を買ってはいかがだろうか。

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